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2025.03.21

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【食品通販・食品宅配インタビュー】 <生鮮EC> 坂ノ途中 坂本洋二執行役員、「野菜のサブスクで農家支援も」

坂本洋二氏


野菜のECを展開する坂ノ途中(本社京都府、小野邦彦社長)では、2009年の創業以来、事業を拡大し続けている。現在は野菜のサブスクを中心に、幅広く食品ECを展開しており、加工品やコーヒーなども扱っている。環境負荷の小さい野菜を、独自の販路で販売することにより、新規就農者が農業に取り組みやすい仕組みを作っているようだ。同社のEC事業について、国内のBtoC事業の責任者を務める坂本洋二執行役員に話を聞いた。



 

──EC事業について教えてほしい。
 
当社では、化学合成農薬や化学肥料を使用しない、環境負荷が少ない農法で育てられた野菜を販売している。提携している生産者は約400件で、新規就農者が多い。

ECでは、農産物の他に、醤油や油、おやつなどの、加工品も販売しており、SKUは500以上になっている。

その中でも人気なのは、「お野菜セット」のサブスクだ。当社の売り上げの半分以上を占めている。

「お野菜セット」には、ベーシックな野菜を中心とした「きほんのお野菜セット」と、幅広い野菜を取り扱う「旬のお野菜セット」の2種類がある。

旬のセットでは、「おらんだ菜」「あやめ雪コカブ」「コウサイタイ」など、なじみの薄い野菜も多く取り扱っている。サブスクの会員には、お薦めの調理方法や料理を案内している。過去に当社が行ったアンケートでは、約8割の会員が「料理のレパートリーが広がった」と回答してくれていた。

──どういった顧客が多いのか。

会員には、40~60代の女性が多い。最近は若い世代も増えてきている。当社のサービスだけで野菜を賄っているというよりも、定期で野菜を購入し、不足分を地元のスーパーなどで補うケースが多いようだ。

日々スーパーだけで購入していると、どうしても定番の野菜、定番のレシピになりがちだ。そこに定期便でアクセントを加えられる点が、好評なようだ。


農家にもメリット


──提携している農家について教えてほしい。

提携している農家に対しては、作農計画などの支援を行っている。

一般的な野菜の流通だと、時期によって価格が変わることが多い。当社では、年間を通して一定の価格で購入しているので、売り上げの計画が立てやすい。

一般流通だと、売り場に並べる必要があるため、収穫した野菜の大きさや形状などの、規格が厳しいのが現状だ。だが、消費者からすると、「そこまで気にしていない」というケースがほとんどだ。当社では、一般の流通では取り扱いが難しい規格の野菜も、品質に問題がなければ販売している。廃棄する野菜も減り、農家にも環境にも良い影響があると考えている。

現在、新規で農業を始めようとする人が増えている。しかし、流通などに課題を抱える人が少なくないようだ。

農業を始めるといっても、いきなり大規模で始められるわけではない。そのため、スケールメリットでは勝負できない。一般的な流通網で展開すると、売り上げが見込めないというケースも多い。

当社では、「どういった野菜を作ったら、どのくらいの価格で販売できる」といった情報も提供している。新たに農業を始めた人が、やりやすい環境を引き続き提供していけたらと思う。


ユーザー層の拡大を


──今後の展開について教えてほしい。

今後の目標は、野菜をより消費しやすい形にし、ユーザー層を拡大していくことだ。軸となる野菜のサブスク会員が増えれば、野菜以外の加工品なども合わせて購入する人が増えるだろう。

単なる「野菜のサブスク」ではなく、「生活が変わる」「楽しむ食事」といった〝体験〟を提供することが、ユーザー層の拡大につながっていくと考えている。

ニッチな野菜のレシピなどの場合、ウェブ上で探してもなかなか見つからないケースも多い。レシピを掲載しているのが、当社のサイトだけだったりすることも少なからずある。今後もそういった独自のコンテンツを充実させていきたい。ユーザーに食事を楽しんでもらう中で、ユーザー層の拡大を図っていきたい。

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