シルバーライフの高齢者向け配食事業に関する23年7月期の売上高は、前期比10.3%増の102億500万円となった。FC加盟店を同一エリア内で競わせる環境を作り、活性化を図っている。高齢化が進む日本では、今後も成長が期待できるマーケットと捉えているが、人材確保が深刻な課題になっていて、冷凍弁当通販で補強を図る局面を迎えているという。
──配食サービスブランドの違いについて伺いたい。「まごころ弁当」「配食のふれあい」「宅食ライフ」の三つのチェーンは、事業としてほぼ同じ。店舗ごと、チェーンごとに競わせて成長させるため、あえてこういった形式をとっている。
現状はマーケットが良いために、なにもせずに売り上げは伸び、店舗運営が成立してしまう。オープン直後は集客に力を入れるが、黒字化すると積極的に営業を行わなくなる加盟店がある。
人材確保の観点から、配達エリアを狭めたり、1食の単価を引き上げたりと、放っておくと積極的に営業しない店舗が増えていってしまう。一つのエリアに最大3店舗を設けることで、加盟店が切磋琢磨して高めあう環境を作っていきたいと考えている。
競争の結果、売り上げが大きく、有能かつ積極的なオーナーに引き継ぎ、統廃合している。
──「良いマーケット」と話したが、どのように捉えているか。「良い」と思える理由は大きく二つ。一つ目は、毎日の買い物や調理が辛くなり、配食サービスを使わざるを得ない状況にある、後期高齢者が増えていること。統計上は55年くらいまで増え続けると予想されている。二つ目は、このような状況下でも国の介護保険制度が弱くなってきていること。自分でなんとかしなければならない範囲が広くなっている。
当社の事業はネガティブ需要だと捉えている。仕方なく利用している人も多い。最後の頼みの綱として頼っているのが配食サービスだ。
これからも伸びる産業だと思うので、真っ先に強く進めていこうと考えている。
──伸長要因を伺いたい。高齢者向け配食サービスは配達員の採用が難しく、伸び悩みが見えている。すでに地方では、需要に対応できない状況も発生している。
拡大する需要には、冷凍弁当のネット通販で対応している。配食サービスより強力になり、業界全体を浸食していくのではないかと思っている。当社も冷凍弁当で伸ばしていかなければならない。
──業界内で優位に立つために、どのような施策を打ち出しているのか。できるだけ安く、良いものを提供していくことに尽きる。高齢者はお金の使い方がディフェンシブで、付加価値戦略、差別化戦略、ブランド戦略はどれも通用しない。価格戦略しかない。
調理面については自社工場で管理している。内製化で価格競争力を強化し、質の維持も実現できている。今は行っていないが、内製の方が安くなるようであれば、運送についても検討する。
──集客はどのようにしているか。どのように話せば試食のアポが○%取れて、そこから定期購入になる確率は○%で、といった科学的な方法は確立できている。私自身が、販売実績を上げた店舗の店長だったので、自分が試行錯誤して作ってきた販促ノウハウを、チェックリストや動画教材にして加盟店に伝えている。実務、店舗内作業レベルなど細かいものも多い。
toCの営業はほとんどしていない。ケアマネージャーなどの介護事業者へのアプローチを主としている。最近は利用者本人からのネットへの問い合わせも増えてきた。
──今期の着地、来期の展望について。提示している予算を目指して一歩一歩積み上げていく。配食サービスのブランドについては、現状を維持していきたい。
来期はさまざまな食材の値上がりがある。その波に飲み込まれないように努力していく。値上げする可能性もあるが、他社よりも安く提供できるように努める。