多くの水宅配実施企業が加盟する(一社)日本宅配水&サーバー協会(事務局東京都)では、会員社に向けて、コンプライアンスを重視した表示の仕方や販売方法を指導しているという。商業施設で増加している、水宅配の契約トラブルについては、「少なくとも2024年1年間のトラブルには、当協会の会員社に関連したものはほとんどなかった。当協会のロゴマークを見てもらえれば、安心して契約してもらえる」(小磯雄一郎会長)としている。小磯氏に、契約トラブルや「PFAS」の問題について、考えを聞いた。
「JDSA」マークは安全
──水宅配の契約トラブルが急増しているという国民生活センターの発表について、どう考えるか。
少なくとも2024年に消費生活センターに寄せられた相談の中に、当協会の会員社に関連したものはほとんどなかったと考えている。当協会では、会員社に対して、顧客から契約トラブルを訴える声が来ていないかについて聞くアンケート調査を定期的に実施している。会員社からは2024年に、そのような声が顧客から寄せられたといった回答が寄せられていない。
当協会の会員社が提供しているウォーターサーバーには、「JDSA適合マーク」がついている。「JDSA適合マーク」は、ウォーターサーバーの機構の安全性を示すマークであり、当協会の会員社であることを示すマークでもある。
「JDSA適合マーク」を付けているウォーターサーバーのメーカーであれば、安心して利用してほしい。そのことをもっと打ち出していきたい。
急増しているトラブルは、当協会に所属していない、一部の水宅配の会社に関連したものではないか。
──契約トラブルが増加している原因はなんだと考えるか。
消費者目線の提案ができていないことが原因ではないか。
商業施設での水宅配の提案は、メーカーの社員が直接現場に立って営業しているケースも多いが、販売代理店に委託しているケースも少なくない。
代理店に委託すると、営業の数字を優先してしまうケースもあり、結果的に消費者目線に立った提案ではなくなってしまうことも多い。
時代はさらに、消費者目線が求められるようになっている。旧態依然のやり方は許されなくなっている。当協会としては、契約トラブルを生んでいる会社と断固として戦いたい。
ウェブ上の広告表示についても、「月額の電気代が非常に安い」といった、不適切な表示をしているものも散見される。我々同業者からすると、どう考えても実現不可能な金額で表示している。
当協会では、ウォーターサーバーの月額の電気代の算定方法を統一し、会員社に提示している。電気代の算定方法は、当協会のホームページでも公開している。
これからもまだまだ電気代は上がっていくと見られ、表示内容は変わっていくかもしれない。ただ、会員社の電気代の表示が間違いないことは訴えたい。
10年後の安全性
──PFASに関する報道が過熱している。どう考えるか。
有害な物質が水道水から検出される事態は、とても危惧している。当協会の会員社のメーカー各社は、それぞれ提供している水を検査して、問題がないことを消費者に訴えている。
さまざまな報道があるが、私としても、PFASが体内に入ることによる影響がどうなるかは分からない。ただ、PFASを含む水を飲み続けた結果、5年後や10年後にどうなるかを考えるべきだ。より安全性が高い方法を、事業者として訴えるべきだ。
水宅配業界では、浄水型のウォーターサーバーのニーズが高まっている。仮に水道水にPFASが含まれていても、浄水器内の活性炭のフィルターでろ過は可能だ。ただ、フィルターにもキャパシティーがある。キャパシティーを超えて使用した場合、PFASを通さないとは言えない。
きちんと安全性を担保した製品提供を行ってほしい。
──2025年の水宅配市場はどう動くか。
PFASのこともあり、水道以外の水の需要は今後も増加していく。
水の提供の形も、宅配水や浄水、ペットボトルなど複数ある。災害が起きた時のことを考えれば、ペットボトルよりも宅配水の方が備蓄性は高いだろう。
消費者には、自分の使い方に合った、安全で安心できる方法を選んでほしい。