化粧品・健康食品通販大手のDHC(本社東京都、宮崎緑社長)は、アパレルの通販においても、機能性に優れた独自の製品づくり・マーケティングで、存在感を放っている。顧客の中心は40~60代で、健康食品を購入した人が、アパレルをクロス購入しているそうだ。「素材から独自で開発し、まねできない唯一無二の商品開発を行っている」と話す、アパレル事業ユニット管掌の須賀智博上席執行役員に話を聞いた。
売りたい商品を決める
──DHCのアパレルの通販について聞きたい。
DHCのアパレルは、通常のファッションブランドとはものづくりの観点が異なる。
通販では、「肌がきれいに見える素材や色合い」を訴求すると、お客さまの心に刺さる。逆に、流行を訴求してもあまり刺さらない。そこが、アパレルブランドとの大きな違いだ。
一般のアパレルブランドは、一定の在庫を用意して店舗に配架し、売り切っていく。DHCの通販では、カタログで目立たせたい商品を最初に決め、販売が予想される在庫数を発注するというスタイルだ。
我々が訴求したい商品をあらかじめ決めることで、在庫をコントロールしている。同時に、DHCのお客さまにどんな商品のニーズがあるのかを見極めるのも、我々の力の見せ所だ。
EC化率は70%
──DHCのアパレル通販のEC化率はどうか。
DHCのアパレル通販というと、カタログ通販のイメージがあるかもしれないが、実は70%のお客さまが、ECで購入している。
お客さまのボリューム層は40~60代だ。アパレル商品を通販で購入するお客さまの約90%が、化粧品やサプリメントを入口として、クロスセルで購入してくれている。お客さまに送付するカタログを見てECサイトにアクセスする人もいる。メールマガジンからECに流入するケースもある。
──DHCのアパレル商品のモノづくりのこだわりを聞きたい。
DHCの商品の多くは、機能性を重要視し、通販でしか使えないようなキーワードを商品名やキャッチコピーを採用している。
例えば、「うるわし美肌」「保湿シリーズ」「浮き輪腹防止」「垂れ尻防止」といったワードだ。
アパレル商品はすべて、原料からオリジナルで製造しているという点も特徴だ。海外の独自ルートを構築し、当社しか使えない独自原料も多数ある。高い技術で独自に加工も行っている。唯一無二の商品だ。
「コピーしようとしてもまねできない」「少なくとも3年は使える」といったことをコンセプトに、商品開発を行っている。
ヒット商品で言えば、「アルガンオイルシリーズ」「骨盤シリーズ」「リンパ開放ショーツ」「ラクペチ」などがある。足につける「ボディバランスリング」(健康雑貨)は、これまで、約12年間で累計51万個以上を販売した。
──DHCのカタログでの商品の見せ方についても知りたい。
お客さまに興味を持って買っていただくためには、オリジナル商品としてのエビデンスをしっかりと見せることが重要だ。
さらに、お客さまのお悩み解決につながる商品であることをしっかり訴求することも重要だ。そのために、購入した人のコメントをページに掲載している。
セールに頼らない売り方も徹底している。当社の通販は会員制のビジネスであるため、「見切り品」を作ることはマイナス要因だ。
毎月クリアランス製品を掲載するページを設けてはいるが、大きなクリアランスセールは実施しないことを心掛けている。
見せ方の施策として、カタログとスマホのサイトは見せ方を大きく変えている。カタログは、自宅でゆったり、じっくりと読む媒体。一方スマホは、目に入る一瞬の情報で多くを伝えなければならない媒体であるため、スマホで使うワードは厳選している。
──今後のアパレルEC業界はどうなると予想するか。
値上げラッシュと円安の影響で、消費が低迷している。今欲しいものしか買わない状況が継続するだろう。
流行は、コレクションが発信するスタイルから、SNSで個人が発信して作られるスタイルに変化している。トレンドが予測しづらく、サプライチェーンの安定性が揺らぐ。
個性が求められる時代に、小売店と同レベルのウェブ接客が求められる。