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2024.08.17

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【通販トップインタビュー 】セシール 野島亮司社長 「成長の鍵は『お客さまの立場』になること」

野島亮司氏


カタログ通販事業を手がけるセシール(本社東京都)の2024年3月期の売上高は200億円(本紙推定)となった。2024年4月に就任した野島亮司社長は、セシール独自の良さを生かしつつ、新たな挑戦もしていく方針を示した。野島社長が大切にする「お客さまの立場」に基づいた取り組みについて聞いた。


──社長に就任してから現在までの感触は。

カタログ通販市場は厳しい状況にあるが、セシールがたくさんの方に長く愛されているという実感がある。無理に全てをウェブに変えるのではなく、カタログや電話といったアナログな手法は強みとして生かしていきたい。セシールが積み重ねてきた独自の良さを生かしつつ、新たな挑戦もしていきたい。

──2021年3月にニフティによる株式取得でノジマグループに入ったことで、どのような取り組みをしているか。

社員一人ひとりが「経営者」としての視点を持てるように、ノジマの野島廣司社長がビジネスにおける考え方や会社の方針を記した「Nojima Way(ノジマウェイ)」を実践している。この中で特に大切にしているのは、「お客さまの立場」になること。お客さまの「ために」と思うと、どうしても「売りたい」という気持ちが強くなってしまう。「お客さまの立場」になることで、お客さまにとって本当に役に立つ、良いものを提供できる。

セシールの強みは、顧客とのコミュニケーションにある。2024年1月にコールセンターを内製化し、別業務を担当する一部の本社スタッフも対応する仕組みとした。生の声を聞くことが、「お客さまの立場」になることにつながる。

インターネット・サービスプロバイダーのニフティも連携することで、クラウドやネットワークといったシステム面のクオリティーを高めることができた。スピーディーな対応や、顧客のニーズをデータとして活用することができている。
 
──「お客さまの立場」になることで、どのような影響があるか。

例えば、機能性を重視し、高品質なコットンを使ったTシャツを販売したが、値段が高くなってしまい、支持にはつながらなかったことがある。「お客さまのために」を考えていたが、こだわりを追求するほど、「売りたい」という思いが強くなりすぎてしまった事例として反省している。

「お客さまの立場」を反映した事例としては、昨今の物価高や猛暑の状況に応じて、エアコンだけでなくサーキュレーターも併用する提案をしている。ノジマグループとして、家電も加えられるようになったことで、提案の幅が広がった。

「お客さまの立場」になるためには、商品の良さが大前提となる。セシールが培ってきた開発力とノジマグループのリソースをかけあわせることで、顧客に寄り添い、喜んでもらえるような商品を出していく。

ものを売る社会的責任


──セシールの新たな動きについて教えてほしい。

2024年6月に、香川で物流や品質管理に携わってきたプロパー(正社員)の女性が役員となった。プロパーから役員が出たのは初めてだ。

2024年7月に、アパレル製品のリサイクルを促進する取り組みを開始した。不要となったアパレル製品を回収し、工業用のタオルにリサイクルする仕組みだ。この取り組みに協力してくれた顧客にタオルをプレゼントする。このタオルは裁断してもほつれないようになっていて、ぞうきんやふきんとして幅広い用途に使えるようになっている。この取り組み自体は利益に直結するものではないが、「売りっぱなし」ではなく、ものを大切にするための社会的責任として進めていくつもりだ。

近いうちに、セシールの原点であるストッキングのリユースも開始する。返品などの理由で使うことなく捨ててしまっていたものを活用するつもりだ。さらに若者の就職活動を応援する企画として、ストッキングの選び方や着用の方法など、意外と知られていない基本的な情報も合わせて提供する予定だ。

中長期的には、ノジマのネットワークを活用したイベントの協力や、新規顧客を獲得するプロモーション施策も強化していきたいと思う。




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