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2025.07.03

特集

ランキング

【2025年版 化粧品通販売上高ランキング】実質成長率は4.1%に 91社合計売上高は5921億円超

日本流通産業新聞がこのほどまとめた、2025年版「通信販売化粧品売上高ランキング」では、ランキング化した91社の合計売上高が5921億8200万円となった。前年と比較可能な24社で算出した実質成長率は、4.1%増のプラス成長だった。




ECが高い成長率維持


1位の新日本製薬の2024年9月期の化粧品事業は、前期比2.7%増の342億8800万円だった。チャネル別で見ると、通販におけるEC売上高の構成比が上昇しているという。同期の同社の国内外EC売上高(国内EC売上高と海外販売におけるEC売上高の合計)は、前期比で30.7%増となった。2024年10月-2025年3月期(中間期)でも、国内外EC売上高が前年同期比18.7%増となるなど、急成長を続けている。

同社の「PERFECT ONE(パーフェクトワン)」ブランドでは、ミドル世代(40-50代)獲得に向けた、新商品・新規施策による新規顧客開拓が進み、EC売り上げの拡大に寄与したという。同社では今後、「データベースマーケティング強化による新規事業・新商品でLTV最大化」を目指すとしている。

2位のファーマフーズの2024年7月期業績の、通販を主軸としたBtoC事業では、収益性指標を重視し戦略的に広告費を大幅に抑制した結果、同事業の売上高が同12.1%減の525億4300万円になったという。そのうち、ファーマフーズの通販化粧品事業の売上高は、前期比14.1%減の301億4500万円だった。

一方でBtoC事業のセグメント利益は、同42.2%増の53億2500万円となった。CPOとLTVを重視して広告宣伝費の適正化の取り組みに注力したという。一方で、新製品への広告宣伝投資は強化を図ったとしている。


景況感は横ばい

アンケート調査で「今後1年間の化粧品通販市場の景況について」の質問を行ったところ、15社の回答のうち、「横ばい」という回答が約半数(53.3%)を占めた。次いで、「やや上向く」という回答が26.7%、「やや縮小する」が20.0%となった。マーケットの景況感については現状が維持されるという見立てが多かった。


▲今後1年間の化粧品通販市場の景況


新規顧客獲得難航か


 CPA(顧客獲得単価)はコロナ前と比べると確実に悪化しているようだ。

「新規顧客獲得後のロイヤル化」に難航しているとの声も聞かれる。芸能人の起用や、魅力的なノベルティーのプレゼントを特典に、マス向けに新規獲得施策を行うと、一定の顧客数を獲得できる。ただ、「離脱率が非常に多い」「購入単価がふるわない」といった問題が起こった事例もあるという。

化粧品通販のトータルサポートを行うフォー・レディーの鯉渕登志子社長によると、新規顧客に向けて広告を打つ際にも、「自社の顧客理解」「自社ブランドへの理解」は欠かせないとしている。自社のロイヤル顧客の特性に近い層を最初から狙い撃ちし、獲得できれば、継続確率が高まる傾向があるとしている。


SNSで接点を拡大


I-ne(アイエヌイー)では、”オーガニック”な顧客の育成に力を入れているという。商品の購入者に、SNSなどで発信してもらうことにより、UGCによるオーガニックな拡散を生み、そこからオーガニックな購入につなげる取り組みを行っているそうだ。


スタッフ累計フォロワー20万人超


 ランクアップでは、自社スタッフのSNS運用によって、積極的に発信を行っているという。同社のスタッフは約70人がそれぞれのアカウントから、リアルな声を大切にしつつ発信しているそうだ。

累計フォロワー数は約21万人となっている。

ファッション・アパレル企業のスタッフ個人のアカウントの活用は盛んだが、今後は化粧品通販業界でも、スタッフのSNSの発信が活発化していく可能性がある。


賢くなる消費者 商品力は不可欠に


獲得した顧客に定着してもらうためにも、「商品力」は欠かせない。

取材していると各事業者が口々に言うのが、「お客さまは賢い」「お客さまの美容リテラシーが上がっている」という点だ。

アイスタイルはこのほど、12万件超の口コミの分析などから選出した、「@cosmeベストコスメアワード2025 上半期新作ベストコスメ」を発表した。同アワードの「総合トップ10」にランクインした商品のうち7品が、「技術力」「研究背景」を訴求していたという。

実際、同社が実施したアンケートでも、お金をかけても良いと思える商品の特性には、「研究開発・技術力の高さに裏付けされたもの」「長年にわたり研究されているもの」という回答が首位を占めたそうだ。

多くの美容インフルエンサーが、SNSや動画コンテンツなどで専門的な情報を分かりやすく発信を行っている。そのため、ユーザーの美容の専門知識は高まり続けている傾向があるようだ。

「顧客インタビューを行うと、自社の社員より、顧客の方が商品の成分・処方に詳しかった」といったケースもあったそうだ。

高い技術力・商品開発力と合わせて、それを発信する手法の工夫も必要となるだろう。


海外市場は再加熱か


世界トップシェアを誇る中国EC市場では、処理水放出後、日本ブランド化粧品への忌避感が高まった。

以降は中国国産ブランドや、日本以外のブランドのシェアが高まり続けても、日本ブランドの化粧品は苦戦しているケースが少なくなかった。

一方、今年の中国ECセールイベント「618」を見ると、中国EC市場全体の成長や、日本の化粧品ブランドの回復の兆しも見えてきているようだ。中国展開に再度アクセルを踏む化粧品事業者も増えてきた。

北米・東南アジア・台湾など、中国以外のエリアへの進出も進んでいる。

コーセーの2024年12月期の同社の日本・海外を含めた全体のEC売上高は512億円だった。海外では、「北米他」の海外EC売上高が伸長しており、前期比64.6%増の214億円となった。

日本国内での人口減が続く中で、海外市場には引き続き商機が眠っていそうだ。



表の見方

▽「化粧品通販売上高ランキング」は、全国の化粧品通販事業者を対象に調査を実施。企業からの回答や取材データをもとにランキング表を作成した。

▽調査対象期間は、2024年4月から2025年3月の間に迎えた決算期の売上高。化粧品通販専業は全社売上高、その他の商品ジャンルを扱う企業は、化粧品部門の売上高を掲載している。

▽店舗や卸、海外事業の売上高を含む企業もある。回答のなかった企業は、取材データや開示情報をもとに推定数字を記した。

▽売上高は百万円単位とし、増減率のパーセントは小数点第二位を四捨五入した。増減率の「▲」はマイナスを表す。表中の「※」は本紙推定、「―」は不明、もしくは算出不能。

▽化粧品の製品カテゴリーについては、スキンケア、ベースメーク、メーキャップ、ヘアケア、クレンジング、せっけん、香水、バスケア、デンタルケアと定義した。


<企業注記>

◎オルビス=全体の売上高

◎コーセー=国内のEC売上高

◎ファーマフーズ=育毛剤やまつ毛美容液、薬用化粧品、ヘアケア製品、薬用デンタルリンスの売上高を含む

◎北の達人コーポレーション=全体の売上高

◎フューチャーラボ=フューチャーラボの全社売上高。一部サプリメントの売り上げを含む

◎アクシージア=中国・日本国内外の全体のEC売上高

◎ユーグレナ=LIGUNAなどのグループ全体の化粧品売上高を推定。キューサイは含まない

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