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2024.08.15

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【通販トップインタビュー 】千趣会 梶原健司社長 「デジタルとカタログの両軸を最適化」

梶原健司氏


千趣会が「ベルメゾン」をはじめとする通販事業の立て直しに力を注いでいる。2023年12月期の連結売上高は前期比16.4%減の492億2600万円だった。通信販売事業の売上高は、同18.0%減の431億4200万円になった。減収要因について、梶原健司社長は「デジタルシフトを進めたが、カタログ売り上げの減少分を補いきれなかった」と話す。千趣会の前期の振り返りと今期の状況、今後の展望などについて梶原社長に聞いた。



──前期も減収だったが振り返ってもらいたい。

2022年はシステムリプレイスに伴う混乱があり、2022年12月期は大きく売り上げを落とすことになってしまった。2023年12月期はコロナの影響が落ち着きつつあり、会社としても「どう戦っていくか」がポイントだった。

「ベルメゾン」のカタログに対するお客さまのレスポンスは徐々に低下している。この積年の課題を踏まえ、デジタルシフトの加速を図った。

2022年4月に設立した「Senshukai Make Co―(センシュカイメイクコー)」がデジタルシフトの推進を担った。「Senshukai Make Co‐」は千趣会と独立系コンサルティングファームのコーポレイトディレクションとの共同出資で立ち上げた合弁会社。

専門的な知見を持つ複数の外部企業にも参画してもらい、データ基盤とデジタルを活用したECでの戦い方を学びながら実践していった。

前期はカタログの発行回数も見直した。その分コストを大きく軽減し、収益性は改善したが、売り上げをECで補い切れなかった。正直に言うと思い通りに進まなかった1年だった。

──今期の第1四半期も前年同期と比べて減収になっている。まだシステムリプレイスの影響が消えないのか。

2022年の混乱を乗り越え、2023年12月期はお客さまからの”信頼”を取り戻すことに注力した。

しかし、デジタルシフトを進める一方で、カタログの発行部数を減らした結果、本当にカタログを求めている人の手元に届かず、購入につながらないこともあった。今一度、どのような人に届けるべきかを分析し、2023年下期からはカタログの配布の最適化も進めている。

──信頼の取り戻し方は。

それはやはり商品力と商品提案力が関係してくる。2023年4月にはカスタマーエンゲージメント本部を設置し、コンタクトセンターを含め、お客さまとの接点強化に力を入れている。お客さまを理解し、気持ちに寄り添った提案を行い、ロイヤルユーザーになっていただけるようつなげていきたい。

──先ほどECで戦える手法を学んでいると言っていたが、ECはレッドオーシャンだと感じている。どう捉えているか。

もちろん簡単に物事が進むとは考えていない。しかし一方で、コロナを経て、多くの企業がECに進出し、大手プラットフォーマーも売り上げを伸ばし続けている。消費者の中で「ECは合理的で便利な市場」として認知が拡大している。

前期を振り返ると、お客さまの中には、「ベルメゾン」への帰属意識を持つ人が以前よりも少なくなっている印象を受ける。昔からの利用者は愛着を持ってくれているが、一方でライト層や新規ユーザーは会員というものに対して特別な意味合いを感じていない可能性がある。

初めてお買い物する人限定の送料無料施策などによって一度は商品を購入いただけても、2回目以降のご注文にはなかなかつながらず、ここの販促効率が悪化している。

もう一度、「千趣会で」「ベルメゾンで」商品を購入していただくことを目指し、デジタルとカタログの両軸でお客さまとの接点のあり方を”チューニング”している状況だ。

──前期は商品数を絞ったと記憶している。良品を厳選したイメージか。

お客さまから支持を集めている商品に絞り、自信のある商品を提案して、購入につなげようと考えた。

ただ、カタログに関しては商品数を絞り込んでも提案力を磨き込めば戦えるが、ECはそうではない。ECでは、魅力ある売り場を作るためには品ぞろえの奥行きと幅が大事な要素であり、一定数の商品数は必要になる。

オリジナル商品を多くそろえる「ベルメゾン」だからこそ、テーマ性を持った売り場やコンテンツを作ることができる。生活の「負」を解消したり、暮らしに彩りを与えるようなテーマを作ることができる。例えばだが、「子育てで悩んでいる人に向けた特集」や、「睡眠で悩んでいる人に向けた特集」などだ。大手プラットフォーマーとは異なる、「ベルメゾンに来たら悩みが解決する、間違いない」と感じていただける売り場を目指していく。

子育て領域を拡大


──コロナが5類に移行した後、多くの通販・EC企業は、オフライン展開に注力したりして、ネット以外での方法で売り上げ拡大を目指している。千趣会としてはどう戦っていくのか。

まずは通販の立て直しが最優先だが、千趣会として収益が上げられる通販以外の第2、第3の柱の構築が必要だと思っている。

今期は子育て領域を強化していく。千趣会グループは保育事業や学童事業も運営しており、保育園向けのカタログも発行している。全国の自治体や産婦人科医院と連携しており、出産のあった家族へ「ベルメゾン」のカタログを渡す施策も行っている。出産する方は20~30代が中心のため、この接点をカタログではなく、ECで訴求していくことも考えている。

自治体と連携して子育て支援を展開できている企業は多くない。千趣会の企業理念に立ち返り、「社会貢献」を果たすことで事業成長を実現させていく。個人としても、少子化や国力が下がることに危機感を感じており、千趣会が切り込んでいきたい。物販ではなく、企業と企業の間をつなぐ役割も果たしていきたい。




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