化粧品の企画開発と製造・販売を行うコスメプロ(本社奈良県、藤井健社長)は1986年創業、自社工場を所有し豊かな清流として知られる吉野川を水源に化粧品を製造している。OEM可能な製品は多岐に渡るが、ユニークな技術を取り入れた独自製品の開発に力を注いでいる。近年注力しているのがアンチエイジングとして脚光を浴びている幹細胞化粧品で、「ヒト脂肪由来間葉系幹細胞培養上清液」という特殊原料を採用している。藤井社長にアンチエイジング化粧品の取り組みについて聞いた。
──御社の沿革について教えてください。当社は1986年に設立しました。創業者はOEMの会社で研究開発に携わってきたキャリアを持ち、独立を機に故郷の奈良県吉野町に本社を構えました。化粧品の企画開発から製造・販売まで行っています。この本社は世界遺産登録の紀伊山地・吉野熊野国立公園に接する自然豊かな場所で、併設する自社工場は清流・吉野川を水源に化粧品を製造しています。
──自社工場の概要については。工場は建屋が二つあります。現存する本社工場は2003年に竣工し、2022年には新工場を同じ敷地内に建設しました。受注量が増加したことに伴う投資です。日本化粧品工業会が定めるGMPに準拠しています。
工場内には研究開発室もあり、処方開発、技術探索、品質管理を行っています。工場の主な設備は、500リットル・60リットルの乳化槽やパルセーター、ワーナーミキサーなどのバルク製造機器、各種充填機があり化粧品全般を製造するための設備を整えています。また、らせん状に2剤を充填する「らせん充填」やシリンジ容器への充填など特殊な充填にも対応できるのが特徴です。
──化粧品のOEM会社は国内だけでも多くあります。競合他社に負けない素材や技術は何ですか。当社最大の自信作は「炭酸ガスパック」と「スクラブ」です。当社の歴史的には約30年前に「スクラブ」が大ヒットしました。元々はマッサージソルトという塩に洗浄料を入れたもので、塩で揉みながら洗えるという商品です。徐々にブームは収まってしまったが、今でも底堅く注文をいただいています。
スクラブ剤は今となっては他社でも出していますが、当社も改良を重ねています。トルコアイスのように伸びるスクラブはその一例で、見た目のインパクトは大きいです。他にも、シュガーベースやジェルベースのスクラブ剤も製造しています。
「炭酸ガスパック」は炭酸泉の創傷治癒効果に着目して、美容向けに開発した商品です。2剤式で顆粒とジェルを混ぜて皮膚に塗布し20分ほど待つと固まってきます。これを剥がすと肌が少し赤みを帯びているのですが、これは毛細血管が拡張したことで起きる現象です。
組織内の炭酸ガス量が増えると、酸素供給量が増えて細胞の活性化が期待できます。塗布する箇所は、毛穴やくすみ、たるみなど気になる部分に塗布すれば良いです。化粧のノリが良くなったという声もいただいています。圧倒的に効果を感じていただきやすい商材なのでエステサロンや通販会社からの引き合いが多いのです。
──ロングセラー商品と並行して現在、力を入れているアンチエイジング商品は何ですか。アンチエイジングで言えば、いわゆる「ヒト幹細胞」でしょう。当社の工場の近隣に精密人間ドックとともに、再生医療を行っているグランソール奈良に治療用の細胞を提供している株式会社グランソール免疫研究所があります。こことタッグを組んで注力しているのが「ヒト脂肪由来間葉系幹細胞培養上清液」を使った化粧品です。
▲世界遺産登録の紀伊山地・吉野熊野国立公園に接する自社工場の外観──グランソール免疫研究所が独自開発した原料を使用しているのですか? 独自の化粧品原料です。幹細胞の原料はさまざまありますが、同研究所はPMDA規格に適合した培養液を使用、またウィルスクリアランス等を幹細胞ドナーおよび上清液の製造工程でクリアし、さらに最終製品においても無菌試験を行い、医療グレードの幹細胞培養上清液を提供しています。
また、この研究所は幹細胞がきちんと生育する幹細胞培養上清液を提供します。独自試験により市場に出回る幹細胞培養上清液と称した化粧品原料では幹細胞が育たないことが確認されたことから、細胞に有効な「本物の」化粧品原料としての幹細胞培養上清液を世に出し、使ってもらいたいとの思いで、原料を市場に送り込んでいます。
──幹細胞培養上清液の特性は。化粧品原料としては高価であり、特性を活かした処方開発が重要となります。
培養すると幹細胞からは成長因子など何百種類もの生理活性物質が培養液中に放出されます。その培養液をろ過し、細胞や不純物を取り除いた上澄みの部分が上清液です。その幹細胞培養上清液には今話題のエクソソームや成長因子、サイトカイン、酵素などの有効成分が多数含まれていることから、クリニックの自費診療や化粧品の原料など医療・美容の分野でさまざまな効果が期待されています。
──その原料を使用した美容液を開発していますが、供給先としてどのような販売チャネルを想定していますか。現在はエステや通販会社へのOEMがメインですが、今後は訪問販売、ネットワークビジネスといった販路も積極的に開拓したいと考えています。原料供給元のグランソール免疫研究所の博士研究員が、販売会社が主催するセミナーなどにも講師として出向いてくれることになっています。供給先のビジネスをサポートすることにも注力したいです。