日本弁護士連合会(日弁連)はこのほど、「悪質商法被害を防止するための特定商取引に関する法律の改正の検討を早急に開始することを求める意見書」を取りまとめた。意見書には、通販にクーリング・オフの民事規定を設ける要望を盛り込んだ。訪問や電話による勧誘を受けることを拒否する「事前拒否者」への勧誘禁止を盛り込むことも提言している。連鎖販売取引に対しては登録制などの開業規制を導入するべきだとも言及している。10月23日には、経済産業大臣と消費者庁長官に意見書を提出したという。
日弁連が提出した意見書には、(1)訪問販売・電話勧誘販売について、「事前拒否者に対する勧誘を禁止すること」「登録制を導入すること」「訪問販売については、一定の金額を超えるような取引について、直ちに事前拒否者に対する勧誘禁止措置を講ずること」(2)通販について、「広告画面及び特定申込画面における人を誤認させる表示について具体例を挙げて禁止すること」「広告画面における人を誤認させる表示により誤認して申込みをした消費者に対し、その意思表示の取消権を付与すること」「事業者に対し、広告画面及び最終確認画面の保存・提供義務を負わせること」(3)インターネット通販について、「行政規制、クーリング・オフ及び取消権等の民事規定を設けるなど、必要な措置を講じること」(4)連鎖販売取引について、「いわゆるモノなしマルチなどの詐欺的な連鎖販売取引を排除するため、登録・確認等の事前審査を経なければ連鎖販売業を営んではならないものとする開業規制を設けること」「いわゆる後出しマルチ(後出し型連鎖販売取引)の手法も連鎖販売取引の規制対象に含まれる旨の規定を設けること」─の四つが盛り込まれている。
意見書では、全国の消費生活センターに寄せられる相談において、通販の定期購入に関する消費者被害の相談件数が高止まりしていることを問題視。広告画面や最終確認画面の保存・提供義務の導入を求めることにしたという。
訪販規制の強化を求める理由としては、悪質リフォーム訪販の取引被害の増加を挙げている。日弁連によると、悪質リフォームの訪問販売の取引被害が増加している背景には、SNSを利用して実行犯を募集する「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の存在もあるという。実際に「トクリュウ」による被害も確認されているという。これらのグループによる被害は、事後の被害回復が難しいとし、登録制の導入など被害を予防できる施策を求めている。
日弁連では、ドイツやオーストラリア、ニュージーランドなどでも、訪販お断りステッカーに効力を認めていることに言及。G7参加国のうち、事前に登録された番号への電話勧誘を禁止する「Do-Not-Call(ドゥー・ノット・コール)」制度」や、同意のない電話勧誘を禁止するオプト・イン規制のいずれも採用していない国は日本だけだとも指摘している。
連鎖販売については、「モノなしマルチ」の被害が増加していることを問題視。被害実態が把握しづらいことや、被害金額が高額化していることなどの問題点を挙げ、その解決策として、登録・確認などを経なければ連鎖販売業を行えなくする開業規制の導入を提言している。
物品販売の契約を提携した後に、マルチ組織に誘い込む「後出しマルチ」も依然として看過できないとし、規制対象であることを明文化することも求めている。