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2025.02.03

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化粧品

【インタビュー】ポーラ 小林琢磨新社長 「ブランド資産生かしデジタルとリアルの体験高める」

小林琢磨氏


化粧品サロン販売最大手のポーラでは1月1日、代表取締役社長に、小林琢磨氏が就任した。小林社長は、2018年にオルビスの社長に就任後、オルビスのリブランディングを行い、オルビスのカテゴリーを、「通販化粧品」から「人気美容雑誌のベストコスメに選ばれる美容ブランド」へとシフトさせた立役者だ。小林社長は、ポーラの舵取りについて、「ポーラ専属の販売員が何万人もいるのはとてつもない強み。ポーラのブランド資産を生かしながら、リアルの体験価値とデータ活用を加速する」と話している。




「接点」を焦点に

 
社長に就任してから、「ポーラもデジタル化するんでしょう」とよく言われる。私が、これまでディセンシアやオルビスの社長を務めてきたからなのだろう。「小林琢磨」といえば、「マーケティング」「EC」「D2C」と考えている人が多いようだ。

私は、ポーラのECを推進するために就任したわけではない。オルビスでも、独自の経営資産を作ったうえで、ブランドを強くする経営を行ってきた。

ポーラはここ数年、業績が低迷している。ポーラではこれまで、顧客のLTVの高め方が対面販売に偏っていた。そのため、コロナ禍の影響で、店舗や販売員が減少。結果として、ブランドからお客さまが離れてしまった。それが、業績低迷の要因の一つとなった。


そのような状況においても、ポーラのブランドの強さと、独自の価値の強さは変わらないと考えている。

かつての訪販であるトータルビューティー事業では、委託販売でポーラの製品だけを販売してくれる販売員(BD)が、全国に2万人以上もいる。何十年も続けてくれている人もたくさんいる。

これが、他の企業が絶対にまねできない資産価値だ。

オルビスで通販・ECを管掌してきて、私は、ECの限界を知っている。だから、特にそう思うのかもしれない。今後、EC市場ではAIの活用が進み、広告の運用や、クリエーティブの制作がどんどん効率化され、同質化されていくだろう。他社との差別化が図れなくなり、新規顧客の獲得コストは高止まりする。ECは、どんどん厳しくなっていく。
 
ただ、ポーラはその影響を受けない。それが大きな強みだと考えている。

私は、化粧品ブランドのプレゼンス(存在感)は、業績と連動すると考えている。業績が落ちれば、ブランドのプレゼンスも下がっていく。

しかし、ポーラにはそれが当てはまらない。業績が厳しい時でも、ブランドアセットが非常に強い。

それは、ポーラの資産である「サイエンス、アート、ラブ」の企業価値が支持され、浸透しているからだ。 ポーラの業績のリカバリーを行う際に、リブランディングは必要ないと考えている。むしろ、ブランドロイヤルティーについて、手を打ちたい。お客さまとポーラの接点に、改善の余地があると考えている。


パーソナライズを深化


ポーラは、サロンショップ・百貨店・ECの販売チャネルを横断したメンバーシッププログラム「ポーラ プレミアムパス」を23年4月に開始した。このプログラムの登録者数が、24年9月末時点で、100万人を超えた。

今後は、顧客データをマーケティングに活用しながら、LTVを伸ばしていく戦略を強化していきたいと考えている。

「プレミアムパス」のこれまでの活用事例としては、「ロイヤル顧客への特別ギフトの提供」や「新商品の発売前の先行体験」「ポーラならではのおもてなしを届ける旅行への招待」などがあった。


「プレミアムパス」のお客さま情報を活用することにより、ECで注文した商品をサロンショップで受け取れる「ショップ・デ・ピック」のサービスも開始した。

お客さまに、パーソナライズされた顧客体験を提供することにより、お客さまが継続的にポーラと接点を持ってくれる関係性を作っていく。

ポーラではこれまで、お客さまのロイヤルティーが、対面販売でのブランド体験を通して築かれてきた。

その結果、コロナでお客さまと会えなくなると、打つ手が限られてしまい、ロイヤルティーの低下を招いてしまった。

今後やっていくべきなのは、これまでポーラブランドと接点を持ってきたお客さまが、何を求めているのかを知ることだ。


販売チャネル拡大


顧客接点の拡大に向けた施策として、大都市圏にランドマークとなるサロンを新たにオープンしていく。新サロンモデル専用のサービスを導入し、パーソナルな美容体験を提供することによって、顧客とのエンゲージメントを強めていく。

サロン以外の接点も拡大する。「LOOK(ルック)」や「REBIRTH(リバース)」などの化粧品専門店への出店を、すでに開始している。化粧品専門店での、ポーラ製品の展開をさらに加速させ、2025年末までに出店数を、現在の9店舗から30店舗へと増やしていく。

現在、自社ECサイトのほか、アマゾン、ZOZOCOSME、アットコスメショッピングなどのECプラットフォームに出店しており、それぞれのチャネルの売り上げも拡大している。オンライン出店も加速していく。



グランドオーナーと密に


さらに、喫緊の課題として捉えているのが、トータルビューティー事業の売り上げを支えている、販売組織のトップであるグランドオーナーたちとのコミュニケーションだ。

コロナがきっかけで、DXなど市場変化への対応を優先せざるを得なくなった結果、本社とグランドオーナーたちとのコミュニケーションが希薄化してしまっているという現実がある。

グランドオーナーをはじめ、何十年もポーラの資産を作り続けてきてくれた販売現場とのコミュニケーションを強化したい。そうしたコミュニケーションのもと、顧客解像度をさらに高めるため、データを活用し、全社で顧客LTVを拡大させていきたい。

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