生ビタミンC配合の化粧品「Yunth(ユンス)」などを展開するAiロボティクスの2025年3月期の売上高は、前期比約2倍の142億600万円となった。営業利益は同97.3%増の24億8000万円だった。龍川誠社長は、「独自開発のAIシステム『SELL(セル)』をうまく活用しているため、新規のお客さまの獲得件数やCPAを完全にコントロールできている。事業の目標数字に全力でコミットする」と話している。
AIで効率的に運用
──2025年3月期の振り返りを聞きたい。
着実に予算を積み上げてきた結果として、目標を達成することができた。実際には、さらに大きな利益を上げる余地もあったが、翌期以降の目標設定が過度に高くなりすぎないよう、売り上げ・利益ともに、前期比でおおよそ2倍までの成長にとどめる方針を取っている。持続可能な成長を重視している。
売上高と営業利益の大幅な増加を達成できた、大きな要因としては、広告配信のチューニングから、クリエーティブの生成、CRMまでを、AIシステム「SELL」で最適化した結果、効率的な運用が行えたことがある。
例えば広告のクリエーティブの生成では、「A」と「B」というクリエーティブがあった場合、Bの方が効率的に顧客の獲得が進んだと「SELL」が判断すると、Bの要素を取り込み、さらに高い効率が期待される、「Bダッシュ」というクリエーティブを作る。新たなクリエーティブは、獲得した件数や獲得にかかった費用、クリック率など、さまざまな要素を基に作り出す。このABテストを秒単位で24時間絶え間なく繰り返して行っている。すべてをAIに任せるわけではない。広告については、人間が目視でチェックを行うスキームを入れ、薬機法などに沿ったクリエーティブになっているかを確認している。
こうした、AIを活用したマーケティングシステムを用いることによって、新規顧客の獲得件数とCPAを完全にコントロールすることに成功している
現在の化粧品ブランド「ユンス」を含めた自社の定期会員数は、13万7000人となっている。2026年3月期には、17万人とすることを計画している。
現在は、美容機器の「Brighte(ブライト)」の新規獲得も、広告を使って行っている。
──LTVについても聞きたい。
当社の顧客のLTVについては上昇を続けている。継続率やクロスセルも増えている。これはマーケティングの力だけではなく、しっかりと体感性のある商品を生み出せていることも大きな要因だと考えている。
2025年3月末時点の顧客一人当たりのLTVについては、22年12月末時点の一人当たりのLTVの金額と比較すると、2.7倍に増加している。
新ドライヤーがヒット
──美容家電の「Brighte(ブライト)」から発売した「シャワードライヤー」が、発売後すぐに完売するなど、非常に好調だと聞くが、理由は。
「シャワードライヤー」はとても画期的な商品だ。専用のミストセラムを開発し、ドライヤーで風を送りながら、ミストセラムも髪に届けるという機能を搭載している。
軽量でありながら風量が非常に大きいことも特徴だ。商品を購入したお客さまからは、満足度が高いという声が多く寄せられている。こうしたお客さまの声を、次の新規顧客獲得のためのクリエーティブに反映している。
──2026年3月期中の戦略についても聞きたい。
6月に、新たにシャンプーとトリートメントを発売する。これまでの既存製品とは、一線を画す、根本的に異なるアプローチで開発した商品であり、機能面においても圧倒的な差別化を実現している。
業績面では、2026年3月期の売上高と営業利益を、ともに前期比で2倍にするという計画を立てている。
実現可能かどうかではなく、計画した予算に対して、一つ一つ粛々と取り組んでいく所存だ。数値目標に責任を持ち、全力でコミットしていく。
私は今年5月に個人資産を投じて自社株を追加取得し、株式の保有比率をさらに高めた。これは、会社の発展に対する強い自信と責任の意思表示であると同時に、株主の皆さまと夢を共有したいという想いを込めた決断だ。改めて、経営目標に対する私の強い覚悟をお伝えしたい。
当社の今年の目標は、時価総額で1000億円の突破だ。その実現のために、化粧品や美容家電といった既存事業を行っていくだけでなく、M&Aも積極的に推進していく。自社ブランドのさらなる成長と、M&Aの加速に向けて、パッションと実行力を兼ね備えた優秀な人材を求めている。