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2024.07.01

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【通販化粧品トップインタビュー】ディーエイチシー 宮崎緑社長「構造改革でトップダウンから自律組織に」

宮崎緑氏


化粧品や健康食品通販大手のディーエイチシー(DHC、本社東京都、宮崎緑社長)は、2023年1月末日にオリックスグループの傘下に入り、経営基盤の構造改革を行ってきた。これまでDHCでは、前会長のトップダウンで事業戦略などが決められていたという。新たなパーパスやビジョンのもと、各部門の戦略の共有・協働を行い、自主自律した組織への変革に効果が出てきているという。宮崎緑社長に、1年余りで行ってきた社内の構造改革について、詳しく聞いた。



経営基盤を整備


──新体制以降取り組んできた構造改革について、詳しく聞きたい。

まず、経営基盤の整備を進めた。各部門が意識の共有を行えるよう、さまざまなプロジェクトを立ち上げた。

社内の会議体や、ガバナンス、予算管理といった経営体制や、組織体制、意思決定の仕組みを大きく変え、社員全員が同じ意識を持つことに注力した。

具体的には、財務基盤やITシステムの整備、人事制度・目標管理の導入などの大改革にも着手した。コーポレート機能の体制を整えつつ、フロントの事業基盤の整備も同時に行った。商品の企画開発の工程を可視化。
生産体制やサプライチェーン、物流体制の見直しを図りながら、信頼性保証の体制も強化した。

以前は、トップダウンで命じられたことを、各部門のスペシャリストがスピーディーに実行する体制だった。いざその形がなくなったことで、整備されていない部分が多く見えた。それら一つ一つを着実に整備していくことで、構造改革を行う前に感じていた「うまくいかないかもしれない」という不安要素はなくなっていった。

──どのようにして社内の意識の共有を図ったか。

「プロジェクトブライト」と称する七つの分科会を立ち上げた。通販や直営店舗、流通を始めとした事業部門、財務、情報システムといった管理部門のマネジメントクラスを、部門横断で集めた。

社内の構造改革を大胆に行っていく上で懸念していたのは、マネジメントクラスとそれ以外のメンバーに、意識の差が生まれてしまうことだった。会社全体で変革する意識を平準化するために、「社内報を作ろう」となった。

当社は毎月、商品を購入してくださるお客さまに対して、会報誌を内製で作成している。そのノウハウのおかげで、すぐに充実した社内報「Bright Times(ブライトタイムズ)」を作ることができた。社内報は、号外も含めて現在、全20号にのぼる。

さらに、社員からの要望や質問を集めるための意見箱を設置し、回答を全社員が共有してきた。
 
情報共有と第二創業への理解浸透を強化した結果、相互理解が進み、各ユニットの持つ能力とスキルの高さを改めて実感した。実行力の早さと徹底力は、DHCの組織が持つ強みの一つであると感じている。
 
これまでは、例えば通販部門が新たな企画を動かしていても、流通部門では、共有にタイムラグもあった。「他部署が何かやっている」程度の認識しかなかった。

現在は、部門同士がその考えや取り組みを理解し、シナジーを生み出すことを積極的に考えている。まさに、自ら考えて動く「自主自律型組織」への変革に手応えを感じている。

──5月、コーポ―レートスローガンを刷新した。どのような目的があるか。

新しいDHCがこれから目指していく姿と担うべき役割を全社員が理解し、社外へも発信していく目的で、新たにミッション・ビジョン・バリューを策定した。ウェルビーイング・ブランドの実現に向け、日々の幸せが特別なものでなくなるようにという思いから、新たなパーパスを「しあわせを、ふつうに。」とした。

5月には、当社初の社員総会を開催した。総会では、各ユニットマネージャーたちが、新たなパーパスに即した新しいユニットビジョンを全社員の前で発表した。

攻めと守りの商品戦略





──通販において、見直しを図ったことを教えてほしい。

全社的な視点で大事なのは、通販も直営店舗も流通も、すべての販売チャネルが「DHC」というワンブランドであるということだ。
 
通販には約1600万人の会員基盤があり、直営店舗は現在97店舗、ドラッグストアやスーパーなどの卸先は5万店舗以上に上る。顧客接点の範囲は広い。

通販はお客さまの獲得効率も良いが、通販だけに偏ると、本来、お客さま視点に立つべきことなのに、そうではなくなってしまうときがある。例えば、お客さまのために良かれと思って取り組んだ「豊富な商品の品ぞろえ」が、実は見直すべき大きなポイントの一つだった。

商品を増やし過ぎたことで、お客さまが何を選べばよいのか迷ってしまう結果になっていた。

この事実を真摯(しんし)に受け止め、重要課題の一つと位置付け、早急に商品ポートフォリオを見直した。新たな顧客接点となる、魅力的な商品の開発を強化する「攻め」を推進。同時に、ロングセラーの定番品の良さを訴求し続けファンを離さない「守り」の姿勢も推し進めながら売り上げアップを図り、コストを削減する体制を突き詰めた。

豊富な顧客接点の場を持っているDHCの強みを生かし、各チャネルの特性と特徴を最大限活かした展開を継続していく。

──今後、DHCが目指す事業戦略について聞きたい。
 
「ウェルエイジング」をテーマにした商品展開を模索していく。開発する商品の一つ一つに、新たに掲げたパーパスへの想いを乗せていく。

例えば、5月に放映したテレビCMの「マルチビタミン&ミネラル」のサプリメントは、手軽に40種類の栄養素が摂れるベーシックなサプリだ。「手軽なサプリでセルフケアを日々の習慣にしてほしい」という想いを伝え、お客さまのウェルビーイングな人生を応援していきたい。

当社のコアな顧客層はミドル世代からシニア世代だ。ただ、それ以外の年代層でも、生活習慣が不規則で、健康に課題を抱えている人は多い。こうした、まだ当社と接点が少ない若年層にも今後はしっかりアプローチをしていく。

これまで当社では、LTVを重要な指標として分析してこなかった部分が課題でもあった。目下、デジタルでの顧客接点も模索しており、商品以外の、新たな体験価値の提供も検討している。


【記者の目】
ディーエイチシーの経営体制が変わってから約1年半。カリスマ経営者によるワンマン体制から、ボーダレスな組織へと変革を遂げている。




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