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2024.08.14

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【通販トップインタビュー 】QVCジャパン 伊藤淳史CEO 「売上微減も購入数・金額は増加」

伊藤淳史氏


テレビ通販大手のQVCジャパン(本社千葉県、伊藤淳史CEO)の2023年12月期の売上高は、前期比0.3%減の1325億1700万円だった。売り上げは微減だったが、伊藤CEOは「受注金額は増加しており、1人当たりの購入数と購入金額は増えている。当社を愛してくれるロイヤルカスタマーが多くいる状況だ」と話す。伊藤CEOに減収の要因と、今後の成長戦略について聞いた。


──前期を振り返ってほしい。

残念ながら2023年12月期は、前期の売り上げを上回ることができなかった。

2023年5月に新型コロナウイルスが5類に移行され、消費者の国内旅行や帰省の動きも活発になった。当社もこの影響を受けており、当社だけでなく、通信販売をベースとする小売業全体が厳しい状況だったと思う。

そのような市況感の中、2023年7‐12月期に売り上げを盛り返すことができ、最後、受注数が年間で前年を超えることができた。ただ、当社としては顧客数を伸ばせなかったことが事実としてある。今後は顧客数と受注金額の両輪で売り上げの拡大を目指していきたい。今後の経営課題の一つとなっている。

成長の三つの軸


──2023年下半期から復調した理由は。

2023年12月に高麗人参のサプリメントを販売したが、販売数は好調だった。実は同年6月にも商品を販売したが、そのときは販売数は振るわなかった。

好調な理由としては、主に(1)ストーリーテリング(ストーリーを伝えること)(2)マーケティング(3)アドバンスドアナリティクス(高度な分析手法)─などが奏功したと考えている。12月は、どのお客さまに対して訴求すればいいのか、高麗人参サプリメントの購入を止めたお客さまにどう訴求していくべきかを分析した。この分析がうまく的を射て、お客さまが再度商品を購入してくれた。

──受注金額が伸びたということは、1人当たりの顧客の購入数が増加したということか。

おっしゃる通りだ。既存のお客さまが多くの商品を購入してくれたということだ。これは当社のお客さまは何回も商品を購入してくれる、熱狂的なエンゲージメントが高いお客さまが多くいるということを意味している。

──なぜそこまでエンゲージメントの高い顧客が多いのか。

一つはお客さまと多く触れ合えるイベントを実施しているから。コロナ禍が収束し、人流が街に戻った。当社としてもお客さまを呼んで行うオフラインイベントを実施しやすくなった。

昨年では、東京・港区北青山の「ZeroBase表参道」でポップアップショールーム「QVCウェルネスサロン2023」を開催した。9月8日には、サプライズゲストとしてアーティストのMatt Rose(マット・ローズ)が来店し、会場からインスタグラムでのライブ配信を実施した。

このほか、QVCショッピングナビゲーターやQVCゲストなども来店し、訪れた人にサプライズを提供することができた。実際にMatt Roseのインスタグラムのライブ配信を見て、その後、ショールームに訪れる人もいた。
 
2023年6月、当社の社屋でジュエリーのイベントも実施した。次の日には、テレビショッピングで「ジュエリーデイプレミアム」を放送することもあり、放送前に実際に販売するジュエリーを見てもらう機会を提供した。

やはりジュエリーは高額商品のため、当社のお客さまは事前に見て購入を検討したいだろう。このようなお客さまのことを考えたイベントを実施することで、熱量の高いお客さまの増加につながっている。

イベントだけではなく、今年6月には、新たなプログラムガイド「Next Q」を発行した。当社を支持してくれる熱量の高いお客さまは、当社から発信する情報を楽しみに待ってくれている。番組を計画的に見ている人が多い。そのため、新たなプログラムガイドでは、1カ月分の放送予定が分かる番組表を掲載した。

商品の見せ方も変更した。主にファッションに対して、さまざまなブランドのファッションを横断し、カテゴリーとブランドを超えたミックスコーディネートを提案し、お客さまに新たな楽しみを提供した。

──他社だと紙の発行部数を減らしたりしているが、新たなプログラムガイドでは前回よりページ数が多い。このことについてどう考えているか。

プログラムガイドはウェブでも見られるし、紙でも見ることができる。50~70代のお客さまが果たしてウェブで情報を確認できるかというと少し疑問視するところもある。LINEの返信をするくらいしかスマホを活用していない人もいるだろう。

タブレットを使いこなして、内容を読む人ばかりではないと思っている。お客さまの視点から見ると、やはり紙で上質な内容を届けることが重要だと感じている。

メタバースの手応えは?


──メタバースにも積極的に進出している。手応えはどうだったか。

手応えはある。現在の当社のお客さまが多くメタバース空間に訪れたかというと、そうではない。

だが、既存のお客さまを大事にしていくことはもちろんだが、会社として新しいことにチャレンジしていかなくてはいけない。当社を知らない新しいお客さまと触れ合って、存在を知ってもらわないといけない。会社の永続的な成長のためにも、新しい取り組みは必須だ。

──メタバースは10、20代がよく利用すると思うが、貴社としてもその年代に適した商品を開発していくのか。

現時点では特段若い人向けの商品は開発せず、どの年代の人にも支持される商品を開発していく。今の20代の人もすぐ30、40代になる。そのとき、商品は40代向けかもしれないが、今の20代に寄り添っていかないと購入される商品を開発できないと思っている。

メタバースもそうだが、商品軸ではないところで、当社と出会っていただく機会を提供していきたい。私個人としては、サステナブルを強く提案していきたい。50~70代のお客さまは社会にとって良い行動をしたいと思っているが、そこにショッピングの楽しさ、新たな商品に出会えた発見のワクワクを知ってもらい、でもこの商品はサステナブルになんらかの形で寄与するということを目指していきたい。

大上段に構えたサステナブルではなく、ショッピングの楽しさを感じてもらいながら、その行動が環境に良いことを知ってもらい、サステナブルを感じてもらいたい。

──今後の展望は。

あくまで基本に忠実にいきたい。まず一つ目は新商品を販売し続けること、二つ目がブランドの認知を拡大すること、三つ目がパーソナライゼーション(個別化)に注力していく。

この三つの柱はぶらさず、2024~2025年は既存のお客さまには再度購入していただき、新規顧客の獲得にも力を注いでいく。新規顧客との出会いは、オフラインを活用して、接点創出を図っていく。

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