「DPF取引透明化法」は大手IT企業に取引先企業との契約条件の開示やトラブルへの対処状況の報告などを義務付けた法律のこと。大手IT企業を「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定することで、透明で公正な取り引きを促し、弱い立場の中小・零細事業者を守る狙いがある。
評価結果はデジタルプラットフォーム提供者から提出された報告書や、相談窓口に寄せられた情報、有識者やプラットフォーム利用事業者の意見を踏まえて発表した。
「無在庫転売」が横行
昨今、ECモールでは、「無在庫転売」「不正注文」が目立つようになってきている。実際にLINEヤフーは2024年、ガイドラインを改定し、「無在庫転売」に関するルールを厳格化した。新たに個人事業主が「ヤフーショッピング」において、商品を500点以上出品する際、「在庫証明書」の提出を求めるようにした。
評価結果では、LINEヤフーは「不正注文」において、窓口を設置し情報収集を行っていることを評価している。LINEヤフーは「不正注文」が発覚した場合、当該注文者を不正者と判断し、以後「ヤフーショッピング」で注文できないように制限措置を強いている。
「ヤフーショッピング」出店者が「無在庫転売」を行った場合、外部出店者にどのような不利益をもたらしたのか、それが法律に抵触するのかなど客観的に判断できる情報を把握できた場合に限り、事実確認を経て、当該出店者への指導を検討しているという。今後も、提供される情報やさまざまな不正行為の潮流などを勘案して、不正注文への対応を検討していく方針だ。
LINEヤフーは専門部門を設け、24時間365日、売り場のパトロールを実施しているという。顧客から提供された複数のルートから確認を行い、違反を発見次第適切な対応を行っている。既存の対策では対処しきれない場合には、安全対策部門において、規約・ガイドラインの変更やパトロール手法の変更、審査の導入などさまざまな対策の導入を検討していくという。
楽天グループ(楽天)が運営する「楽天市場」の「無在庫転売」においては、商品画像の無断使用などの著作権侵害行為を行っている人が一定数存在しており、同社の規約に抵触する行為として認識している。このような行為は日々、手法が変化するため、現状の規約では対応できないことも考えられる。そのため、「楽天市場」の公正性を担保するために、ユーザーの声や出店者の声に傾聴し、多くの対策を実行すると同時にガイドラインの改定も検討しているという。
アマゾンは2023年、全世界で700万点以上の模倣品を突き止め、顧客の被害や小売サプライチェーンでの再販を阻止した。アマゾンでの不正注文は、模倣品の販売や、欠陥品・商品説明と異なる商品の販売、レビューの不正操作などが挙げられる。対策のために大型投資や従業員の雇用を積極的に実施してきた。
模倣品の販売では、「Amazonブランド登録」によって正規品を顧客に届けることができる。さらに、ユーザーも商品の真贋を確認できる「Transparency(トランスペアレンシー)」、偽造品の疑いがある商品をアマゾンが自動的に検知して積極的に削除を行う「Project Zero(プロジェクトゼロ)」、商標登録の「IPアクセラレーター」などのプログラムやツールを開発している。今後も積極的に出店者に利用を促していくという。
経産省は各モールに、(1)引き続き不正行為の取り締まり状況と実績の報告(2)利用者からの取り締まり要請の分析と分析結果に則った取り組み(3)権利侵害告知を含む不正行為をめぐる紛争を解決するためのODR(オンライン紛争解決)・ADR(仲裁・調停・あっせんなどの民事上のトラブルを裁判で解決しない紛争解決方法)導入の検討状況─などを次年度の定期報告書に記載することを求めていく。