テレビショッピング番組「ショップチャンネル」を展開するジュピターショップチャンネル(本社東京都、小川吉宏社長)の2024年3月期の売上高は、前期比1.8%増の1583億5400万円だった。営業利益も同7.4%増の204億7600万円だった。小川社長は「増収は4期ぶりで、増収増益は6期ぶりとなる。昨年以上に魅力ある番組を提供できるよう番組内容を変革し続けたことが結果につながった」と分析する。小川社長に前期の振り返りと、今後の展望などについて聞いた。
──前期は好調だった。振り返ってもらいたい。
大枠でいうと視聴者に対して「楽しい番組」「魅力的な商品」を用意できたことが良かったと思っている。24時間の双方向型ライブ放送や、視聴者と一緒に番組を作り上げる「Oh!cha15」、 吉本興業とのコラボレーション番組など、番組内容を強化してきた。
その結果、多くの人に受け入れてもらえ、売り上げの拡大につながったと考えている。ただ、まだ全ての要望に応えられていない。今後も新たなチャレンジを行っていく。
──前期でいうとライブ放送枠を24時間に拡大した。反響はどうだったか。
プラスの影響が表れている。2023年10月1日より、1日20時間のライブ放送を24時間に拡大した。このことで4時間も視聴者と”生”で会話することが可能になった。
──深夜帯も生放送を放送するようになったと思うが、どのような人が番組を見ているのか。
夜勤で働いている人が休憩中に見てくれていたり、夜遅くに自宅に帰ってきた人が見たりしているのだろう。意外な声としては、リアルイベントで「ショップチャンネル」のお客さまに会ったとき、普段日中に「ショップチャンネル」を見ているお客さまが、深夜帯の放送を見てくれていた。特定の人だけでなく、さまざまな人が見てくれている影響で、売り上げの増加に寄与したと思っている。
ファッション・コスメ好調
──前期だとコロナが5類に移行された影響で、売り上げ拡大に苦慮したテレビ通販企業も多い印象を受ける。貴社はどうだったか。
ファッションとコスメの販売は好調だった。当社として、視聴者の興味・関心が高いファッションカテゴリーに一層注力した。番組としてもファッションを見てもらう視聴者が多いため、ファッション特化のスタジオから放送する「ファッションデイ」をより充実させた。
特別番組として人気スタイリストが女性の毎日に役立つ着こなしコーディネートを提案する「24h×7Days Style Ind―ex」の放送も開始した。
──他社ではアフターコロナに対応して外出時に最適なファッションを販売した企業もあるが、販売が振るわなかったという声も聞く。貴社はどうだったか。
好調だった。前期はファッション関係の番組強化だけでなく、商品の拡充にも注力した。やはり「ショップチャンネル」の視聴者は”ワクワク”して買い物を楽しみたいという人が多い。そのためにも新商品の発売と新ブランドの投入を常に実施している。
新商品を見つけるこつは、”どれだけ世の中の人が気付いていない商品を発見できるか”だと考えている。まだまだ日本には良い商品があると思っており、世の中の人が気付いていない商品がある。
ただ、新商品は必ず売れるとは限らない。やってみないと分からないという事実もある。すぐに売れる商品ばかりではないため、丁寧に丁寧に育てていこうと考えている。
振り返ると会社として売り上げなどが停滞していたときは、実績のある商品、実績のある番組演出に過度に依存していた。もちろん実績のある商品は大事だが、新商品の販売も重要で、前期は新商品発売、新ブランドの投入に相当注力した。
──テレビ通販企業では珍しい、売らない番組「Oh!cha15」も放送している。手応えはどうか。
「Oh!cha15」は「ショップチャンネル」で人気のキャストが番組に寄せられたお便りを読んで視聴者と一緒に番組を作り上げる番組。実際に番組内で商品は販売しない。当初は社内からも「商品を売らない番組はどうなのか」と懐疑的な声も多かった。
だが、放送を開始してみると手応えはすごくある。商品の購入にはつながらないが、視聴者との距離は近くなった。普段番組に出演しているキャストの人間性が垣間見えて、好評を集めている。
──デジタル面も強化した印象を受ける。
「ショップチャンネル」のECサイトでゲスト、ブランド担当者、社員がファッションコーディネートを提案する「SHOP CHANNEL PEOPLE(ショップチャンネルピープル)」において「ショート動画」「番組表との連動」機能を新たに追加した。さらにアフェリエイト広告、グーグル広告、検索広告などにも注力した。どこに広告を出稿すれば、どのような顧客層を獲得できるのか。前期はこの分析に力を入れた。
テレビ通販企業から進化
──今後の展望は。
2024年度から2027年度にかけての中期経営計画2027を策定した。「テレビ通販事業」から「テレビ・デジタル・リアルを連携させた新たなショッピングエンターテインメント事業」への進化・変革を図る。
リアルは前期、「二子玉川」にポップアップストアを開設した。今後も積極的にポップアップストアを開設し、「ショップチャンネル」の認知拡大を目指していく。
今まではテレビでの伝え方は得意だったが、今後はデジタル上での情報発信にもこだわっていく。ECも強化し、テレビを見てECを利用する。テレビを見なくてもECを見て楽しめて購入を完結できることを追求する。
「SHOP CHANNEL PEOPLE」で着こなしを提案したり、テレビ通販の番組内容を短尺化した動画を掲載したりしていく。
2026年度には創業30周年のメモリアルイヤーを迎える。今後も経営理念である「心おどる、瞬間を。」届けることに努めていく。