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2024.12.30

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家電

ビックカメラ EC事業部長 畑中英治執行役員が語る「ドライバーに負担をかけない『送料無料』を」

執行役員EC事業部長兼ビックカメラ楽天代表 畑中英治氏


ビックカメラの2024年8月期のEC売上高は、前期比6.6%減の1190億円だった。2022年8月期以降、3期連続の減収となった。そんな中同社では、店舗とECのシームレスなサービス提供や、ポイントサービスの体系化などを目指しているという。近年は家電以外のジャンルを含めた、SKU数の拡充にも注力している。同社のECは、「家電EC」から「総合EC」へと変わりつつあるようだ。2020年10月に廃止した「無条件の送料無料」を、2024年9月に再開させた。自社の物流網を活用することにより、ドライバーの負担を減らしつつも、東京23区内などで、当日配送のサービスを展開している。EC事業部長の畑中英治氏に話を聞いた。



――「送料無料」を再開したということだが。

当社のECでは2020年10月、「無条件の送料無料」を廃止し、「2000円以上で送料無料」に変更した。これを2024年9月に再度改め、「無条件の送料無料」に戻した。

家電であれば、2000円を下回る商品はそれほど多くないが、日用品だとそうはいかない。当社が総合ECを目指す中、2000円以上にするために、余計な買い物を顧客にさせてしまうのは、最適な対応ではないと考えた。9月以降は、ECサイトのファーストビューで、「送料無料」を打ち出すようにした。

当社の物流サービス「ビックロジサービス」では、東京23区を中心に、当日配送にも対応している。配送量が少ないと、ルートをどれだけ最適化しても、効率良く配送することは難しい。一方で配送量が増えれば、トラックの台数を増やすことができ、各ドライバーが最適なルートで配送できるようになる。長時間労働ではなく、短時間で多くの荷物を運べるようになると考えている。

4年ぶりに、送料無料に戻した形だが、まだまだ送料無料の認知は低い。ドライバーに負担をかけない送料無料ができるということについて、まずは1年をかけて、認知を拡大させていきたい。

――2025年9月期に向けた、ECの方針について教えてほしい。
 
2024年9月に組織変更があり、私がEC事業部の部長となった。体制は変わったものの、「顧客軸」という考え方は変わっていない。家電EC市場は、コロナ禍の反動で苦しんでいる。そんな中、いかに実店舗と差別化を図り、選ばれるECにしていくかが重要だ。

実店舗とECの垣根を考えないということも重要な要素の一つだ。顧客が商品を欲しいと思った際に、どこで買うかの違いだけだ。実店舗とECを縦割りにせず、相互で利便性を高めていくことが、実店舗とECを展開する企業には必要だと考えている。


ECならではの利便性も


――実店舗とECの傾向の違いについて教えてほしい。

一番の違いは、リアルな接客ができるかどうかだ。冷蔵庫や洗濯機といった、大型の白物家電は、自宅のスペースに収まるか、ドアや窓、階段、通路の幅などを考慮し、運べるかどうかという問題もある。そういった顧客の不安を、相談によって解消できるのが、実店舗の強みだ。

一方で実店舗は、売り場面積が限られている。実店舗には展示しきれない商品を販売できる点が、ECの魅力の一つだと思っている。

基本的に実店舗では、各カテゴリーで、汎用性の高い人気商品を置いている。しかし、顧客の中には、特徴のある商品を求める人も多い。特に「映画が好き」「料理が好き」など、その分野に詳しい人であればあるほど、求める商品もニッチなものになっていくだろう。

当社では、商品カテゴリーごとに担当者を置いていて、その担当者が商品を探している。家電ジャンルはもちろんのこと、調理器具やペット用品など、家電以外のジャンルも同様だ。

そうやって各分野の担当者がこだわりの商品を探してきてくれるからこそ、当社のECは〝専門店の集合体〟になりつつある。どの分野のコアなファンが見ても、満足してもらえる品ぞろえを、今後も目指していきたいと考えている。


「家電」から「総合」へ


――EC担当に着任したが、意識していることは。

「家族のようなECサイト」を意識している。便利で使いやすく、どのECよりも身近な存在でありたいと考えている。

暇な時間にスマホで、欲しい商品を検索して見る人は多いだろう。現在は、大手ECモールのサイトやアプリであったり、SNSであったりすることがほとんどだと思う。その「暇なときに商品を探す場所」をビックカメラにしていくことが当社の目指すところだ。

家電を探すために当社のサイトを見る人はいても、家電以外の商品を探すために見る人はまだまだ少ない。今後は、そういった層を取り込んでいきたい。

当社のサイトは9月に、「インターネット通販サイト」から、「インターネット総合通販サイト」へと名称を変更した。

老若男女、「ビックカメラのECで買ったら安い。早い」と思ってもらえるようにしていきたい。

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