「生成AI」をコンタクトセンター業務に導入すると、主に管理者とオペレーターの支援につなげることができる。
管理者では資料作成の時間短縮や効率化につながる。オペレーターの効率化では、音声認識をテキスト化し、その後、「生成AI」が要約することで、レポーティング業務の時間短縮に寄与する。
「あくまで試験的な段階だが、解約理由の把握についても従来とは異なるアプローチを実行できると思っている。新たなアプローチ方法を実践することで、表面的ではない、顧客の潜在的な解約理由が分かるようになる。今までだと『値段が高いから止める』という解約理由でも、もっと掘り下げれば、それが『効果は感じるが値段が高いから止める』『高いと栄養成分が豊富に入っているが、その成分のどれかに反応して肌荒れが起きたから止める』など、もっと質が高いレポーティングができるようになる」(平野会長兼社長)と話す。
行動規範を生成AIに学習
ベルウェール渋谷では、「生成AI」において、”ベルウェール渋谷らしさ”を表現できないか模索している。”ベルウェール渋谷流”の行動規範を作ろうとしている。「ユーザーからこの質問をされたときは、こう返すことで感動体験につながりやすくなるということをデータ化できないか考えている。感情解析のツールを活用するのか、それともある程度、人間がしっかり定義化したものを生成AIに学習させるか、いろいろと検証していかなくてはいけない」(同)と話す。
”ワクワク感”は減少
多くの企業が「生成AI」を導入すると、サービスの差分が少なくなると推測できる。ユーザーが質問してきた問題に対しての回答案も一定レベルの水準を保てるだろう。
そうなると「人」が差別化の鍵になる。
「プロンプト(AIに送る指示文や命令そのもののフォーマット)の書き方でも違いが出てくる。ここはその人の感覚にもよるが、良いプロンプトを書く人とそうでない人もいる。きちんとしたプロンプトを書くような教育やそもそものオペレーターのマインド設定などをしっかり教育しないと、顧客との会話だけでなく、『生成AI』を活用したツールの使用結果も違ってくる」(同)と話す。
また「生成AI」頼り一辺倒になると、全てデジタルで会話が完結し、人と会話することが減少するため、人との会話で得られる”ワクワク感”が薄れていくとみている。
「人間の持ってる”豊かさ”や”温かさ”はやはり、まだ人間でないと提供できない。いずれそこが回帰されて求められてくる時代もくるのではないかと思っている。あと、最近では、ユーザーの情報を見る量も昔と比較して、5倍、10倍と増加していると思う。スマホを見る機会が増え、結果としてデータに疲れている人もいるのではないか。そういうときに人と話すと心が安らぐということもあると思う。個人的な願望だが、疲れたときに電話をすると疲れが取れるということを一つの体験型サービスとして提供していくのも面白いなと感じている」(同)と展望を話す。
座談会を実施
オペレーターの教育方法では、より深い従業員のロイヤリティーを形成していきたい考えだ。クライアント企業の商品担当者やマーケティング担当者を呼んで一緒に座談会などを開催したりする。
今まではスーパーバイザーがヒアリングした内容をオペレーターに伝えることをしていたが、実際に商品を開発した人を呼んで、商品開発の背景や開発の狙いなどを丁寧に話してもらうことで、オペレーターの仕事のモチベーション向上にも寄与している。
「スーパーバイザーが言葉で伝えるよりもクライアント企業の背景などを知ることで、最終的に電話での”温かみ”のある対応につながると思っている」(同)と話す。