健康食品通販最大手のサントリーウエルネス(本社東京都)の代表取締役社長に、2025年1月1日付で、サントリーの前常務執行役員である栗原勝範氏が就任した。栗原氏は、中国・上海のビール工場のサプライチェーンマネジメントを手掛けていた。ウイスキーの原酒開発生産部長やブレンダー室長を歴任したという。「サントリーウエルネスとして今後、長期的視野でお客さまと関係構築できるコミュニケーションを目指したい」と話す栗原氏に、これまでの経歴や、今後の戦略について聞いた。
MBCが考えの礎
──栗原氏のこれまでの経歴を簡単に聞きたい。
1998年にサントリーに入社した後、飲料の容器の開発や、海外の工場でのサプライチェーンマネジメント、新商品開発のための研究所などを経験してきた。
2004年には、お茶の「伊右衛門」の竹筒状の容器の開発を手掛けた。伊右衛門と言えば、サントリーウエルネス前社長の沖中直人氏がブランドを手掛けていた。
肩が出っ張っている新しい形状の容器は、市場にインパクトを与えることができた。
その後、中国・上海のビール工場で、サプライチェーンマネジメントの業務を手掛けた。文化の違う現地の人と、いかに共通の目標を持って仕事に臨むかを考えるのは、いい経験だった。
その後、研究開発を行う「サントリーグローバルイノベーションセンター」に異動した。それまでサプライチェーンを担当してきたのが、研究開発の部署に異動となった。チームリーダーにもかかわらず、チームの中で自分が、一番知識がない状態だった。
その中で、自分の仕事は「開発中の技術が完成したときに、社会でどう役に立つかを考えることだ」と考え、メンバーのモチベーションを高めることに専念した。
その後、サントリーホールディングス副会長の鳥井信吾の秘書を務めることとなった。鳥井の下で、さまざまな業界の一流の方たちと話をできたことが、私の中で大きな経験となった。
鳥井はサントリーグループのものづくりの最高責任者だ。鳥井の下で、「MBC(ものづくりブランドカルチャー)プロジェクト」に携わった。「MBC」とは、ものづくりを単なる生産活動と捉えるのはなく、そこにあるストーリーや人を価値と捉え、企業活動やブランドに反映し、最終的に会社に『文化』として定着させる取り組みのことだ。私がさまざまな事業の運営を行う上で、考えの礎になっている。
シニア世代の幸せの総量
──サントリーウエルネスの社長に就任したことで、何が求められていると考えているか。
主にシニアのお客さまに対して、豊かな生活文化を創造することが、会社としての価値であると考えている。
65歳以上のシニア世代の人口は増加していく。一人一人が幸せになることによって、日本全体の幸せの総量が増えることになる。シニア世代の生活を豊かにする我々の商品やサービスには、社会的な意味があると考えている。
お客さまとダイレクトにコミュニケーションを続けることが、我々の最大のミッションであり、最大のバリューだ。
──今後、具体的に実行したい施策は?
お客さまと直接コミュニケーションを取る手段がどんどん変化している。今までは電話や同梱物、DMがメインだった。今後は、デジタルに慣れ親しんだミドル世代がどんどんシニアになっていく、
デジタルでのコミュニケーションを強化することが、長期的視野でお客さまと関係を積み上げていく方法の一つだと考えている。