オイシックス・ラ・大地の食品宅配ブランド「大地を守る会」は2025年8月に創業50周年を迎える。22年10月には大地を守る会宅配事業本部長に、通販業界で実績を持つ中田善久氏が就任した。事業の再成長を見据えたさまざまな改革を進める。中田氏に取り組みについて聞いた。
──今年は節目の年になる。1975年に団体として活動を初めてから50年を迎える。創業から、日本の第一次産業を守り育て、人々の生命と健康を守り、持続可能な社会を創造するソーシャルビジネス(社会的企業)として、「自然環境と調和した、生命を大切にする社会」の実現を目指してきた。
お客さまと一緒に生産者を応援するというスタンスは創業時から変わらない。個人生産者が多く、安心・安全という国産野菜にこだわり続けてきた。
右肩下がりからコロナ禍では会員数が増加に転じたものの、再成長に向けて取り組んでいる状況だ。2025年3月期はようやく会員数が下げ止まり、売り上げも再浮上の兆しが見え始めてきた。
土台である安心・安全だけでは差別化が難しくなってきているが、大地を守る会の商品品質基準に対するこだわりは40~50代前後のお客さまに広まってきた。大地を守る会と聞くとシニアのイメージがあるが、二世代に渡って利用をしている人もいて、20代や30代と利用者は幅広い。
以前は、安心・安全を求める人が多かったが、これに加えて生活環境や体が変化しやすい年代であり、量より質を求める50代前後の世代の新規会員が増える傾向にある。
──2025年3月期はどのような取り組みを行っているのか。商品開発では、これまで安心・安全、生産者重視という施策が中心だったが、これに加えて商品のおいしさや作り方、こだわりの違いなど品質重視の施策に力を注いでいる。50年間、事業を継続できた理由を社内で話した時、品質にこだわった商品のおいしさが挙がる。作り方の価値をどのように伝えていくのかが重要になっている。
特に、今期堅調なのが「頒布会」だ。定期購入していただく果物などは品質の高い商品を安定的に届けている点が顧客単価のアップに着実につながっている。
50代前後のお客さまは品質に加えて簡便さも求める。こだわりの素材を使った「コロッケ」がヒットしたり、こだわりの「鍋焼きうどん」が人気を集めたり、高品質の総菜系に引き合いがある。冷凍技術も向上し、野菜で信頼を得たお客さまの利用も多くなっている。
──商品のこだわりを伝える工夫は。商品のこだわりについて、コピーや画像の見せ方の工夫をしている。日常的な使い方が新たな出会いになるような提供を目指し、カタログとの連動も図っている。頒布会を利用してもらうことで食材との新しい出会いが提供できている。
──昨今の物価高などの影響については。食品スーパーでの野菜の値上がりを受け、同じ価格帯であれば品質の良い物を求めたいという動機で入会した会員がいる。
仕入れコストが上がっているものの、世間との差が縮まっているような印象だ。その結果として解約率が収まっている。
──一都三県では自社便配送を行っている。全体の75%が自社便で、そのほかは宅配便で届けている。現在は宅配便が伸びているが、決まった配送員が届ける自社便は安心感につながり顧客との関係性が深まる良さがある。さらに、配送料も自社便のほうが割安で利用できることもメリットだ。週によって決まったチラシを配布して提案している。一方で、自社便エリアでも時間帯指定を希望して宅配便に切り替える人もいる。比較的対面率は高い印象だ。
ようやく下げ止まりを見せて再成長の兆しがあるので、50周年に向けてさまざまな施策を計画していきたい。