トランスコスモスの2023年3月期の売上高は前期比5.6%増の3738億3000万円だった。一方、今期第1四半期の売上高は、前期比4.6%減の889億4700万円と減収だった。田渕和彦常務執行役員は「今期に入りコロナや公共事業などの注文が減少していることが影響している。その中で当社としては、顧客接点におけるチャネルを横断的に把握し、最適な顧客接点を創出することに注力していく」と話す。田渕常務執行役員に、前期の振り返りと今期の注力点、業界トップが見据えるコールセンター業界の展望などについて聞いた。
前期は好調、今期は減収
─2023年3月期は好調だった。改めて振り返ってもらいたい。
2023年3月期は、前期の売り上げを超えることができ、会社として成長することができた。要因としては、既存事業の維持・伸長とともに、公共事業関連などの受注を獲得できたことが大きい。
コールセンターだけというよりは、広告など当社のさまざまなサービスを掛け合わせて利用してくれた顧客が多かった。もちろん通販企業からの受注もあった。大手企業というよりは、さまざまな規模の企業から、細かい要望の注文があった。
─今期の第1四半期の売上高は前年同期を少し下回った。
今期は先に述べたような公共事業関連や、変動の大きいスポット案件などは終了、または縮小していくと思っている。今期はノンボイスや会社のアセットを活用して、うまく売り上げを伸ばしていきたいと考えている。
特に顧客接点のCX課題を解決するデジタルプラットフォーム「TCI-DX for Support」をうまく活用していく。消費者は商品を購入する際に、必ずしも電話をかけて購入するだけではない。スマホを使用してネットで購入することもある。
「TCI-DX for Support」は電話のほか、スマホ、パソコン、SNSなど全ての情報を収集し、データを分析し、課題を発見する。要はいろんな角度から入ってくる顧客の声を集めながら課題がどこかをきちんと見える化し、ピンポイントで課題を解決していくということだ。一部分ではなく、全体を見て、最適な顧客接点を創出していく。現在、特に力を入れているテーマだ。
─顧客にとって最適な顧客接点を提供するということは、自発的な解決を促すことだとも思う。そうなると、今後貴社としてはテクノロジーを重視し、人の対応は少しずつ減らしていくということか?
”人財”は今後も重要なポジションを担っていく。さまざまなチャネルでのデータを収集し、分析したアウトプットをどうやって顧客に提供していくのか。ここはまだある程度、人が担う部分だと思っている。今後、伝え方なども含め、ますます”人財”の役割は重要になってくると思う。
─コールセンター企業の中には、通販企業の受注がコスト的に割に合わないと言い、少しずつ受注を減らしている企業もあるという。昨今の人件費高騰やスタッフの意識の問題など、通販のコールセンターを請け負うことに懐疑的な企業も増えている。貴社はどう捉えているか?
ウェブ注文の拡大やDXを含めた自動化、効率化が特に求められるため、それに応えられる企業でないとクライアントのニーズにマッチしにくいのだと思う。その上何の仕組みもなく、電話を受けて対応するだけのような形では厳しいだろう。通販の受注を担う場合は、「TCI-DX for Support」のように、全てのチャネルの情報を把握し、それを分析し、適した販促を仕掛ける。このような仕組みがないと難しいだろう。
さらに当社としても、コールセンターだけではなく、物流、CRM、広告など、全てのアセットを組み合わせながら、機動力を持って、顧客の要望に応えていきたい。
─今後業界はどのように変化していくと考えているのか?
他社と大きく考えていることが違うことはないだろう。人の重要性は変わらない。それを踏まえた上で、企業が求めていることに合わせ、消費者が心地良いと思う接客を提供していくことが大事だ。単純な効率化ではなく、消費者が気持ち良いと思う接客方法をクライアントと一緒に考えていくことが重要になってくるだろう。