家具やインテリアのEC専業企業であるタンスのゲン(本社福岡県、橋爪裕和社長)は、2024年7月期の売上高が前期比約25.4%増の330億円だった。暮らしの快適さをテーマにした商品開発を強みに、前期は約1000アイテムの新商品を投入した。今年4月には、法人の課題解決を目的にBtoB向けのビジネスソリューション部を新設し、法人領域の強化に乗り出す。
1000商品を展開
──前期の業績について。
2024年7月期の売上高は前期比25.4%増の330億円となった。前期は商品開発が成長の鍵となった。
当期は新商品ベースで約1000アイテムをローンチした。商品開発に限らず、顧客対応も重点施策として取り組んだことが予想以上の成果につながったと考える。
1日1アイテム以上の新商品を発売するペースで展開し、同時に情報発信も強化してきた。早さだけでなく、お客さまの課題解決や欲しい商品などのニーズを汲み取り、新陳代謝を促しつつ顧客に飽きられないように努めてきた。
当社の強みは商品開発にある。この「当社らしさ」をしっかりと体現したことが大きいだろう。
単に良い商品を出す施策だけをやってきたわけではない。開発時には、既存のカテゴリーを改めて細分化し、顧客や社会が抱える課題を解決することを意識した。
注力してこなかったカテゴリーを強化したり、既存商品のマーチャンダイジングを組み直したりするなど、商品開発を再び深化させてきたことで好機も得られた。
──早い開発スピードを支える組織の特徴は。
今後の成長戦略も見据えながら試行している。
商品開発においては、工藤直也副社長を中心に、ボトムアップ型組織へと改革を図り、開発からローンチまで最短でできるようになりつつある。「世の中をより良くしたい」という思いで社員が企画しており、本当に駄目なアイテム以外は、ほぼチャレンジできるようにしている。
年間80本のリリース
──前期は商品情報の発信が多かった印象だ。
良い意味で広報の常識を崩そうという熱量を持ち、社会的に意義の高い商品情報を中心に年間100本のリリース配信に取り組んだ。
結果、前期は約80本程度の発信数だったが、おそらく業界的には類を見ない量だと思う。
この情報発信も業績につながった要因の一つだが、それ以外にも副産物がついてきた。特に全国の主要テレビ局などマスメディアが当社の商品を取り上げるケースが増えてきたことだ。
その一つが、暑さ対策グッズとして取り上げられたリュック用冷感パットだ。この商品は地球温暖化や省電力をテーマに開発した商品だが、テレビに取り上げられてから爆発的に注文数が伸びた。テレビの影響力はいまだに健在だと大変勉強になった。
法人向け強化へ
──今期の計画は。
2025年7月期は引き続きお客さまにより良い暮らしを提案する商品の開発を基軸として、売上高は10%増の成長で進めていく予定だ。
計画では、毎年10%ずつの成長で進めていくつもりだったが、前期の業績が予想以上に良かったため、ここで気を引き締めて、再びお客さまのニーズを掘り下げて、攻めつつも調整していきながら対応していく。
今年4月に法人向けの部署としてビジネスソリューション部を新設した。当社は、個人消費者向けが本業ではあるが、BtoBは数年前から開拓を進めていた。
当社には150のサプライヤーが存在する。このサプライヤー網を生かす形で、柔軟性や豊富な選択肢などの強みを訴求していく。
まずは、ビジネスホテルなどを中心に開拓している。各ホテルの課題をヒヤリングしつつ、個人向けで培ったノウハウやリソースをクライアントの課題解決に生かしたいと考えている。
ただ、BtoBは、成長に時間がかかるビジネス領域でもある。見込み客を含めた数を増やし、当社の強みであるプロダクトを軸に業容を広げていく。