乳酸菌由来の化粧品を対面で販売するヤクルト本社では、乳酸菌飲料を販売するヤクルトレディが、化粧品も販売するケースが増えている。現在、ヤクルトレディの7割が、化粧品の販売も行っているという。「『Yakult1000』のヒットにより、お客さまの層が拡大している。新たに接点を持ったお客さまに、化粧品の認知度も高めていきたい」と話す、ヤクルト本社化粧品部の鴨田真弓部長に、話を聞いた。
前期は売上高66億円
──2024年4月1日付でヤクルト本社の化粧品部の部長に就任した。これまでのキャリアとヤクルトの化粧品事業について所感を聞きたい。
私はこれまで、乳酸菌飲料の宅配部門に長年携わってきた。入社当時は、現場で、ヤクルトレディの販売のサポートを行ってきた。その後は、販売会社とコミュニケーションをとりながら、ヤクルトレディの働きやすい環境を整備する仕事も経験してきた。
ヤクルトの化粧品は、「内外美容」というコンセプトを持っている。乳酸菌飲料で体の内側をサポートしつつ、乳酸菌由来成分を使った化粧品で体の外側をサポートするという考え方だ。
乳酸菌の力で、トータルできれいになることができるということを、世の中に発信していくのが役目だと考えている。
──今のヤクルトの化粧品事業の現状を聞きたい。
現在は、乳酸菌飲料の「Yakult(ヤクルト)1000」がヒットしたこともあり、お客さまの層全体が拡大している。当社のブランドに親近感を持っていただいた人に、化粧品も使っていただける環境は十分整っていると考えている。
現在、ヤクルトの化粧品を販売している人の多くが、乳酸菌飲料を販売するヤクルトレディだ。全国のヤクルトレディ3万2000人のうち、約7割に当たる人が、乳酸菌飲料も化粧品も販売している。
販売会社の中には、乳酸菌飲料と化粧品を分けず、一体として販売員教育を行っているケースもある。化粧品だけを販売する、ヤクルトビューティやコスメティックヤクルトレディと言われる販売員は、3500人強となっている。
ビューティークリエイター(BC)と呼ばれる、化粧品の販売のサポートをするスタッフも、全国で多数活躍している。化粧品の知識を持っており、化粧品の販売に同行してサポートしたり、営業所に併設したサロンでフェイシャルエステを提供したりしている。
ヤクルト本社の2024年3月期の化粧品事業の売上高としては、66億円だった。主力のスキンケアブランド「パラビオ」をリニューアルしたことで、前年を上回った。
──化粧品を扱いたいヤクルトレディを増やすための工夫はしているか。
まずは、ヤクルトレディにヤクルトの化粧品の良さを体感してもらい、お客さまにお勧めしたいという気持ちを持ってもらうように努めている。
──2023年5月からアフターコロナとなった。変わったことはあるか。
2024年5月時点では、市場はコロナ前とほとんど同じ状態に戻ったと考えている。当社の化粧品事業ではコロナの影響はほとんど受けなかった。コロナ禍でもヤクルトレディは、お客さまと、コロナ前と同じようにコミュニケーションを継続するために工夫していた。お客さま宅を訪問した際には、お客さまとドア越しに話す機会も多かったと聞いている。乳酸菌飲料をベースとしたお客さまとのつながりの強さを改めて感じた。
D2Cは展開を模索中
──2023年は、「ラクティフル」という通販限定商品を開発し、D2C事業にも力をいれている。進捗はどうか。
D2Cの事業は、これからが正念場だと考えている。2024年1月にトライアルセットを発売し、広告経由の獲得効率などを模索している段階だ。
「ヤクルト=乳酸菌」というイメージを持っているお客さまは多いが、「乳酸菌を使った化粧品」というキーワードに、なじみのないお客さまも少なくない。「ヤクルト=乳酸菌の化粧品」や「乳酸菌は肌にも良い」ということを、お客さまに認識していただく必要があると考えている。
現在、雑誌やウェブのさまざまな美容メディアに広告出稿している。コンバージョンを高めていけるよう、筋肉質な事業への変革を目指している。
化粧品事業全体としては、従来の訪問販売はもちろん、訪販と接点を持たないお客さまとの接点を増やしていくことを念頭において、事業運営を行っていきたい。
訪販以外の接点を持ったお客さまも、最終的には訪販による継続的なコミュニケーションに誘導し、継続的な関係を築いていきたい。