化粧品・健康食品を展開するファンケルでは、業務委託していた「関西物流センター」の運営を完全内製化した。その結果、1億円以上の物流コスト削減効果を生み出すことに成功したという。内製化によって、品質向上・生産性向上にもつながっている。完全内製化の計画を推進した関西物流センターの矢野正人センター長と久住あも係長に話を聞いた。
──関西物流センターの役割について教えてください。
矢野: 2021年6月、ファンケルグループの「ファンケル」「アテニア」ブランドのさらなる事業拡大に備え、大阪・門真市において「関西物流センター」の稼働を開始しました。開設によって西日本エリアのリードタイムの短縮につながりました。中国・四国・九州地方は以前、「翌々日配達」でしたが、「翌日配達」が可能になりました。4階建ての鉄骨造りで、延床面積は1万7051平方メートルです。362日稼働しており、1日約120人が作業しています。
ファンケルは482品目、アテニアは1385品目の商品の出荷・配送業務を行っています。具体的には、ファンケルブランドの売れ筋商品を中心に、通販で購入いただいた商品の配送や、直営店舗への出荷を、西日本エリアにおいて担っています。アテニアブランドは全商品を取り扱っており、日本全国への出荷だけでなく海外出荷も行っています。ちなみに通販商品については、ファンケル・アテニアともそれぞれ月17万~20万件の出荷を実現しています。
省人化・効率化に注力
──最新鋭の機器を備えていますね。狙いは?
矢野: 省人化にこだわりました。物流業界全体の傾向として、人材の確保が課題としてあると思います。人任せの仕組みにすることを避けるため、「関西物流センター」竣工時から、物流業務の効率化・省人化を重視して、自社投資でマテハン(マテリアルハンドリング)機器を導入しました。パレット自動倉庫(2460パレット)や、ケース自動倉庫(1万7280間口)、自動丁合(ちょうあいき)機、自動投入ピッキングライン、自動補充システム、ピースピッキングロボット、デパレロボットを備えています。多数の作業を自動化・ロボット化することにより、ファンケル関東物流センターと比較して、作業負担を4割ほど削減することができました。
──現場の運営体制について完全内製化を実施されたと伺いました。どのようなメリットがありましたか?
矢野: 2024年4月1日、完全内製化に切り替えました。完全内製化によって、さまざまなプラスの効果が出ています。コスト面では、年間1億8000万円の削減につながりました。倉庫内業務は3PL(サードパーティーロジスティクス)に業務委託していましたが、内製化によって作業員を直接雇用に切り替え、柔軟・迅速な意思決定を行えるようになりました。より広範囲かつ複雑な、物流への要求に対応したり、経験値やノウハウ、実績データを社内で蓄積し活用したりすることもできるようになりました。現場の声を把握しやすくなるなど、多くの良い結果が生まれています。
久住: 現在、マテハン機器の保守・点検についても、自社で行えるものは内製化しようと動いています。
362日稼働しているので、例えば、急に「ベルトコンベアのベルトが切れた」という事態も発生します。そうすると、今まではマテハンメーカーのサポートセンターに連絡し、緊急対応を依頼していました。現地到着・復旧まで時間がかかり、現場業務が止まるリスクがありました。緊急対応費用や、休日であれば休日対応費など、費用も発生します。なにより、「当日の出荷に間に合わず、お客さまに商品を届けられない」といったリスクも抱えていました。自社で保守を実施できるようになったことで、「ベルトコンベアであれば1時間後に復旧している」といったスピーディーな対応が可能になりました。
完全内製化を決断
──内製化に当たって課題にはぶつかりましたか?
矢野: 突如、3PL会社との契約の切り替え時に人材の確保に直結する問題が発生したことから、急きょ完全内製化を検討し、決断しました。3PL会社に委託してはいましたが、稼働当初から内製化については視野に入れ、物流センターを設計したので、設備や運用の面での問題はまったくありませんでした。一番の懸念点は、業務委託契約を終了した後に、どれくらいの作業員の方が当社に転籍してくれるのか?という点でした。しかし、結果的に、想定を上回る方がそのまま残っていただき、過去に退職した作業員も戻って来てくれました。
久住: そのおかげで、内製化に関する大きな負荷も特にありませんでしたね。内製化を機に、管理側のマニュアルも改めて見直しましたが、現場のマニュアルや教育体制については特に変更点はありませんでした。
以前業務委託をしていた時は、労働基準法などの法令によって、契約会社在籍である作業員の方に対して、直接指揮をするなど、話しかけることができなかったんです。また、改善したいことがあり、新しい業務をお願いするとなった時には、見積りを取って、社内で打ち合わせを行うなどのフローが発生するので、どうしてもスピード感として遅くなってしまっている面がありました。当社の直接雇用に切り替わったことで、より迅速な連携や改善が可能になりました。緊急時の情報伝達スピードも、格段に上がりました。
業務委託によって発生していたコストの大幅な削減にもつながっています。