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2023.11.28

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ポーラ 及川美紀社長「We Care More.世界を変える、心づかいを」を心に100周年へ【40周年記念インタビュー】

ポーラの及川美紀社長



化粧品訪販最大手のポーラは2029年に、創業100周年を迎える。現在は、「WeCareMore・世界を変える、心づかいを。」という行動指針を立て、「2029年ビジョン」を掲げているという。ポーラの及川美紀社長に、入社当時の訪販の価値観や、ビジネスパートナーとの関係、今後の訪販の形などについて聞いた。





女性がセールスをリード


――及川社長がポーラに入社した当時は、どんな時代だったか?

私が入社した1991年当時は、男性が外に出て仕事をして、女性が家を守るという価値観が色濃かった。

女性が主体的に人生を選択するということが難しい当時、ポーラレディ(現ビューティーディレクター、BD)は、個人事業主として自らの意思で働いていた。「女性がセールスをリードする」というビジネスモデルが生まれたことは、ポーラがダイバーシティー企業としてここまで成長する重要な一歩であったといえる。

当時の、訪問販売のメリットは、まずはお客さま一人一人の考えや価値観、理想、肌悩みを、直接そばで聞くことができたことだった。そのうえで商品の正しい使い方や効果的なお手入れ方法などを、そのお客さまに合わせた方法で、丁寧にアドバイスできることもメリットだった。

お客さまに、製品やBDの人柄を気に入っていただけたら、一生のお付き合いができる。実際に、何十年と家族ぐるみで深いお付き合いをしているお客さまが全国にたくさんいる。

 

ポーラの目指した形がサロン


――ポーラのビジネスモデルが、訪販から、エステを伴うサロン販売に代わっていった背景について聞きたい?


共働きが主流になり、時代やライフスタイルが変化し、日中にご自宅にいらっしゃるお客さまが減ってきている。当然の流れだと思っている。

その中でも、カウンセリングは、その人に合わせたお手入れを丁寧にお伝えするという意味で、ポーラの理念に合致していた。「エステサービス」という手法は、「最上の商品をその方に合わせたお手入れとともに」、というポーラの目指す考えそのものだった。販売員の技術力アップにもつながった。

 

ビューティーディレクターの社会貢献へ派生


――ビジネスパートナーである販売員やグランドオーナーとの関係は変わっているか?

ポーラには、BDが約2万5000人いる。BDは、ポーラと委託販売契約を結んだ個人事業主だ。

個人事業主であるビジネスパートナーとの関係について言うと、会社とは物の受け渡し(商品を貸し借りする関係)しかないため、ビジョンをしっかり理解してもらわないと、企業活動が何か、自分たちがどうあるべきか、分からなくなってしまう。

ビジネスパートナーに対してビジョンをきっちり届けることが、ポーラにとってはとても大事なことだ。

コロナ禍で、世の中がまるっきり変わってしまった。私達が大切にしているエステやお手入れという対面でのコミュニケーションが、できない時期があった。

この時、いま一度原点に立ち戻り、「私たちのビジョンを再定義しよう」と、創業精神のエピソードをあらためてポーラに関わる全員にシェアした。

"大切な人を想う気持ち"が当社の創業の精神だ。コロナ禍で、コミュニケーションや生活様式が大きく変わったからこそ、一人一人が大切な人を想うことにより、温もりや人とのつながりを感じられるような体験をお届けしようと、「2029年ビジョン」を作成した。

このビジョンとその実現に向けた行動スローガンを共有することで、「人をケアするとは何か」「社会をケアするとはどういうことか」という問いを、ポーラの従業員だけでなく、ビジネスパートナーにも投げかけている。

これを受け取ったビジネスパートナーたちが、少しずつだが「目の前の一歩から始めよう」と動き出している。最近では、社会貢献の活動や新規事業に派生していくような動きも出てきている。

「売る」以上の役割を


――これからの対面販売の形について、聞きたい。

訪問販売のビジネスモデルは、地域やお客さまの年齢や価値観によっても異なる。

今年は、100歳のビューティーディレクターが「最高齢の女性ビューティーアドバイザー」として、ギネス世界記録認定を受けた。現在も月商10万円以上を売り上げ、訪問先のお客さまに元気と希望を与えている。

例えば、高齢の人が多い地域では、お客さまが車の免許を返納したりして、遠出ができない場合もある。そういった人は、何十年も付き合いがある担当BDの訪問を楽しみにしていただいていたりする。訪問する日には、お客さまが「何を着ようか」などと、洋服を選ぶのが楽しくなり、日常に張りが生まれていると聞く。

孤立しがちな高齢者のケアという意味でも、BDは、化粧品の販売以上の、コミュニケーションやつながりを生む役割を担っている。

直接お会いして肌を触り、お話を聞くという、一人一人に合わせた提案の重要性は、つながりが希薄になりがちな時代において、さらに重要度を増していく。人が本質的に持つ、ぬくもりを求める心とともに、訪販を含めた対面販売は、今後も発展していくと考えている。




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