テレビ通販大手のQVCジャパン(本社千葉県、伊藤淳史CEO)の2024年12月期の売上高は、前年と比較して横ばいで推移しているという。秋になっても暑さが長引いたことや暖冬が影響しているという。ただ伊藤CEOは「その中でも好調なカテゴリーもある」と話す。QVCジャパンの今期の取り組みを伊藤CEOに聞いた。
――2024年を振り返ってほしい。
売り上げについては、想定内で推移している。具体的な売り上げや受注件数などについては申し上げられないが、概ね前年と同じ規模で推移している状況だ。
その中で好調な分野と苦戦した分野がある。好調な分野は主に①ヘルス・健康②家電③キッチン用品④食品――だ。この四つの分野の売り上げは前年同期を超えている。
新規顧客数を見ても、2024年9-11月は好調だった。この時期は前年と比較しても、増加している。オフラインでのポップアップの展開や、新規のお客さまが購入しやすい商品を用意したことが奏功した。
新規のお客さまが購入しやすい商品は、美容家のIKKO(イッコー)が監修した化粧品「サイムダン」や、岩谷産業の「IWATANIカセットコンロ」などだ。
「IWATANIカセットコンロ」は使い勝手が良く、さらにブランド名が有名だ。そしてその商品を新聞広告やデジタルマーケティングを駆使して、購入促進を図った。
2024年は新聞広告への出稿とBS日テレや地方のケーブル局にも番組供給し、当社の認知拡大に取り組んだ。新聞広告は読売新聞や地方紙などに出稿し、商品の広告を掲載した。
基本的には広告に「今度◯日にこの商品のテレビ通販番組を放送する」旨を掲載し、番組視聴を促した。24年は新たに通常放送しているチャンネル以外で、2分間のインフォマーシャルを積極的に放送し、販売拡大に貢献した。
特質性がプラスに働く
――ヘルス・健康の分野が好調だったとのことだが、要因を伺いたい。健康食品通販企業の中では、紅麹の問題で減収に陥っている企業もいる。そのような市況感の中で好調なのはなぜか。
主に高麗人参のサプリメント「高濃縮紅参サプリ J's Kami高麗」の販売が好調だった。確かに当初は紅麹の問題で、サプリメント系の販売は低調だったが、次第に回復していった。そこはやはりテレビショッピングという番組内できちんとお客さまに正しい情報を伝えられることが奏功している。
QVCジャパンのQはQuality(品質)のQでもあるため、エビデンスがある商品であること、安全性を確保している商品であることを正確に伝え、安心して購入してもらうことを目指した。
あとは誰が販売しているかも大きい。一例を上げると、内外美容の専門家で料理研究家でもあるJ・ノリツグ氏が番組内で確かな商品であることを伝えるシーンを放送したのだが、その番組は好評だった。
きちんとメーカーとも擦り合わせ、J・ノリツグ氏が自信をもって提案しているから間違いないだろうという共感性も相まって、購入につながった。
マーケティングでも、休眠顧客に対してメールを送ったりしている。ヘルス・健康分野で商品を購入する総数は変わらないが、新規顧客の割合、既存顧客の割合、休眠顧客の割合は変化している。総数は変わらないが、顧客の割合は変化しており、結果として、平均購入金額が増加し、ヘルス・健康分野の成長に寄与している。
――今後のデジタルを活用した顧客の獲得方法について伺いたい。
一つはオンラインの商品をどれだけ拡充していけるか、そして二つ目はその商品をどのように見せていけるかだ。
当社はやはりテレビというプラットフォームを保有しているため、テレビは最大限活用していく。ある商品では、テレビで3色しか販売していないが、ECだと5色を販売することもある。EC限定の商品を用意したりして、うまく購入につなげていきたい。
当社のこれまでを分析すると、やはりECだけの売り上げよりも、テレビとECを連動させた方がより売り上げは高くなる。今後もテレビとECを連動して売り上げを伸ばしていく。
――2025年の展望はどうか。
2025年も基本を徹底していく。当社をまだ知らない人に存在を知ってもらいたい。
2024年はオフラインイベントを多く実施したが、25年も関東圏だけでなく、地方でもオ開催して、新規のお客さまに存在を知ってもらいたいと考えている。