健康食品や化粧品を中心とした通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける、売れるネット広告社は10月23日、東証グロース市場に上場した。同社の加藤公一レオ社長は、「上場したことによって得た資金を基に、事業領域を、不動産や金融といった他の産業分野の広告運用支援へと拡大したい。海外と、ネット以外の媒体へも積極的に展開したい」と話している。加藤公一レオ社長に、上場後の事業計画などについて聞いた。
100億越えの通販を支援
ー─上場の目的は。
上場の目的は三つある。
目的の一つは、売れるネット広告社を100年続く会社にしたいと考えているということだ。上場することによって、会社を「公」のものにすることができると考えた。上場することで、たくさんの人に知ってもらえれば、若い社員に責任感がわくし、人も集まりやすい。企業として長く続けられると考えた。
二つ目は、他の産業や海外への積極展開を実現するためだ。上場すれば、積極的な経営と、柔軟な資金の調達が可能になる。当社が蓄積した、通販・EC・D2Cのネット広告運用のノウハウは、不動産や金融といった別の産業でも通用すると考えている。
海外については、具体的には控えるが、複数の国へ進出したいと考えている。
三つ目は、別の媒体へ横展開するためだ。当社はこれまで、社名の通り、ネット広告の運用に特化して事業を展開してきた。ネット広告の分野においては、「最強の売れるノウハウ」として、2600項目以上のノウハウを蓄積してきた。
一方で、通販・D2Cで売り上げが100億円を超える企業になるには、ネット広告だけでは難しいのが現状だ。テレビCMや新聞広告といった、別の媒体も駆使した広告展開を行っていく必要がある。
こうした媒体は、電通、博報堂、ADKの3社が市場を独占している。この市場で、当社もシェアを取っていきたい。
一定の解約率
ーー上場発表時の資料によると、クラウドサービス「売れるD2Cつくーる」の契約をしている企業の解約率が約50%あった。理由を知りたい。
2022年7月期の「売れるD2Cつくーる」の解約率は確かにその通りだが、現在は30%にまで下がっている。
当社のサービスは、ランディングページ(LP)経由で商品購入へ導くシステムとなっている。ECカートシステムとは発想が異なり、別々のネット広告媒体から流入する顧客に、別々のLPを表示してABテストを行い、レスポンスの高いLPを厳選していくという手法だ。
当然、一定程度大規模に広告投資できる企業でなければ、使いこなせないツールだ。契約したはいいものの、ツールのメリットを生かせずに、解約に至ってしまう企業は少なくない。
今後も、30%前後の解約率は発生していくものと考えている。新規営業を続けていくことが必須になる。そのためにも、他の産業への進出は積極的に考えていきたい。
特定企業への依存を解消
ーー2022年7月期は売上高が落ち込んだ。理由は。2022年7月期中においては、「売上平均化戦略」を掲げた。それまで当社では、「マナラ化粧品」のランクアップや、「豊潤サジー」のフィネスといった一部の企業による売り上げが、多くの部分を占めていた。一時は、特定の4社の売り上げが全体の6割を占めていた時期もあった。
上場を目指すのにおいて、特定の企業への依存度が高いと、審査が通らない可能性が高かった。
特定の企業に依存しない経営体制を構築するべく、各企業の売り上げを平均化する戦略を取った。結果的に、2022年7月期は売り上げが落ち込んだが、2023年7月期は過去最高売り上げとなった。
当社はこれまで、赤字もほとんどなく、借金もしない堅実な経営を心掛けてきた。ツールの提供やコンサルにおいても、1年を通して売り上げを予測できる「ストック型」のビジネスを構築している。
今後も、安定経営をベースにしつつ、他の産業や海外、他の媒体への積極的な事業展開を行っていきたい。