アイスタイルが運営する美容系総合メディア「@cosme(アットコスメ)」は、EC・実店舗を活用しつつ、「美容プラットフォーム」を構築し成長を続けている。2024年6月期のEC売上高は、前期比31.8%増の142億9200万円となった。アイスタイルグループのEC・実店舗の企画開発・運営を行う、アイスタイルリテール(本社東京都、遠藤宗社長)のECカンパニーのカンパニー長を務める浦田望氏は、「EC・店舗を横断するイベントが好調だった」と話す。
──直近の業績について聞きたい。
2024年7月-2025年3月期(第3四半期)のEC売上高も、前年同期比27.6%増の129億5300万円と伸長した。
──高い成長率を維持している要因は。
要因としては、(1)自社の化粧品ショッピングサイト「@cosme SHOPPING」の伸長(2)2023年11月にアマゾン上にオープンした「@cosme SHOPPING」の取り扱い商品数の拡大─があった。
「@cosme SHOPPING」では、新規顧客の獲得に注力した。
「@cosme」のユーザーではあるが、まだ当社の、ECや店舗で商品を購入したことがない層に、購入を促すアプローチも行っている。アプリ・ウェブを通したコミュニケーションも行っている。
当社では毎年2回、EC・店舗連動の大型セールイベントを開催する。
このセールイベントの好調も、増収に寄与した。
──セールイベントについて聞きたい。
以前の大型セールイベントはECメインで開催していた。
コロナ禍を経て、21年に全社イベントにシフトした。EC・店舗を横断したイベントとなってから、売り上げはさらに大きく伸びた。今後はアプリをハブとして、ECと店舗、メディアを一体化させた、スムーズな顧客体験の提供に取り組んでいく。
──アイスタイルのOMO戦略について聞きたい。
当社では、自社EC「@cosme SHOPPING」、美容メディア「@cosme」、実店舗を活用しつつ、「美容プラットフォーム」を構築し、成長を続けている。それぞれの強みを生かし、相互送客につながる取り組みに力を入れている。
2025年3月には、東京・原宿の旗艦店「@cosme TOKYO」をリニューアルオープンした。
ミニコスメ好調
「@cosme TOKYO」の新たな取り組みとして、コンパクトサイズのコスメを集めた「ミニコスメ」コーナーを新設した。
ミニコスメは、ECでも販売しており、スペースが限られている店舗より多くの種類を取りそろえている。
無料サンプルは配布しても使われないことが少なくない。コストもかかる。一方、ミニコスメは、「お金を支払ってでも試したい」という購入意欲の高いユーザーに、使用機会を提供できる。実際、ミニコスメの購入後、現品の購入につながっているケースも少なくない。
ユーザーは適量を手軽に試すことができ、事業者にとっては売り上げにもつながるというメリットがある。
3階には、フレグランスゾーンを新設した。400商品以上のフレグランスを取りそろえている。フレグランス商品は一般的に、商品が気になってから購入するまでのタームが長い傾向があると言えるだろう。時間の経過による、香りの変化も含めて検討されるケースが少なくない。
同ゾーンには、ムエット(試香紙)や、そのムエットの持ち帰り用袋も用意している。ムエットには、どの香りか分かりやすいように商品銘柄を記載している。店舗から帰宅後、香りによる時間の変化を確認し、あとから「@cosme TOKYO」で購入しやすいように、店舗の体験を設計した。
EC・店舗を横断し、より良い体験を提供できるように心掛けている。
当社のCRM施策としては、23年8月にスタートした、「@cosme お買い物特典プログラム」がある。購入金額などによってランクが決まり、ランクに応じて特典が受けられる。
今後、「お得さ」だけではなく、ロイヤルティーの高いお客さまとのコミュニケーションを深めていきたいと考えている。