ベルーナは通販業界の環境が厳しい中でも、多角化を進めることで成長を継続している。中期経営計画においては、新たに「Nine・Six・Five and One・Two・Three」という計画を発表した。直近の営業利益は118億円だが、中長期的に営業利益を250億円まで高める計画だ。安野清社長に新たな成長を図る計画について聞いた。
──中期経営計画において「Nine・Six・Five and One・Two・Three」という計画を発表している。この中身は。
これはプロパティ・ホテル事業で営業利益90億円、データベース活用事業で営業利益60億円、専門通販事業で営業利益50億円、アパレル・雑貨事業で営業利益20億円、呉服関連事業で営業利益25億円、その他の事業で営業利益5億円を生み出し、営業利益を250億円まで伸ばすという計画だ。
2028年3月期を最終年度とした第6次短期経営計画では、この目標の達成とまではいかなくても、目指せる水準まで持っていきたいと思っている。
以前は5カ年計画を立てていたが、最近は3年ごとに短期経営計画を立てて進めている。5年先はどうなるか分からないが、3年後ぐらいであれば見渡すことができる。外部環境や社内体制を見込み、3年ペース計画を立てることで、社内にもリズムができる。
これまでは総合通販が主力だったが、環境はアゲインストになっている。今はプロパティ・ホテル事業や専門通販事業、データベース事業を成長の柱に切り替えて、注力していることがポイントだ。
──総合通販であるアパレル・雑貨事業はどう取り組むのか。
アパレルにおいては価格が下がっていることの影響が大きい。10年間で3分の1ぐらいの価格になっている。市場規模は15兆円あったのが、今は商品の量は倍以上あるのに、規模は9兆円を切っている。
さらに言うと広告宣伝費と原価の問題がある。広告宣伝費では、媒体費を見ると紙代、印刷費が上がり、送料も上がっている。さらに為替の関係もあり、原価が上がっている。原価が上がるのであれば、価格転嫁すればいいのだが、値上げするとレスポンスに影響する。
このような背景の中でアパレルを中心とした総合通販大手は皆、減速している。100点満点の中で100点取っても赤字、120点取っても厳しいのが現状だ。景気が良いときは、70点、80点取ればしっかりと儲けが出ていた。
そんな中でも、インフラも持っているし、社員もいるので、事業は維持・継続していかなければならない。
収益の改善のために社内の工夫も大事だが、環境が厳しいときに多少の工夫だけでは限界がある。それよりも戦略的に取り組む必要がある。
──専門通販事業はどう伸ばしていく考えか。
専門通販事業ではコスメ、サプリ、グルメ、ワイン、ナースと5部門あるが、ここは成長性をキープしようと取り組んでいる。
専門通販も為替の影響を受けている。ワインなどでは仕入価格が上がっている。だからと言って価格転嫁すればレスポンスに影響が出る。これはうちだけではなく、ワイン各社で同じ状況だ。利幅が取りにくい中で、どう勝負するか。結局はがまんしているところが勝つ。
グルメ領域はマーケットも大きいし、まだまだ伸ばせる余地がある。
──データベース活用事業はさらに伸ばす考えか。
データベース活用事業では、長年の通販事業で培ったノウハウやインフラを活用したコールセンターや物流の受託事業を提供している。
「ベルーナダイレクト」として、ベルーナが保有する顧客データベースを活用し、クライアント企業のチラシやサンプルなどの販促物を商品やカタログと一緒に送る封入同梱サービスを展開している。
さらに、通販で培ったデータベースを活用したファイナンス事業も運営している。
これらの事業では、すでに50億円くらいの営業利益を生み出しているが、さらに事業を強化し、60億円くらい稼げるようにしたい。
──プロパティ・ホテル事業はさらなる成長を期待できそうか。
インバウンドの関係で需要はまだ伸びている。環境としては良いが、建築費が高騰しており、新しく建設するのが難しくなっている。新規参入が難しくなっている中で、当社としてはこれまでの経験などを生かし、さらに伸ばしていきたい。
──新規事業として取り組んでいることは。
ベルーナツリーズムではクルーズ船などのツアーも提供している。顧客のニーズが高まっている領域においても新たなサービスに取り組んでいる。
アパレル関係でネットの新しい事業をいくつか立ち上げようとしたが、甘くはなかった。ここは慎重に取り組んだ方がいいと考えている。
紙とネットの融合を強化することで、突破口を開くのが当社の取り組むべきことだと思う。紙のカタログだけ、ネットだけで注文する方もいるが、カタログを見たことで、よりネットで注文してくれる方もいるはずだ。紙とネットの魅力を生かし、マーケットを開拓することが生き残る道だと思う。
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