「クリクラ」ブランドで宅配水事業を展開するナックの、2024年3月期における「クリクラ」事業の売上高は、前期比3.4%増の152億3900万円だった。2023年の猛暑の影響で、1件当たりの顧客単価が上昇し、増収増益につながったという。4月にクリクラビジネスカンパニーの代表に就任した、川上裕也取締役専務執行役員は、「人手不足の影響が今後大きくなると予想しているが、一人一人の既存のお客さまの満足度の向上を図っていきたい」と話している。川上代表に、宅配水市場の景況感やナックの展開について聞いた。
地域ごとに戦略分け
──4月にクリクラビジネスカンパニーの代表に就任したが、抱負を聞きたい。
これまで私は取締役として、当社の管理部門の統括や、化粧品通販のJIMOSの代表を務めてきた。「クリクラ」は当社の中でも最も重要な事業であることは間違いない。前任の小磯雄一郎取締役が10年にわたって成長させてきた「クリクラ」の事業を、今後もしっかりと伸ばしていきたいと考えている。
──「クリクラ」の代表として現場を見ての感想は。
アフターコロナという時勢もあり、地域ごとに販売戦略を分けて立てていく必要があると考えている。
私はこれまでも、ナックの取締役として「クリクラ」の事業を見てきた。「クリクラ」の代表となったことから、現場で生の声を聞いているところだ。現場から個々のアイデアを拾い上げ、事業運営に反映していきたいと考えている。
現状の課題としては、宅配水の新規のお客さまが、他社と取り合いになってしまっているということがある。
現在宅配水市場では、ワンウェイ、ツーウェイ、浄水型サーバーと、大きく3種類の方式があり、お客さまのニーズも多様化している。各社が、お客さまのニーズに合わせて提案を行っている。
当社は、直営部門と加盟店部門に分かれており、地方を中心とした、約500社の加盟店と契約している。新規のお客さまの獲得においては、商業施設などにブース出展し、お客さまとの接点を作って提案するのが一般的だ。
アフターコロナとなり、都市部では人流がコロナ前と同等に戻っている。しかし、地方ではまだまだ人流が少ない地域もある。人流が少ない中で、どうすれば新規のお客さまを獲得できるかといった点の支援も、本部として行っていく。地方では、既存のお客さまに新規のお客さまを紹介していただくケースも多い。まずは、既存のお客さまの満足度を高めるルートセールスが重要だと考えている。
増収要因は猛暑と価格改定
──2024年3月期の業績を振り返ってもらいたい。
2024年3月期の「クリクラ」事業の売上高は、増収増益となった。売上高は前期比3.4%増の152億3900万円、営業利益は5.4%増の17億600万円となった。
昨夏の猛暑が影響し、一顧客当たりの水の消費量が増えた。期初の予想を上回る売り上げを記録できた。
当社では2022年10月、クリクラボトル(水ボトル)の値上げを行った。5.8リットルボトルは1本あたり70円、12リットルボトルは130円値上げした。
2年前の値上げが、業績好調につながっている。
宅配水のビジネスモデルでは、既存のお客さまは、一定の割合で解約していくものだ。新規のお客さまの獲得を進めつつ、既存のお客さまに別商品を提案したり、満足度を高めたりする施策が必要だ。
「クリクラ」の宅配水に契約した場合、年に一度必ずウォーターサーバーのメンテナンスを行っている。内部の徹底洗浄を行っており、安心・安全にお水を飲んでいただけることには、自信をもっている。
──市場では浄水型サーバーのニーズが引き続き拡大している。「クリクラ」ではどうか。
当社でも、メインの宅配水に比べて規模は小さいが、浄水型サーバーの売り上げは拡大している。
物価高の影響で、「宅配水を契約するのはハードルがあるが、きれいな水が飲みたい」というニーズを、浄水型サーバーが取り込んでいると考えている。
当社以外の宅配水の会社でも、同様の状況ではないかと考えている。各社が高品質な浄水型サーバーを提供しているが、「安心・安全」という意味では、クリクラの水を、自信をもってお勧めしたい。
──2025年3月期の戦略を聞きたい。
起死回生の戦略というものは生み出しづらいと考えている。一人一人のお客さまの満足度を高め、お水をしっかり使っていただき、少しずつ成長していくほかはないと考えている。
加盟店向けには、新規のお客さまの獲得につながるようなキャンペーンや企画を展開していきたい。
今後、人手不足はさらに深刻化するだろう。ただ、対面の販売でお客さまとの信頼を構築している我々としては、人材の採用が肝になる。加盟店にとっても、人材が採用しやすくなるような施策を展開していく。
ナックとしても、社名である「Nac」のブランド認知を高め、人材を集める戦略を強化したい。