コンタクトセンター業界最大手のトランスコスモスは、アフターコロナでも成長を続けている。2024年4-6月期(第1四半期)の連結売上高は、前年同期比2.4%増の910億8300万円だった。増収の要因について、「スポット(一時的)案件の受注件数は減少しているが、当社としてはレギュラー(年間)の受注件数の獲得に力を入れており、このことが奏功している」と話す。田渕和彦常務執行役員に今期の振り返りと課題、今後の展望などについて聞いた。
──今期の第1四半期を振り返ってほしい。業績を見ると好調だと認識している。
増収だったが”好調”とまではいかないと思っている。一昨年に受注できていたコロナ関連案件や、突発的な案件がなくなり、現在はレギュラー案件の獲得に動いている。1件当たりの規模はそこまで大きくないが、確実に積み重ねていっている。
”幅”を広げて提案
──現在、多くのコンタクトセンター企業はコロナ関連の案件が終了し厳しい状況を迎えていると思う。コロナ関連ではないレギュラー案件を堅実に獲得できている要因はなにか。
それは”幅”を広げて提案しているからだ。この場合の”幅”はコンタクトセンターだけではないことを意味している。当社はデジタルチャネルを持っており、ウェブ制作や広告運用から、ECサイトの運営、物流までを支援している。全体を見て、各種のAI活用も含めたDXを組み合わせての効率化・最適化を図っている。
あとはクライアント企業と共同で課題解決に向き合っていることも関係している。ただ単に業務委託のアウトソーサーとして生産性を上げることを考えるのではなく、クライアント企業の事業を一緒に実行しながら課題解決に注力している。顧客接点だけを考えるのではなく、パートナー企業として協働していくことを考えている。
──他にも会社として力を入れていくべき点は。
単純なデジタル化ではなく、一人一人の顧客の声に向き合って、その声をどこまで反映できるかを検証している。この追求が今後のビジネスの発展につながっていくと考えている。
あとは顧客との接点を電話だけではなく、コミュニケーションチャネルとして多方面に捉えている。さらにデジタルはデジタルで磨き上げなくてはいけないが、「人」が担う領域も磨き上げなくてはいけない。労働人口が減少していくことは分かっているため、「デジタル」と「人」のバランスを取りながら、業務の効率化を追求していかなければならない。
──「デジタル」と「人」のバランスは難しいと感じる。
例えば「使い方や購入方法が分からない」というときは、「FAQ」や「チャットボット」などで解決を促し、一方で「何かを相談したいとき」は人に対応するのがいいのではないかと感じている。
──そうなると「人」が対応すべき点は、さらに精度を上げていく必要があると思う。
まさしくその通りだと思う。特にコンタクトセンター企業だけではないが、世の中として、”コミュニケーションの在り方”は考えていくべきだろう。
コミュニケーション能力に関しても、AI機能を搭載したオペレーターをサポートするようなツールは台頭してくるだろう。そのツールをうまく使いこなして対話に活用できるかがポイントになってくる。
教育方法も今までの手法では難しいと感じている。うまくAIによるトレーニングを活用しながら、業務を教えるトレーナー自体の能力を引き上げなくてはならない。オペレーター一人一人のプロファイルを確認する作業に加えて、トレーナー自身のスキル向上も一層重要になってくる。
クライアント企業やエンドユーザーから求められていることを理解して、それをオペレーターに実践させていく力というものが、今後のサービスの差別化につながるとみている。
──海外でもコンタクトセンター事業を展開している。海外と日本のコンタクトセンター企業の違いはなにか。
日本と海外では、顧客対応の考え方やサポートの部分が大きく異なっていると感じている。国柄によってはスピーディーに解決することを望む企業があったり、日本のように”おもてなし”を重視する企業があったりする。
日本も今後どちらにシフトしていくかを考えていかなければならないと思うが、恐らくこの両軸をミックスさせながら、CXを構築していくことが必要になってくるはずだ。