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2024.08.29

【 電解水素水の医療活用】東京ネフロクリニック 「電解水透析で感染症抑制のデータ、学会で発表」

右田敏郎氏


腎・泌尿器科疾患専門のクリニックである医療法人財団真永会東京ネフロクリニック(右田敏郎理事長・院長)では2023年、人工透析を行う方法を最新式の電解水透析に切り替えた。右田院長によると、人工透析では従来、透析中に発生する活性酸素のために、倦怠感が生じたり、老化が進行してしまったりするという課題があったという。透析水を電解水素水に切り替えることによって、これらの問題が解決され、透析患者の寿命の延長が期待できるとしている。「われわれが今夏に学会で発表したデータでは、電解水透析を行った場合、従来の透析に比べて、感染症を発症しづらいということも分かった。早急に論文化して報告したいと考えている」と話している。右田院長に、電解水透析のメリットについて聞いた。



透析治療に「革命」を感じる


─電解水透析を導入したきっかけを知りたい。

透析療法というのはこの20年ぐらい大きな進歩はなかった。そんな中、透析に関する学会に参加した際に、偶然、日本トリムの電解水透析に関するランチョンセミナーを聴講した。そのメカニズムと効果に驚いたことが、電解水透析を導入するきっかけとなった。透析治療の将来を担う革命だと感じた。

私が院長を務める「東京ネフロクリニック」は、腎臓や泌尿器に関わる病気を専門的に治療するクリニックだ。人工透析をメインの診療として行っており、現在、50人以上の患者が透析治療を受けている。

私自身は、臨床医として東京女子医科大学と九州大学で、腎臓外科医、泌尿器科医として技術を積んできた。そして、研究者としては、東京大学医科学研究所で「がん」をテーマに今も研究を続けている。

透析治療を行うと、血液に活性酸素が大量に発生する。過剰な活性酸素は、体に有害であり、特に血管に障害を与える。透析患者は倦怠感やそう痒(よう)感として自覚する。血圧も不安定になり、高血圧や低血圧になる。活性酸素は老化が進む一番の原因である。

透析療法が腎不全に臨床応用されてから50年近い歴史があり、技術は少しずつ進歩してきたが、活性酸素を除去する有効な方法は今までなかった。

日本トリムの電解水透析の技術は、従来の透析療法とは異なり、血液から毒素を除くだけでなく、活性酸素も除去できる画期的な透析療法である。

通常の透析では超純水であるRO水を透析水として使用する。一方、電解水透析では、電解RO水を透析水として使用する。その原理は水の電気分解を医療に応用したものだ。

水を電気分解すると酸素と水素が発生するが、水素を多量に含む水を「電解水素水」と呼ぶ。この「電解水素水」をRO(逆浸透膜)処理して作られたものが電解RO水である。

電解水透析では電解RO水を透析水に使用する。そのため、一定の水素分子が溶存している透析液が患者の血液に注入される。

水素分子には、抗酸化作用がある。電解水素水に含まれる水素が、血液中の活性酸素のヒドロキシラジカルと反応し、酸化ストレスや炎症反応を抑える。水素分子は自然界にある物質なので人体への影響はない。電解水透析が臨床応用されてからすでに15年経つが、今までに有害事象の報告はない。

当初は、事業譲受した別の透析クリニックに導入することを検討していたが、機器のサイズや設置場所の問題などから、駒込の本院に、約1年前に導入した。

透析後に買い物や孫と遊ぶ


 ─電解水透析を導入した効果は。
 
導入した直後は特に何も変化を感じなかった。しかし、しばらくすると透析患者の表情が明るくなっていくのを感じた。

13年間透析治療を行っている69歳の男性の真下晃男さんは、電解水透析に変える以前は、治療を受けた日は疲れて帰って眠ってしまうというのが当たり前になってしまっていた。

1年前に電解水透析に切り替えたのだが、今では、透析治療が終わった後に買い物をして帰ったり、孫や猫と遊んで過ごしたりすることもできるようになったそうだ。


▲電解水透析の多人数透析システム

「電解水透析に変えてもらったおかげで長生きしちゃう」と話しているほどだ。

「倦怠感」は患者が主観的に感じるものなので、電解水透析の効果を客観的に評価する必要がある。

このほど、私が学会で発表したのは、電解水透析による血中の白血球・好中球の数の改善だ。電解水透析によって、感染症を抑えられるのではないかと考えている。

従来の透析では、血中の白血球と好中球の数値がやや高い患者が多かった。先ほどの真下さんのケースでは、週に3回透析治療を受けている。皮膚に針を刺すだけでなく、血液を体外に出して浄化するため、さまざまな菌やウイルスに接する機会が多くなる。そうすると、慢性的に弱い感染症にかかった状態になり、白血球の数が増加する。

以前の透析をしていた頃のデータと比較すると電解水透析に変更後は、白血球の数値が改善していることが分かった。また、電解水透析に変更後は、発熱の頻度も減少していた。

こうしたことから、電解水透析は白血球の機能を改善させる効果もあることが予想され、「感染症」の抑制が期待できることが新たに分かった。透析患者の死因で最も多いのは、「感染症」なので、これを抑える可能性があることは極めて意義が大きい。

─電解水透析の導入は患者にとってどうか。

患者のメリットはとても大きいだろう。倦怠感や疲労感が軽減できるだけで、生きる楽しみが増えることにつながると考えられる。

感染症の抑制につながれば、透析患者の平均寿命の長期化にもつながる。

当院でも、電解水透析のことを知って、「電解水透析を受けたい」と言って来院した患者が、これまで2人いた。今後、電解水透析の知名度はますます高まっていくに違いない。いずれは、メジャーな治療法になっていくと考えている。

現在、国内には透析患者の数がとても多い。東京は特に多いのではないか。「疲れたくない」という患者のニーズは高い。導入したいという病院も増えるのではないか。






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