化粧品訪販のエフエムジー&ミッション(本社東京都)では、計画を上回る販売量を記録するヒット商品が着実に生まれている。2024年に発売した化粧液や、NMN配合のサプリメントなどだ。「インフレやトランプ氏の影響など、厳しい状況の中だが、新規のお客さまを増やす取り組みを着実に進めていく」と話す、同社の中陽次社長に、ヒット商品が生まれる背景や、組織の事業継承の取り組みなどについて聞いた。
「ちょっといいもの」ニーズ
──2024年に発売した新商品が、ヒットしていると聞いた。
初回購入でよく売れただけでなく、リピートオーダーにもつながっている商品がある。
一つは主力の「ミッション」ブランドの「エターナルオーラ(化粧液)」だ。2024年5月に発売し、2025年5月末までに累計約2万8000個を販売した。計画比で1割以上多く売れた計算だ。
同じシリーズの「エターナルオーラ クリーム」は、2024年10月の発売以来、約1万8000個売れている。こちらは計画比で4割ほど多い売り上げとなっている。
2024年2月に発売した健康食品「NMN エレガント ボーテ(以下、NMN)」も、計画より5割多い、約1万5000個を売り上げた。
こうした商品は、体感性があり、リピートオーダーにつながっていると考えている。特に「エターナルオーラ」シリーズは、肌へのなじみがよいという点で、メリットを感じてもらっている。
「エターナルオーラ」では、乳化粒子をナノ化する独自乳化技術「ナノエマルジョンシステム」を採用している。使ったときに「肌になじんでいく感じが違う」という口コミが拡大している。訪販で活躍してくれている、アクティブなメンバー以外の方にもリピートしてもらっている。
これ1本で、導入美容液、化粧水、乳液、美容液の4役を担うのに、価格が1万円台半ばと、高すぎない価格であることも、ヒットにつながっているのではないか。
お客さまの間では「コスパがいい」と言っていただいている。
「NMN」については、非常にリピーターが多い商品だ。市場のお客さまの購入意欲は冷え込んでいるが、「無駄遣いを省いて自分の好きなものにはお金を使う」という考えが広まっていると感じている。
平均100円の値上げ
──2024年の化粧品の対面販売の市場感について聞きたい。
消費者のマインドが冷えていると感じた。大変厳しい1年間だった。業績的には大きく下がったわけではないが、ジリジリ下がっている感じだ。
さらに物価が上がっている。当社の製品の値上げも行った。平均で100円以上、製品の値上げをしたと思う。商品の値上げをした事は、お客さまもしっかりと分かっている。お客さまの中には家計の支出を細かく見ている人もいる。当社が製品の値上げをした分、注文数が明らかに下がっている。購入頻度も下がっている。
──どんなものが値上がりしているか。
化粧品の容器も値上がりしている、原材料も上がっている。上がる気配のないものはない。さまざまなものを運ぶ輸送費も値上がりしていることによって、結果的に資材や原料を調達する価格が上がっていると感じている。
業績的には、2024年12月期の売上高は、前期比4%のマイナスだった。営業利益も減少した。2023年までは、あらゆるコストを抑えることによって、営業利益の低下を避けてこられたが、ここに来て、もう抑えるコストも限界に近付いている。
──対面販売の化粧品の現場はどういった雰囲気か。
メンバーによって雰囲気が異なる。当社の中で、訪問販売でアクティブに活動してくれているメンバーは約1万人いるが、アクティブなメンバーの売り上げはほとんど変わらない。ただ、売り上げが伸びているわけではない。
それ以外のお客さまはカタログから注文するという形だ。
高齢になり、カタログのやりとりができなくなってしまうお客さまも増えている。カタログの注文の件数が減ると、売り上げの減少につながってしまう。
高齢になって、化粧品を使わなくなる人や、使う頻度が少なくなる人も多い。お客さまの離脱は顕著に発生している。
こうした高齢化の問題は、決定的な解決策があるわけではない。売り上げを伸ばすには、新規のお客さまを増やしていくしか方法がないと考えている。
テレビ通販にも参入
──新規獲得をどのようにして行っていくのか。
新たな取り組みとして、テレビ通販「ショップチャンネル」での販売を始めた。目的はブランドのPRだ。手頃な価格で販売を行い、まずは当社のことを知ってもらいたいと考えている。
もし、当社の商品を購入して気に入ってもらえれば、当社のメンバーになることも勧めていきたい。
メンバーになることを無理強いはしない。当社の商品は購入後、未開封で半年以内であれば、返品もできる。まずは、気軽に当社のお客さまになってもらいたい。
現在当社のお客さまで、毎年必ずオーダーしてくれる人は約30万人いる。メンバーにはランクがあり、上位の数百人には直接お会いしてコミュニケーションをとっている。
カタログ顧客への移行
──化粧品の対面販売の市場では、販売員の高齢化とともに、事業継承が大きな課題となっている。どのように取り組んでいるか。
当社のメンバーの中で、上位ランクであるトップメンバーに、娘さんがいる場合は、娘さんに継承をしてもらうことを促している。
ただ、ほとんどの人が、自分で販売できなくなった時点で活動を終了してしまう。そうなると、そのメンバーが抱えているお客さまが当社のお客さまではなくなってしまう可能性が高い。
そうなる前に、お客さまに、登録してくれるよう促してほしいと、メンバーには伝えている。
万が一メンバーが活動できなくなってしまっても、当社がお客さまに直接カタログを送って引き続きサポートをさせていただくという提案を行っている。
対面販売の良さは、「何を選んだらいいか分からない」と言う悩みを抱えるお客さまに、信頼できる販売員やメンバーが、カウンセリングをした上で、提案できるということだ。
現在は、美容や化粧品の情報が氾濫している。買い物の情報難民を生まないためにも、当社や、対面販売の人々が担っている役割は大きいと思う。