ダスキンは11月16日に創業60創業60周年を迎えた。ダスキンは創業以来、「道と経済の合一」を掲げ、「社会価値向上」と「経済価値向上」の双方の実現を目指している。長期戦略「ONE DUSKIN」をもとに、新規事業として10月に海外向けECサイトを新設したほか、子育て支援施設(保育園など)を運営するJPホールディングスへの出資及び業務提携をするなど業容拡大を図っている。大久保社長に訪販の社会的な役割と将来について聞いた。
ウェブの顧客接点を強めてきた
─11月に創業60周年を迎えた。訪販業界を振り返って、これまでの変化について伺いたい。
訪問販売、対面販売にとって、インターネット環境の進化が大きな変化と言える。共働き家庭が増加するにつれ、在宅率は低下し、ドアツードアで会うことができた消費者との対面がより難しくなってきた。
10年ほど前は当社のコンタクトセンターに寄せられるお客さまからの申込み電話が大半を占めていたが、現在はインターネット経由の申込みが7割を占めている。さらに1件当たりの処理時間も減少傾向にある。これは当社のウェブサイトへの誘導に力を入れてきた成果でもある。
コンタクトセンターには24時間ウェブサイトで申込み頂き、基本は対面でお届けする仕組みだ。
保険業界でも店舗を構えてタッチポイントとして活用しようという企業が増えてきた。こうした事例を見ても、対面でコミュニケーションを図る重要性がより増しているように感じている。
当社が推し進める長期戦略「ONE DUSKIN」の第3フェーズ「中期経営方針2022」(2023年3月期―2025年3月期)では、カスタマーエクスペリエンス(CX)戦略を掲げている。購入前、購入時、購入後のそれぞれの体験と連携を計っていくが購入時の体験は対面を重視することでカスタマーエクスペリエンス(CX)を高めていきたいと考えている。
「訪販はNG」は先入観
─新規顧客の開拓が難しくなっている現状について。
新規顧客との接点作りについての課題に、昼時間帯の不在世帯の増加とオートロックマンションの増加があると思い込んでいた。しかし、昨年から始めた新規顧客の契約を目指すための「家庭用営業専任組織」では、オートロックマンションのインターホンから「ダスキンです」と呼び掛けると、意外に玄関を開けていただける世帯が多いということが分かった。ドアは開けてもらえないという先入観が行動を自ら制限していたのかもしれない。
コロナ禍を経て、リモートで仕事をする人が増えたことで、在宅率が増加している印象もある。自宅にいる時間が長ければ、掃除のニーズも高まる。掃除して衛生的な環境を整えたいということではないかと考えている。
当社では、最新のホコリの研究を通じて、抗菌・抗ウイルスをテーマにした製品を開発している。基礎研究を継続してきたからこそ、コロナ禍でお客さまに高機能な製品を提供することができた。
─コロナ禍で進んだデジタルへの対応については?
世の中がデジタルにシフトする中で、本部と加盟店、加盟店と販売員とのコミュニケーションも大きく変わった。情報共有の手段については有効に活用している。
デジタルが台頭しているとはいえ、販売員の対応については変えていない。ただ、情報量という視点では、お客さまにお伝えしきれていない内容も多いため、契約後にウェブ会員サイト「DDuet(ディーデュエット)」への登録を通じて、「マイページ」を経由したつながりを強化している。
「ヒューマンタッチポイントの強化」
─今後の訪問販売の社会的な役割を含めて見通しについて聞きたい。
望まれるお客さまに対してはヒューマンタッチポイントを強化していかなければならない。これは、年齢層や家族構成などによって異なってくるだろう。定期訪問でのコミュニケーションに加え、「マイページ」の履歴をベースに提案させていただいている。
ダスキンでは、モップのレンタルだけではなく、プロのお掃除や家事代行、高齢者向けサービス、イベントの企画運営サービスなど訪販グループだけで16の事業を展開している。こうしたサービスをネットだけで説明するのは難しい。
長く地域に根差して、地域との結びつきが強いFC加盟店の強みを生かし、当社の製品やサービスを提供することで、地域や社会が抱える課題を解決できるように目指していきたい。