ベルーナは今年6月の決算説明会で新たな事業グループを発表した。事業成長や収益性の拡大をけん引する「グロース領域」にプロパティ・ホテル事業、専門通販事業を分類し、事業基盤や収益効率の最大化を図る「サステナブル領域」にアパレル雑貨事業や呉服関連事業などを分類した。環境の変化や企業の実態に合わせて、「ベルーナ=総合通販」というイメージを変えようとしている。安野清社長に新事業グループ作成の狙いや、各事業の注力点について聞いた。
──新事業グループを定めた狙いは。
総合通販が伸びなくなってきた。紙代が上がり、印刷費も高騰している。総合通販市場の将来性はなかなか見通しにくい。
かつてはベルーナの顔といえば「総合通販」だったが、現在はそうではなくなっていた。企業の実態に合わせ、収益を上げている部門、これから収益を上げる主力部門を企業の顔にしようと新事業グループを定めた。
注力しているプロパティ・ホテル事業と専門通販事業を成長性、収益性を引っ張る「グロース領域」として、前面に押し出した。実態や時代の流れに合わせて、企業の顔を変えたということだ。
──新事業グループを作成したことへの投資家の反響は。
新事業グループの反応は上々だが、結果を出すことが重要だと考えている。プレゼンが天国で、結果は地獄だとしょうがない。業績による裏付けが必要だ。結果を出す責任がある。
総合通販は巡航速度
──「サステナブル領域」に位置付けた総合通販は今後、どのように運営していくのか。
無理にアクセルは踏まず、巡航速度で運営していくつもりだ。リストの収集(新規顧客の獲得)、活用(どう定着させるか)、掘り起こし(離脱した顧客をどう呼び戻すか)の循環を健全な形に戻すことが重要だ。
その中でもアパレル・雑貨事業はサンセットからサンライズに戻せるように工夫する。商品力の強化やマーケティングに注力する。ビジュアルやコピーなどもどう魅力的にするか、見せ方もブラッシュアップする。
電算システムや物流などインフラを維持するためにも売り上げ規模を減らすわけにはいかない。だからといって無理はせず、赤字幅を圧縮する。
呉服関連事業は成長性や収益性を高めるよう力を入れる。
紙とネットの融合が重要
──「グロース領域」に位置付けた専門通販事業はどう伸ばすのか。
専門通販事業の方が紙代や印刷費の値上がりに対する抵抗力がある。まだマーケットは広がっていくだろう。
ただ、競争は激しく、甘くはない。特にネット専業のところは苦戦していると思う。化粧品もグルメも紙とネットの融合にどう取り組むかが重要だ。テレビも活用していく。
──決算説明会で「化粧品・健康食品事業を200億円にまで拡大したい」と話していたが、その展望は。
売上高200億円というのは以前からの悲願だ。それを実現するためには、新商品の開発に加えて、マーケティングや海外戦略の強化をやっていかないと到達できないだろう。
担当社員のスキルと熱量も重要だ。それがあった上で、戦略がしっかりフィットしないとうまくいかない。
化粧品の海外展開に注力
──化粧品の海外展開にも注力していくのか。
オージオの化粧品などの海外戦略も強化していく。マレーシア、タイ、ベトナムなどのアジアをどう攻略するかが鍵となる。海外展開は現地の良いパートナーと手を組まないとうまくいかない。エリアにもよるが、店舗への商品展開が軸となる。海外の流通は店舗が4割、通販が6割というイメージだ。テレビCMで認知を上げる取り組みも駆使している。
──グルメ事業はどう強化していくのか。
国内通販では、日本酒やワインなどそれぞれのジャンルの通販でナンバーワンのポジションを取り、存在感を高めている。
グルメでも輸出に力を入れようと考えている。日本のマーケットは将来的に縮小するため、海外戦略をどうやるかが課題なってくる。日本酒やワインの輸出も可能性はあると思う。ただ、実際やってみないと分からない。やってみて商材ごとに反応を見て、良ければ強化していく。
物流は基本を徹底
──「グロース領域」のプロパティ・ホテル事業はさらにアクセルを踏むのか。
プロパティ・ホテル事業は外部環境に左右される面が大きい。インバウンドの波に乗り、東京を中心に北海道、京都などの観光地は調子がいい。
ローコストオペレーションを徹底し、リピーターの促進にも力を入れている。基本的なことをしっかりやることが重要だ。
お客さまにどう喜ばれるか、従業員がどう気持ちよく働けるかを考え、改善・改良し続けている。
物流・コールは伸ばせる
──通販支援のデータベース事業はどう取り組む。
データベース事業も巡航速度で注力していく。
カタログの部数が落ちるとどうしても封入・同梱サービスのパワーは落ちる。当社のカタログを介在しない形で収益を上げる方法も検討する必要があるだろう。
物流やコールセンタ―の方は、まだ伸ばせると考えている。
──通販を取り巻く消費環境についてはどう感じているか。
物を売るのが難しい環境だ。一つの要因は、消費者の所得が伸びていないことだ。所得に関しては二極化しており、中間層が減っているのだと思う。それがわれわれからすると厳しい。
アパレルでも価格を上げると、なかなか売れなくなる。ぐっと我慢しないといけない局面もある。
一方でインバウンドや輸出関連は価格を上げても買ってくれる。
国内でも最低賃金が上がることもあり、皆の給料が上がれば、市場が上向くのではないか。
人材発掘で事業を若く
──ベルーナは社歴も長く、事業規模も大きいが、絶えず成長事業を生み出してきた。これが実現できているのはなぜか。
企業が存続していくためには、いかに若い事業を保つかが重要だと考える。環境を見極めながら成長性のある事業を育てていくことが社長の仕事だ。社長は未来像をバラ色にしないといけない。
そのためには社内の若い人材を発掘することが必要だ。オリンピックも若者が活躍している。そういった若くて可能性がある人材を抜擢しないといけない。どういう形で抜擢して気持ちよく仕事させるかが腕の見せどころだ。若いというのは、必ずしも年齢だけの話ではなく、マインドの面が大きい。