自社開発した美容品・日用品などの、卸やECを行う、I-ne(アイエヌイー)は、2023年12月期の連結売上高が、前期比18.1%増の416億4300万円となった。成長の要因や、オンラインの戦略について、執行役員・CSOの伊藤翔哉氏に話を聞いた。
ECモール売上は32.7%増
──御社の業績について聞きたい。
2023年12月期の連結売上高が、前期比18.1%増の416億4300万円だった。ECの売り上げは、その内約3割だ。
オフライン・オンラインともに成長を続けている。
特に「YOLU(ヨル)」の伸長が、増収につながっており、ECでは特に、美容家電ブランド「SALONIA」が好調だ。同ブランドはもともと、ドライヤーやヘアアイロンなど、どちらかというと低価格ラインがメインだった。2022~2023年は、中・高価格ラインの商品発売を進めていった。その結果、EC上のプロモーションとうまくマッチし、伸長していった。
特にアマゾンなど、ECモールとの相性が良い。楽天市場では、「SALONIA」の「EMSリフトブラシ」が「楽天週間ランキング1位」を28週連続で受賞するなど、好調だった。
2023年10-12月期(純第4四半期)における、国内ECモールの売上高は、前年同期比32.7%増となった。
──ECにおけるプロモーション戦略について聞きたい。
広告運用においては、広告だけで新規のお客さまに購入していただくというよりは、CPAも見ながら、”コミュニケーションを取る”という考え方でプロモーションを展開している。
例えば、インフルエンサーの投稿を見ても、購入していない人も多い。CPAだけを見て、各PR案件で直接購入してもらうような、その場での刈り取りを意識した強硬なコミュニケーションを行っていると、ブランド自体の価値が下がってしまう恐れがある。
当社では、「SNSのプロモーションを見たお客さまが、商品を購入するタイミングで、当社のブランドを想起していただく」ための、コミュニケーションやブランディングを重視して行っている。
SNSの広告には、プロモーションを展開し、そこからオーガニックな購入をどうやって生んでいくのかという、バランスを取った戦略・視点が重要であると考えている。
ダイレクト広告のアップデートも図りたい。
バナーやLP、記事コンテンツなど、さまざまな接触で、「認知」を獲得した後、「購入する」「購入しない」「マイナスなイメージを持つ」など、リアクションはさまざまだ。その中で、「お客さまのブランドに対する好意度合をどれくらい上げられるか」が、数カ月後のオーガニックな購入につながっていくと考えている。
──「YOLU」はブランド立ち上げからわずか2年で累計販売数2500万個を突破。次々とヒット商品を生み出している。人気の秘訣は。
ナイトケアビューティーブランド「YOLU」は2021年の発売時、コロナ禍のおうち美容のニーズの高まりを受け、「夜間」「ナイトケア」という切り口でアプローチを行った。現在も引き続き、こうしたブランドの、コンセプトや世界観などを伝えるために、投資を行っている。
しっかりとブランディングに向き合い続けていることが、一過性のブームに終わらず、継続的な成長につながっていると考えている。
「アート」も重要視
当社ではマーケティングにおいて、「アート」「クラフト」「サイエンス」のバランスを重視している。
優れた製品を開発する「クラフト」や、データでの分析などの「サイエンス」に特化した商品は、市場に数多く存在する。その中で当社は、「アート」部分にも力を入れている。
「アート」によって、当社のブランドの世界観をビジュアル化して表現している。
当社の全体の社員数は350人ほどだが、そのうち、ブランディング・デザインに特化し、インハウスクリエイターなどが所属する「ブランディング本部」のメンバーが70人強いる。ブランドコンセプトや、パッケージ、SNS運用、動画、サイトづくりなど、クリエーティブの統括・制作を担っている。
──貫性のあるブランディングを行い、お客さまに、世界観や思いをダイレクトに伝えられている点は、当社の大きな強みだ。
【記者の目】
I-neはヘアケア商品や美容家電などを展開している。2024年2月、スキンケア商品を展開するインサイトケアブランド「ennthy(エンスィ)」をリリースした。今後スキンケア分野にも、本格的に注力していくという。
伊藤氏は、「スキンケアの市場規模は大きい。さらなる成長を目指す上で、新規マーケットへの挑戦は欠かせないと考えている」と話す。
これまで積み重ねてきたノウハウや知見を生かし、ブランドを展開していくとしている。