買い物はより楽しくなる
――今後のEC市場はどう変化していくと考えているか?
ECの普及率はまだ上がっていくだろう。まだ普及率が低いカテゴリーは、その課題を乗り越える技術やサービスが登場し、全体の普及率を押し上げると思う。
EC市場は全体としてまだ伸びていく中で、その中身がどうなっていくかという観点では、2つの方向性があると考える。
1つは「買い物が楽しい」が、より先鋭化していくと思っている。「楽天市場」はずっと「ショッピング・イズ・エンターテインメント」を掲げているが、「楽天市場」に来ていただき、お買い物を楽しんでいただくだけではなく、消費者の生活やエンターテインメントの中にECが入り込んでいくと思う。個人の日常の楽しみとECがつながり、買い物自体がより楽しくなるのではないかと考えている。
もう1つは逆に、「買い物自体を意識しなくなる」という方向性も先鋭化するのではないか。必要なものは意識せずとも、必要なときに手元に届くような形になると思う。買い物をしているという感覚すらないという世界だ。
この2つの方向性はどちらだけが進行するというものでもなく、1人のユーザーがどちらかだけというものでもない。両方の方向性が同時に進み、1人のユーザーが両方を体験していくようになると思う。
小売はお客さんとの接点になるサプライチェーンの最後のポイントだ。売り方が変化すると、もの作りも併せて変わっていくと思う。
社会という観点でも、買い物が楽しくなれば人々の幸福度は上がっていく。必要なものが必要なときに得られるようになれば、無駄な消費が減り、廃棄物も減る。社会全体のサステナビリティも上がっていくだろう。
――買い物がより楽しくなるというのは、具体的にはどういうイメージなのか。単純に「ライブショッピング」のような売り方がもっと普及するということなのか?
「ライブショッピング」を含めてフォーマットは今後も、いろいろ出てくるだろう。ここでイメージしているのは、ユーザーが普段、探したり、見たり、読んだりする行為と買い物が同質化していくという世界観だ。よりメディアとECが混ざりあっていくのではないか。
これまでリアルだと、その体験は分断されていた。リアルでは、雑誌を見て気になった商品を週末、実店舗に買いに行くような流れだが、デジタルではある程度、その行為が同時にできるようになった。探したり、いいなと思うインプットと、買い物というアウトプットが、もう少し行ったり来たりしたり、同じ状態の中でなされたりすることで、より全体の楽しさを上げていけると思う。さまざまなコンテンツやキュレーションされたものを見ながら買い物するのが、そのファーストステップだ。そうした体験がもっと進んでいくと思う。
――「楽天市場」はどう進化していくのか?
「楽天市場」は、その2つの方向性のどちらもやっていく。マーケットプレイスとして、店舗さんと一緒に取り組んでいく。店舗の知恵や工夫、リソースを最大限発揮できる仕組みを考えるのがわれわれの仕事だ。