健康食品通販大手の山田養蜂場(本社岡山県、山田英生社長)は、ハチミツにこだわらない新たな製品開発と、製品の安全性に関する情報発信を強化している。紅麹問題で、健康食品業界全体に対する信頼度が下がる中で、顧客の信頼の回復に努めつつ、業績の回復に向けた施策を打とうとしている。取締役執行役員で、通販営業部の永井哲生営業部長に、紅麹問題による影響と、2025年の戦略について聞いた。
製造工程見直す契機
――2024年は小林製薬の紅麹問題があった。どうとらえているか。
機能性表示食品や健康食品について、一般消費者の信頼度が大きく下がってしまったと考えている。健康食品メーカーとしては今後、製品の安全性に関する発信をしっかり行っていく必要があるだろう。
世間では、紅麹問題が、いつのまにか、健康食品やサプリメント業界全体の問題として認識されてしまっていた。
ただ、業界内には、製造環境を見直す機会となった。機能性表示食品では、製造工程のGMPの義務化や、医師の診断付きの健康被害の義務化など、制度変更にもつながった。
機能性表示食品の制度変更のみで、紅麹問題の原因を直接解決するものではないが、企業が消費者に安全な商品を届けるために必要だったと考えている。
――紅麹問題を受けて、山田養蜂場が行った取り組みについて聞きたい。
当社では、紅麹問題が起きる以前から研究活動や徹底した品質管理体制などのモノづくりの根幹にかかわる情報発信を行ってきた。
紅麹問題が起こった後も、安全な製品製造工程に関する発信に注力している。
当社のハチミツ製品は、300項目を超える検査をクリアしたものだけを使用している。
徹底した品質管理で、国が設定する以上の厳しい基準で農薬や抗生物質をチェックし、お客さまに安全な商品をお届けしている。こうした品質管理については、当社のユーチューブチャンネルや会員向けの情報誌などで、紹介している。
今後も、製品の品質や安全管理については、強く発信していきたい。
新製品開発で切り開く
――2025年の健康食品の通販市場の変化に対して、どのような施策を講じる予定か。
健康食品に対する消費者の信頼度が低下している中で、当社として2025年は、いかに安心して利用してもらうか、続けてもらうメリットがあるかを、発信していく。
紅麹問題があってから、広告による新規顧客の獲得効率は悪化したが、1~2カ月で回復した。ただ、良くなったわけではない。
もともと、紅麹問題以前から、広告の獲得効率は悪化していた。それは、消費者が、通販の広告を、見飽きていることが要因の一つだと考えている。
獲得効率が悪いのは、新鮮味のある商品を出せていないからだとも考えている。
当社では、新しい商品を開発して、今後の起爆剤にしていく計画だ。形状を変えたローヤルゼリーの製品や、特長的な成分で機能性を訴求できる製品などを開発中だ。
2024年12月には、グループ会社である「免疫研究センター」から、NMNなどミツバチ産品にこだわらない成分を使った新しい製品を発売した。今後も、山田養蜂場グループの力を結集し、新製品開発に力を注いでいく。
当社では、カウンセリングにも力を入れている。お電話をいただいたお客さまに対して、サプリメントの飲み合わせや食品との食べ合わせについて、お客さまのパートナーとして、提案していきたい。
2025年は、機能性表示食品の制度が変わり、「PRISMA2020」に準拠した届け出が必須になる。その対策も重要になるだろう。
届け出の申請の方法が変わり、パッケージの表示を見直す必要がある。今までと同じ機能性の訴求ができなくなる可能性があり、新製品の発売が今よりも時間がかかる可能性もある。広告表示を見直す必要もある。
現時点では、各社の届け出に大きな動きはなく、当社も様子を見ながら対応していく方針だ。