ショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を運営するジュピターショップチャンネル(本社東京都、小川吉宏社長)は2024年11月時点で前年を上回る売り上げを達成できているという。小川社長は今期(2025年3月期)を振り返り、「このままのペースで行けば、通期業績において、2期連続の増収増益も視野に入っている」と話す。常に顧客視点を徹底し、より魅力的な番組を放送していることが結果に出ている。小川社長に2024年の取り組みと2025年の重点施策などについて聞いた。
顧客視点で番組を強化
――今期のここまでを振り返ってほしい。
売り上げは好調に推移している。なぜ好調なのか。私が2022年4月に社長に就任してから、短期的な売り上げでなく、常にお客さま視点を徹底し、番組強化、商品強化、マーケティング、オペレーション強化に取り組むことを社内で徹底してきた。結果として、お客さまが番組、ECサイトを楽しんで見てもらうことにつながり、ありがたいことに売り上げ増という結果につながっていると思う。
――番組放送もお客さま視点を徹底しているとのことだが、詳細を伺いたい。
何よりもお客さまに楽しんでもらえる番組を作ることに注力した。今期のここまでを振り返っても、さまざまな番組を放送したが、その中でも、他社とコラボレーション(コラボ)した番組は好評だった。
2024年4月に放送した吉本興業とのコラボ番組や、同7月に放送したBS朝日とのコラボ番組は多くの人に見てもらうことができた。
BS朝日とコラボした番組では、「あなたの知らない京都旅 特別編 刀剣の秘密~日本の刀はなぜ人を惹きつけるのか?~」という番組名で日本刀をテーマにした番組を企画した。
7月21日の日曜日の午後9~10時の枠で放送し、BS朝日の9時~9時30分の時間においては、俳優で歌手の中村雅俊さんが、奈良にある日本を代表する刀匠の河内國平氏の工房を訪問し、日本刀の魅力について紹介した。
番組の後半では、河内氏が手がけた日本刀を「ショップチャンネル」で販売した。ただ商品を紹介するのではなく、魅力的でおもしろいと思ってもらえる番組作りを意識した。
――番組放送において、他に注力したことは。
24時間にわたって、キャスト、ゲストと視聴者が双方向でコミュニケーションを取れる番組作りや、お客さまにスタジオに来てもらう番組、それとは別で当社にお客さまを招待してキャスト、ゲストと直接触れあえる体験イベント、ラジオ通販への参入などに取り組んだ。
お客さまとのタッチポイントを広げ、さまざまな取り組みを実施することで、多くのお客さまに「『ショップチャンネル』はおもしろいことをやっている」と思ってもらえることにつながったと推測している。
テレビCMで新規を獲得
――マーケティングの強化についても伺いたい。今期どのように新規顧客を獲得してきたのか。
顧客基盤の拡大は今期注力していることの一つだ。やはり新たなお客さまに「ショップチャンネル」に訪れてもらわないといけない。
そのため、番組としては「ウェルカム!ショップチャンネルウィーク」を放送した。「ウェルカム!ショップチャンネルウィーク」は初めて「ショップチャンネル」で商品を購入する人向けに、人気の商品を紹介する番組。
対象期間中に、初めて「ショップチャンネル」で買い物をするお客さま限定で1000円(税込)割引を実施した。さらに抽選で人気商品を詰め合わせたセットを100人にプレゼントした。
地上波のテレビCMも放送した。2024年9月13~26日には、九州と東海地域でテレビCMを放送した。2025年2月には、関東地域でもテレビCMを放送する。どちらも「全員送料無料(当社負担)キャンペーンを実施する」という内容のテレビCMを放送し、新規顧客の獲得を目指す。
――2024年はラジオ通販にも参入した。参入の狙いと手応えはどうだったか。
2024年10月、「TBSラジオ」の人気番組「爆笑問題の日曜サンデー」にて、新たにラジオ通販を開始した。テレビだけではなく、今回のラジオのようにさまざまな面で顧客と接点を持てれば、より「ショップチャンネル」を好きになってもらえる。
効率化を追い求めるとラジオ通販に参入することは懐疑的かもしれないが、私の考えで、あまり効率化を追い求めないことにしている。効率化を極端に追い求めると、番組制作にしても”つまらなく”なってしまう。
実際にラジオ通販を聞いていても、おもしろかった。初回は当社のキャストと爆笑問題が同じ大学の同窓生だったこともあり、トークが弾んで、番組は非常に盛り上がった。その後は当社のキャストが順番に出演している。
――2025年の展望について伺いたい。
当社は先日、4カ年の中期経営計画で「テレビ通販事業」から「テレビ・デジタル・リアルを連携させた新たなショッピングエンターテインメント事業」への変革・進化を図ると発表した。
2025年はこの中期経営計画の方針を磨き上げていく。併せてお客さまと双方向でコミュニケーションを取れる体制も整える。
――今後、デジタル面で強化していくことは。
ECの強化においては、ショップチャンネルのウェブサイト上で社員、ゲストやブランド担当者がファッションコーディネートを提案する「SHOP CHANNEL PEOPLE(ショップチャンネルピープル)」を強化する。
これまで、フォロー機能や、短尺動画の投稿などを実施してきたが、今後も、よりお客さまの購入を後押しできるように努めていく。
――「ショップチャンネル」の店舗名を出さずに、より若い世代に訴求しているソーシャルコマース「コレイヨ」はどう進化させていくのか。
「コレイヨ」は今後、リニューアルする。新たにホーム雑貨を取り扱うブランドと、美容系の商品を取り扱うブランドのオウンドメディアを別々に開設する。ホーム雑貨を取り扱うブランドに「コレイヨ」は吸収し、今後はサービス名も「コレイヨ」から別の名称に変更する。
これまで約4年間、「コレイヨ」を運営してきたため、成功した施策とうまくいかなかった施策が分かっている。新たなサービスでは、これまでの知見を最大限生かす。現時点では、豊富なコンテンツを用意し、お客さまが求める情報を掲載し、メディア訪問者、購入につなげていきたい。ウェブマーケティングも実施するが、それよりも「このサイトに来ておもしろい、心地いい」と思ってもらえるメディアを目指していく。