ショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を運営するジュピターショップチャンネル(本社東京都、小川吉宏社長)の2025年3月期の売上高は、前期比6%増の1677億9200万円で2期連続の増収となった。これまでの最高売り上げとなる2020年3月期の1633億9100万円を超える実績を上げた。商品、番組内容、ECサイト、顧客対応など、全てにおいて顧客視点を徹底したことが奏功したという。小川社長に増収の要因や、前期での新たな取り組み、今秋に開設する二つのECサイトの概要などについて聞いた。
──前期の売上高が好調な要因をどのように分析しているか。
私は2022年4月に代表取締役社長に就任したが、それ以降「お客さま視点」を徹底するように社内に伝えてきた。商品開発から放送する番組内容、新たな番組放送、ECサイトの運営、オペレーションサービスまで、お客さまの視点を追求し、価値を高めることに注力してきた。前期はその取り組みがお客さまのニーズに合致し、増収につながったと分析している。
──お客さま視点を徹底したとのことだが、具体的にはどのような取り組みを行ったのか。
お客さま視点を徹底すると言うのは簡単だが、思考を切り替え、実行に移すのは本当に難しい。当社としてもこれまでもコールセンターでは貴重なお客さまの声をいただいていたが、番組内にQRコードを掲載して、お客さまと番組進行役のキャストと商品を紹介するゲストがリアルタイムでやりとりできるように改善したりした。
このほかでは、番組モニター制度を作り、当社の番組を見て、意見を送ってもらえるような取り組みも開始している。お客さまを招待するオフラインイベントやポップアップストアなど、お客さまと触れ合える機会の場も多く作ることで、当社に対して感じている悩みや意見をヒアリングして、お客さま視点で考えられるような機会を増やし、番組内容や商品開発の改良に生かしている。
──新たな番組ということだと「みん推しブランドフェス」や、「ウェルカム!ショップチャンネルウィーク」の放送を開始したと思う。手応えはどうだったのか。
非常に良い手応えを感じている。「みん推しブランドフェス」はお客さまからの口コミ評価の高いアイテムやブランドなどを紹介する番組で、「ウェルカム!ショップチャンネルウィーク」は当社での買い物が初めての人に最適な商品を紹介する番組だ。
お客さま視点への改革を進めていく中で、もちろん番組については1日24時間しかないため放送枠には限りがあり、以前から放送している番組を中止しないと、新しい番組を放送できない。新しい挑戦は非常に勇気が必要になってくる。
だが、お客さまのことを考えると、やはり新しい番組を見たいのではないかと思っている。そこで前期は果敢に新しい番組の放送に取り組んだ。結果として、番組全体の新鮮度が上がり、視聴者数の増加と商品の購入につながったと考えている。
──新たな取り組みという意味では、昨年、EC本部を新設したと思う。部の内容と開設した狙いについて伺いたい。
主にECの強化を狙いとしている部署で、ECサイト限定の商品の拡充や新サービスの開始などを目的に活動している。
ご存知の通り、お客さまのライフスタイルや価値観は多様化しており、テレビの視聴時間は年々短縮傾向にある。そこで、会社としてもテレビに加えて、スマホやさまざまなメディアを通じて、お客さまと触れ合える接点を増やしていきたいという考えがあった。
その中でやはりECを強化したいと思っており、EC専門の部署を作って、コンテンツの強化を図りたいと考えた。実際にもうすでに効果も出ており、前期はテレビの視聴時間とECサイトへの訪問者数の両方が伸びていた。
ECサイトの訪問者数が伸びた理由は、同社の社員などがファッションコーディネートを提案する「SHOP CHANNEL PEOPLE」において、購入を検討している人に参考になるような情報を提供する機能を追加するなどして、コンテンツの充実を図ったことが考えられる。
Googleと連携し、ウェブ広告の活用も強化した。既存顧客のデータをGoogle広告と連係して広告の配信対象から除外し、広告を当てたい対象者に効率的に当てることで新規顧客の獲得効率の向上を図った。
──番組の視聴者数も増えたとのことだが、要因は。
やはり商品と番組内容が良くなったことが関係していると思う。あとは前期大々的に打ち出した「全員送料無料キャンペーン」が奏功した。同時期にテレビCMなど精力的にPRを行ったことで、一度「ショップチャンネル」を見てみようと思う人が一定数いたのだと推測している。
地上波でテレビCMを放送したため、情報が伝わる人のパイが大きく、かなりの新規顧客からの購入につながった。
──全員送料無料にするための送料負担は大きくないのか。
負担もあるが、前期の方針の一つに顧客基盤の拡大があった。中長期の成長を考えると、新規のお客さまに「ショップチャンネル」を利用してもらわないと事業は拡大していかない。
──先日、今秋に二つのECサイトを開設すると発表した。狙いは。
理想のおうち時間を探せるビジュアル型UGC(ユーザー生成コンテンツ)コミュニティーコマース「うちのね、」と、美容のプロが教えるエイジングケア特化メディア「CanauBi(カナウビ)」を始動する。
「うちのね、」はインフルエンサーが実際に商品を体験し、ユーザー視点でその魅力を伝えるコミュニティーコマースとして運営する。企業目線ではなく、よりお客さまの目線に近い人の意見を掲載することで、納得して商品を購入してもらえるだろう。
「CanauBi」は美容家や専門家などの有識者がアンチエイジングケアに特化した情報を伝えていく専門メディアとして運営する。
どちらのECサイトも「ショップチャンネル」とは別の、独立したECサイトとして運営し、オンライン上のデジタル広告を活用して、テレビ非視聴者層の新規顧客獲得を目指していく。