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2024.11.25

<インタビュー>TOA 取締役執行役員 田中克昌氏 × 薮内崇氏「海外進出を積極化、独自技術で世界へ」

(※紙面では社名が「日本コルマー」となっていますが、正しくは「TOA」です)国内化粧品OEM最大手TOA(トーア、旧社名日本コルマー、本社大阪府、神崎義英社長)は、海外への進出を積極化させている。9月には、米・ニューヨークで開催された国際的な化粧品展示会に出展。同社の研究成果がアワードを受賞したという。TOAの取締役執行役員の田中克昌氏と、研究開発本部統括マネージャーの藪内崇氏に、TOAの海外進出や、ニーズが高い化粧品について、話を聞いた。

海外の展示会で受賞も

ーー海外展開を加速させていると聞きました。
田中:海外で開催されている展示会に積極的に出展しています。
9月には、世界で有数の化粧品の展示会である、「MakeUp in New York(メーキャップインニューヨーク)2024」に出展しました。5月には、「メーキャップインパリ」にも出展しました。

「TOA」の社名を、世界に広めていくための取り組みです。

「メーキャップインニューヨーク」では初出展でしたが、展示内容を評価するアワードも受賞することができました。それによって、出展ブースには人が殺到しました。欧米の企業に当社の存在を知ってもらうきっかけになったと考えています。

ーーどのような研究がアワードを受賞したのですか。
田中:「粉体状の剤型のものを肌に塗布すると乳液になる」という開発品が、受賞しました。

基本となる処方は国内で実績はありましたが、そこから更に発展させて、乳化物を内包したというところに、新しい技術があります。

「剤型が変化する」という点も魅力的に映ったようです。ブースを訪れた人たちからは、驚きの声が多数聞かれました。

日本の化粧品市場は、メカニズムなどの理屈が好きです。エビデンスが重視される傾向があります。

一方、欧米では、目で見て明らかに形状が変わるものが好まれる傾向があると思っています。

アワードを受賞したことを受け、早速商談が進んでいるケースもあります。米国は日本と同様、最近は生産工場を持たない、新興ブランドが台頭しています。そのため、商品の差別化が重要となってきています。

来年には、米国や中国で、立て続けに展示会に出展することを計画中です。展示する新たな化粧品の処方も開発中です。世界で通用する高付加価値な化粧品の開発を行っていきます。

「敏感肌」の「ピーリング」


ーー国内の化粧品市場でニーズが高まっている、成分や処方について教えて下さい。

籔内:国内の化粧品市場で特にニーズが高いのが、「ビタミンC」です。

一般的に化粧品市場では、「ビタミンC誘導体」を採用するケースが多いです。ただ、「ビタミンC誘導体」は即効性に欠けます。

TOAでは、「生ビタミンC」に注力しています。「生ビタミンC」高配合で、他社と差別化できる処方を提案しています。

「ピーリング」もニーズがあります。コロナでマスク生活が定着しましたが、マスクをすると毛穴が汚れで詰まりやすくなるといわれています。その結果、毛穴が目立ちやすくなったという人が少なくありません。ニキビにもつながりやすくなります。毛穴汚れのピーリングに特化した化粧品が、市場では求められています。

これまで、「ピーリング」を訴求する化粧品に配合されていたのは、「α―ヒドロキシ酸」の一種の「グリコール酸」などでした。ただ、「グリコール酸」は、角質層をはがれやすくするという機能がある一方、刺激の強い成分でした。

TOAでは、グリコール酸よりも刺激がマイルドな「マンデル酸」に着目しました。まだ日本では広く知られていないですが、安全性が高い成分です。

化粧品市場では、敏感肌対応の化粧品のニーズが高まっています。敏感肌の人でも、「ピーリング」訴求の化粧品が使えるような化粧品を開発しています。

水に溶けやすい特許技術

ーーTOAでは、優れた特許技術も保有しています。

籔内:ニーズが高い分野で特許を取得しているのが、「アゼライン酸」の処方についてです。

「アゼライン酸」は、ニキビを抑える機能があるため、引き合いが増えている成分です。

通常「アゼライン酸」は、水にも油にも溶けづらく、成分が濃い状態で肌に接触すると、強い刺激を与えてしまいます。

当社では、「アゼライン酸」を溶解する技術があり、さまざまな剤型の化粧品に配合することが可能です。

「エラグ酸」の溶解技術についても、特許を取得しています。「エラグ酸」は、植物由来の美白成分として知られています。安全性も高いことが確認されています。

「エラグ酸」も水や油に溶けづらいという性質を持っていますが、安全性にも配慮した溶解技術を開発し、特許を取得しました。

「エラグ酸」の溶解技術については、日本化粧品技術者会(SCCJ)の学術大会でも、発表しました。ニーズが高い、化粧品の分野で、付加価値の高い処方を提案していきます。

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