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2023.11.28

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アマゾンジャパン ジャスパー・チャン社長 「多様な受取方法で物流問題に対応」【40周年記念インタビュー】

アマゾンジャパン ジャスパーチャン社長



アマゾンジャパンでは近年、日本の中小企業の支援に注力しているという。中小企業が人的資源や経済的資源の有効活用について課題を抱える中、サービスやツールを提供することにより、地方企業の全国展開や、海外展開につなげているようだ。商品の配送に関しては、「置き配」や「Amazonロッカー」など、受け取り方を充実させることにより、ドライバーの負荷の軽減を目指しているという。中小企業支援を中心とした直近の取り組みや、物流の2024年問題への対応策、今後のEC市場の展望について、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長に話を聞いた。




――直近の取り組みについて教えてほしい。

当社は2000年に日本での事業を開始した。現在では、約14万社の日本の販売事業者が商品を販売しており、その多くは中小企業だ。

当社では、便利で革新的なツールやサービスの提供を通じて、販売事業者を支援している。2022年、日本の販売事業者は、アマゾンで数億点の商品を販売し、平均売上高は前年比20%以上の増収となった。販売事業者に対する当社の長期的な取り組みは、日本経済全体にプラスの波及効果をもたらし続けている。

中小企業は、限られた、人的資源や経済的資源の有効活用について、常に課題を持っている。そのため、ECを活用し販路を広げ、事業を拡大したいという考えの中小企業は多い。



EC支援で地域活性を


日本各地の販売事業者が、アマゾンで販売することによって、販路を日本全国、海外に拡大し、地域産業を活性化することができたという事例もある。

兵庫県の西山酒造場では、日本酒を若年層や女性の顧客にも楽しんでほしいという考えから、ECの活用を始めた。ECを始めたことにより、全国から注文が入るようになった。今まで出会えなかった顧客が、日本酒の蔵を訪れるというケースが、毎週のようにあると聞いている。

蔵を訪問する顧客が増えたことにより、蔵の直売所で日本酒を購入する顧客も増加傾向にある。日本の伝統産業のひとつである日本酒の魅力や文化を、より多くの顧客に伝えるうえで、ECが役立っていることをうれしく思っている。

宮崎県の杉本商店は、2017年からアマゾンで、干しシイタケの海外販売を開始した。干しシイタケの国内需要が縮小傾向にある中、約50年の取引関係がある生産者の生活を守り、地域の産業を持続可能なものにしようとしている。現在では8カ国に出店し、特に米国で積極的に販売している。

日本の中小企業は、地域社会の中核であり、日本経済の柱として大きな役割を担っている。日本の全企業数のうち9割以上を占め、日本で働く人々の約7割が中小企業で雇用されているといわれている。

ECの難しさは、当社も経験をもってよく分かっている。長年にわたり培ってきた、知識と経験を、販売事業者にも共有できればと考えている。

当社では、中小企業の支援に引き続き注力する。販売事業者が次のレベルに到達し、ブランドを成長させるための、新しく改善されたツール、プログラム、サービスを幅広く提供し続けていく。


多様な配送手段で対応


――物流の2024年問題への対応として考えていることは。


当社にとって、配送パートナーの配送体験は最優先事項の一つだ。物流・配送拠点では革新的なテクノロジーソリューションを活用し、業務プロセスのあらゆるところで、配送パートナーがより簡単に商品を配送できるよう、サポートできる仕組みを整えている。

フルフィルメントセンターでは、梱包サイズの最適化に取り組んでいる。商品をダメージから守りながら、より簡素化した梱包を目指している。梱包を簡素化することにより、トラックで運べる荷物の容量を増やし、物流の効率化につなげている。

ラストワンマイルにおいては、配送オプションの初期設定を「置き配」にすることにより、顧客の在宅・不在にかかわらず、商品を安全に届けている。再配達を削減し、ドライバーの負荷も軽減している。

他にも、「Amazonロッカー」や「Amazonカウンター」といった、自宅外の受け取りサービスを充実させ、顧客の都合に合わせて、商品を受け取れる仕組みを整えている。

三井不動産レジデンシャルリースのような不動産業者と提携し、ドライバーが顧客の応対なしに、安全にオートロック付きマンションへと入館できる「Key for Business(キーフォービジネス)」を導入し、再発達の大幅削減に取り組んでいる。今後も引き続き、配送パートナーの声に耳を傾け、ドライバーの配送体験をより簡易化する方法を模索していく。


日本は「お得感」求める


――これからのEC市場をどう見ているか。


当社では、日本経済はさらに成長すると考えており、昨年は1兆円以上を日本に投資した。顧客の消費行動としては、「お得感」のある購入体験を求める傾向がうかがえる。

プライムデーや、先日開催されたプライム感謝祭のようなイベントは、アマゾンのビジネスパートナーや、販売事業者のビジネスの成長を後押ししている。ブラックフライデーなどのイベントにも期待している。

当社のミッションは、「地球上で最もお客様を大切にする企業」になることだ。その実現に向けて日々取り組み、日本の顧客のニーズに応えるためのしっかりとした基礎を築いてこれたと思う。一方で、日本市場ではまだまだできることがたくさんあるとも感じている。

経済産業省のデータによると、現在の日本の物販系BtoC市場におけるEC化率は、まだ1割にも満たない状況だ。顧客に、「アマゾンは信頼できるサービスを提供するパートナーだ」と感じてもらえることを目指していきたい。

常に謙虚さを忘れず、毎日がはじまりの日だという姿勢を持ち、顧客の多様なニーズに応えられるよう、サービスやイノベーションの提供に取り組んでいきたい。日本の産業界の一員として、日本の経済や社会の発展に長期的に貢献していけたらと思う。




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