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2025.07.04

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QVCジャパン、AI活用のライブコマースを実施 従来の約3倍となる視聴者数を獲得

制作・販売戦略・放送部門 Senior Manager’Broadcast Ops古谷道実氏

テレビを中心としたマルチプラットフォーム事業を展開するQVCジャパン(本社千葉県、伊藤淳史CEO)がAIを活用したデジタルな取り組みを推進している。2025年4月23日、AIショッピングナビゲーター「グルmetaQ(グルメタキュー)」によるライブコマースを実施した。制作・販売戦略・放送部門のSenior Manager’Broadcast Opsの古谷道実氏は、「『グルmetaQ』によるライブコマースは従来の約3倍となる視聴者数だった」と振り返る。

QVCジャパンは2023年12月、NTTドコモが開発し、Relicが運営するメタコミュニケーションサービス「MetaMe(メタミー)」上で、新たなショッピング空間となる「メタバースQVCお買い物PLAZA」を開設した。

「メタバースQVCお買い物PLAZA」は、QVCジャパンの本社屋を模したショッピング空間。商品購入が可能なショッピングスペースと、「MetaMe」ならではの超多人数同時接続技術を導入したイベント会場を含む特設スペースなど、合計10カ所以上のブースを用意した。

同空間内の背景は時期に合わせて更新し、12月は華やかなクリスマスムードを演出した。イベント会場では、顧客のアバターを最大で1000人ほど同時に接続できるため、QVCで放送中の番組鑑賞を始め、催し物やパブリックビューイングへの参加を通じたメタコミュニケーション体験で新鮮な驚きを提供した。

QVCジャパンの本格的なAIの活用は20223年末から開始している。

「前回、メタバース空間にお客さまを招き、アバターで応対するという企画を実施したところ、非常に大きな反響を寄せられた。この成功体験をさらに発展させ、当社のビジネスにつなげられないかと思ったことが『グルmetaQ』の発端だった。『アバターAI』を活用したライブコマースであれば、当社を知らないお客さまに認知を広げることができる。さらに既存のお客さまに対しても、さらなるお買い物体験の向上を図れると考えた」(古谷氏)と経緯を話す。

4月に配信したライブコマースでは、アバターAI「グルmetaQ」が、テーマに合わせた旬のアイテムについて、顧客からの質問に答えたり、出演者との会話を通じて、商品を販売した。

「番組では、永谷園や井村屋、ドトールコーヒーなどの商品を紹介した。そのこともあり、視聴数は通常放送よりも好調だった。ライブコマースの配信にあたり、NTTドコモのSNSでも告知を行ったため、当社を知らない人からの視聴にもつながったと分析している」(同)と説明する。

視聴者からのコメントには、「AIが喋った」「きちんと受け答えしている」などの投稿が多く寄せられたという。親しみを込めて、「グルメタ君」と呼びかける人もおり、「グルmetaQ」は愛着を持ってユーザーに受け入れられた。

ライブコマースの配信に合わせて、「グルmetaQ」に商品のスペックや販売情報、過去の紹介内容などを学習させて、商品説明やさまざまな受け答えに対応できることを目指した。

「薬機法などの規制も踏まえた上で、表現できることとできないことを厳密に区別させて、商品情報をインプットした。その結果、細かい質問にも的確に答えることができ、視聴者を驚かせることができた」(戦略・イノベーション部門 Portfolio & Program Management Analyst 濱田成就氏)と話す。


「購入につなげる」が課題


視聴者数は好調に推移したが、同時に課題も見えてきた。それはいかに「購入につなげられるか」ということだ。

多くの視聴者が「おもしろかった」と満足し配信を終えてしまう。この課題を乗り越えるためには、濱田氏は「AIヘの追求」が鍵になると予測する。


▲戦略・イノベーション部門 Portfolio & Program Management Analyst 濱田成就氏

「今後はAIが前面に出て、ショッピング体験を創出することが重要になる。例えば、人間にはできないようなデータに基づいた提案や、AIならではの見せ方を追求することで、『楽しい』だけではなく、『買いたい』と思ってもらえる体験を提供できるはずだ」(濱田氏)と話す。

「TikTok shop」が日本でも本格的に導入されるなど、ライブコマースが再び日本でも活性化する兆しが出ている。その中で、QVCジャパンはAIを活用したライブコマースで、他社と差別化を図っていく。

「日本ではまだAIとの接し方に戸惑っている事業者とユーザーが多いと思っている。そこで今後、視聴者とAIのコミュニケーションの見本となるような存在になっていきたい」(濱田氏)と話す。

次回の配信は現状では未定。今回の課題を解消し、単なる話題作りではなく、ビジネスとして成立するための具体的な施策を固めて、次の段階に進んでいく方針だ。

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