1位となったオルビスでは2023年12月期の直販売り上げ(自社通販及び自社店舗の合計)が、前期比7.4%増の365億2900万円となった。売り上げの大部分を化粧品が占めるとみられる。同社の全体の売り上げのうち、直販売り上げ85.2%を占めるとしている。「オルビスユードット」など高価格・高機能商材での顧客獲得が順調に進んでいるそうだ。
2位のファーマフーズの23年7月期の、育毛剤などを含む化粧品通販の売上高は、351億500万円だった。同社の「ニューモ」ブランドのまつ毛美容液「WMOA(ウモア)」の販売が好調で、2023年7月末時点の累計出荷件数が220万本を突破したとしている。
主力の「ニューモ育毛剤」も伸長を続けているという。
同社の子会社・フューチャーラボ(本社東京都)の売り上げも、2023年7月期は前18.3%増の97億2400万円と好調だった。
3位は新日本製薬で、同社の2023年9月期の化粧品の通販事業の売上高は前2.2%増の333億9000万円だった。若年層の開拓が進み、「PERFECT ONE FOCUS(パーフェクトワンフォーカス)」ブランドが伸長しているという。
コールセンターでクロスセルを推進したことなどから、複数商品を購入する顧客の比率や、定期顧客の購入単価が、継続して上昇したとしている。
化粧品の主力商品である、同ブランドの「パーフェクトワン オールインワン美容液ジェルシリーズ」を中心に、LTVを重視した広告投資を行い、成長の基盤となる定期顧客づくりを推進したという。
やや上向くか
苦戦が続く化粧品通販業界だが、アンケート調査で「今後1年間の化粧品通販市場の景況について」の質問を行ったところ、9社中5社が「上向く(1社)」「やや上向く(4社)」と回答した。他の回答は、「横ばい(2社)」「やや縮小(2社)」だった。
化粧品市場自体は依然として巨大なマーケットだ。今後の景況については、比較的明るい見立てが多かった。
ウェブコスト増大
一方で、競争は激化しており、化粧品の通販・ECのマーケティングコストは増加の一途をたどっている。
本紙が実施したアンケートでは、「広告コストについて、広告のCPA(顧客獲得単価)は上がったか?」という質問に、11社中6社が、「非常に実感している」と回答、3社が「まあまあ実感している」と回答した。CPAの上昇を実感しているという回答が8割超を占めた。
紙への回帰か
ウェブ広告のCPAの増加率について、「どの程度か」を聞いたところ、「30%ほど上がった」という回答もあった。
「オンラインの広告は15%増となったが、オフラインの広告のCPAは変わらなかった」という事業者もいた。「ウェブ広告は10%増、紙媒体の広告(新聞広告、折込チラシ、カタログ同送)は5%増」という回答があった。オフラインの広告の効率の悪化は、ウェブ広告ほどではないようだ。
そうした中、”紙”を活用した広告に注目し、投資比率を高めるEC事業者も増えている。
〝紙〟は広告手段としてだけでなく、コミュニケーション手段としても、改めて注目されつつある。今後ますます紙の活用方法や可能性が拡大していきそうだ。
海外進出に熱視線
「円安」「少子化による人口減」などを背景に、海外への本格展開に力を入れはじめる事業者は少なくない。
アクシージアの2023年7月期の中国・日本のEC全体の売り上げは、前期比38.2%増の85億4000万円だった。大半を中国ECの売上高が占めている。同社は中国短尺動画ECプラットフォーム「ドウイン(中国版ティックトック)」を中心に、今もなお業績を伸長させ続けている。
このように大きく成長を続ける事業者もいる一方で、中国ECで売り上げを落としたという事業者も少なくない。昨年の処理水問題などの影響から、中国市場では、日本ブランドの化粧品への風当りが大きく悪化した。
中国は依然として巨大なマーケットだが、市場環境の変化などを踏まえ、東南アジアに目を向ける事業者も増えているようだ。