ベルーナは約40年前から通販事業を展開している。カタログ通販を中心に事業を展開する総合通販企業ではナンバーワンの売り上げ規模を誇る。ネット通販の台頭で、業績を大きく落とす総合通販企業が多い中、事業を多角化し、ポートフォリオ経営で堅調に事業を展開している。1968年の創業から会社を率いる安野清社長に、成長の秘訣や通販業界の変化、今後の展望を聞いた。
阪神大震災で成長停止
――約40年間、通販事業を展開する中で、どんな環境の変化に最も影響を受けたと思うか?
阪神大震災の影響が最も大きかったと思う。それまで毎年20~30%の成長を続けていたが、震災直後は成長が止まってしまった。今までのやり方ではダメだ、何か変えなければと思い、新しい収益の柱を複数立ち上げた。
それまでは総合通販一本でやってきたが、それを機にグルメ、ファイナンス、単品系通販などを始めた。
――新規事業を展開してもうまくいかない通販企業もある。ベルーナは業態を広げ、堅実に成長している。新規事業を成功できている要因は?
当社は頒布会をやってきている。頒布会はセット販売、割賦販売であり、それらの強みを生かすことができた。他社は職域販売やダイレクトマーケティングなどがルーツにあり、頒布会のノウハウがなかった。当社のルーツである頒布会の強みを発揮できた。
――組織のマネジメント力にも秀でた面があったと思う。
結局、どの会社もそうだが、商品が売れればうまくいき、売れなかったらうまくいかない。どんなに優秀な人物が経営しようが、売れなければ意味がない。優秀ではなくても売れれば組織はうまくいく。売れる状況をどう作り出すかが重要だ。ただ、売れる商品を作り出すには、人材も必要だし、組織も必要だ。
分野で異なるEC戦略
――カタログ通販からネット通販も強化しています。それぞれのチャネルをどう捉えて運営しているのか?
通販ではネットにも力を入れており、紙とネットの融合を目指している。紙とネットの融合をどう進化させるかが当社の生きる道だと思っている。
ネットはネットで競争が激しい。ネットの勝ち組というと、ネット専門の会社より、店舗とネットの融合でうまくやっている会社になりつつある。当社も紙とネットの融合でさらなる成長を目指したい。
――さまざまな商材やサービスを展開しているが、それぞれの紙とネットの融合の状況はどうか?
総合通販と専門通販でセグメントを分けて進めている。専門通販は定期販売が主として始まったが、総合通販のようにさまざまな商品を品ぞろえするというより、少ない品番数で商品カテゴリー、セグメントを狭めて、しっかり縦売りしていくイメージだ。この専門通販に関しては、紙とネットの融合はしっかり軌道に乗っている。過去10年、20年を振り返えると、専門通販の売り上げは3倍くらいになっている。
――総合通販のネット展開はどうか?
総合通販については、ネットの勝ちパターンがまだ作れていないと思う。総合通販はいろんなブランド、カテゴリー、膨大な品番数がある。紙では、カテゴリーごとに分かれているが、ネットでは一つのサイトにまとめている。ブランディングの面でも価格訴求の面でも、総合通販のネットは中途半端な状態になっている。総合通販は紙では勝ちパターンを持っているが、これを無理やりネットにシフトしようとすると、全体がおかしくなる可能性がある。
総合通販の顧客層の中心が50代~70代であり、ネットとの親和性をみても、無理に融合しない方がいいと考えている。紙を中心に注力する中で、ネットはネットでプラスの売り上げや利益を作れればよいと思っている。
専門通販はすでにネット比率が40~60%くらいまで高まっているが、総合通販のネット比率は20%くらいに留まっている。昔は10%以下だったので、伸びてきているが、あまり無理に伸ばそうとはしていない。