「クリクラ」ブランドで宅配水事業を展開するナックでは、今夏の猛暑の影響により、顧客の水の消費量が拡大している。小型浄水型サーバー「putio(プティオ)」の新規利用者も好調に推移しているという。「物価上昇などの影響から浄水型サーバーのニーズはあるが、当社は主力はあくまで宅配水。専任の配送員による対面提案の付加価値を伝えていく」と話す、クリクラビジネスカンパニー代表の川上裕也氏に、市場の状況を聞いた。
夏の水の消費量が増加
──2024年のクリクラ事業の振り返りを聞きたい。
私がクリクラビジネスカンパニーの代表になる前は、厳しい市場環境にあると思っていたが、売り上げ・利益ともに、ほぼ期初の計画通りに推移した。
2024年4-9月期(中間期)におけるクリクラの売上高は、前年同期比0.5%増の78億300万円だった。
今年の夏は、猛暑の影響で顧客1件当たりの水の消費量が増加した。
全体としての水の消費量は昨年と比較して微増した。
──浄水型サーバーの広告投資を強化したとあるが、進捗は。
物価の上昇を背景に、消費者の財布のひもが固くなり、宅配水よりも比較的安価に利用できる浄水型サーバーのニーズが高まるという流れはあると考えている。
当社は宅配水のブランド「クリクラ」とは別に、浄水型サーバーのブランド「feelfree(フィールフリー)」を展開している。その中でも、2023年に発売した小型の浄水型サーバー「putio」に、今期は広告を投下した。顧客件数の拡大などの一定の成果は出ている。
ただ、浄水型サーバーは決して主力ではない。25年の戦略としては、消費者のニーズに応える形で浄水型サーバーのプロモーションに力を入れていきたいと考えているが、大きな方針としては、「クリクラ」の宅配水のボトルとウォーターサーバーの展開に集中していきたい。
他社をけなさない
──国民生活センターが、宅配水の契約トラブルの増加を発表した。どう考えるか。
一部の宅配水メーカーや浄水型サーバーのメーカーが、むちゃな顧客の獲得を行っているようだ。まっとうな営業を行うわれわれと、悪質な事業者とは違うということを一般の消費者に知ってもらいたい。
当社では、直営部門でも加盟店でも、プロモーションで使用する文言や表現を厳しくチェックしている。
他社の中には、競合の宅配水事業者のことを悪く言って、自社のサービスへの乗り換えを提案するケースもかなりある。
当社は他社を批判する営業は決してしないように、現場に通達している。あくまで、「クリクラ」のサービスの優位性を訴えるように、現場の営業担当の教育を行っている。
──「PFAS」に関する報道が過熱している。政府も水質基準の引き上げの検討を発表した。どう見ているか。
報道を見て不安に感じる消費者が多いことは承知している。それに対して、「クリクラ」としては、「クリクラ」の水が安全であることをしっかりとアピールしていく必要があると考えている。
「クリクラ」では、定期的にPFAS(PFOS/PFOA)の検査を実施している。これまでの検査で、当社の水から、PFAS(PFOS/PFOA)が検出されたことは一度もない。
さまざまな報道がされているが、振り回されることはないことを説明したい。
改めて「クリクラ」のサービスのメリットとして伝えたいのが、防災の備蓄として使える点と、サーバーの定期メンテナンスを行っている点だ。
専門の配送員が配送し、ボトルの回収を行うという、対面のサービスとセットであるという点も、付加価値である。
愚直にいい人材を育てていくのも、われわれの仕事だ。