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2025.08.11

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【インタビュー】シニアライフクリエイト 取締役 管理本部長 三好学氏、「高齢者の食生活ニーズ捉えて自社工場設立へ」

三好学氏


高齢者向け宅配弁当のシニアライフクリエイト(本社東京都、高橋洋社長)の2025年2月期の売上高は、前期比7.0%増の150億1000万円だった。主力の配食サービスでは、同社初の値上げを実施し、客離れを抑えて横ばいに留めた。一方、高齢者施設向けの食材販売は、施設の人材不足などが影響して伸び悩んだ。高齢者の食生活を取り巻く状況を捉えて、2026年2月期以降に自社工場の稼働を計画している。



 
──増収の要因と、来期の取り組みについて聞きたい。

計画では、もう少し伸びるはずだった。配食事業は計画通り横ばいで推移したが、高齢者施設向けの食材販売事業が伸び悩んだ。施設の人手不足は深刻で、食材を購入しても湯煎したり盛り付けする人員がいない。そうした施設は、食材の購入をやめて配食サービスの利用に切り替えている。

病院でも同様に人が足りないと聞く。2026年2月期以降、病院向けに完全調理品の供給サービスを開始する予定だ。病院では患者一人一人の病状に合わせた細かなメニュー設計が行われているが、調理に人員を割けない状況と聞く。自社工場を設立して、患者ごとに1食分のセットを作れるようにする。病院では温冷配膳車に入れるだけで提供できる商品開発を進める。

──配食事業について聞きたい。

配食サービス「宅配クック ワン・ツー・スリー」の値上げを行った影響による客離れを心配したが、クーポンの配布や、一度取りやめた牛肉を使用したメニューを再度取り入れたことで、食数を横ばいに留めることができた。

値上げ前は、各エリアを担当するスーパーバイザーが直接説明に出向いていたと記憶している。紹介してくれたケアマネージャーや病院に、加盟店オーナーと一緒に説明に行ったり、新規客への試食を1食から3食に増やしたりといった施策を進めた。

社会情勢もあり、値上げは仕方ないという声が多かった印象だ。ただ、値上げによって食数を減らした利用者もいる。減らした分どのような食事を摂っているか調査したところ、食べなかったり、菓子パンなど栄養価が十分に摂れない食生活を行っていたりすることが分かった。社内では「もう値上げはできない」というのが共通認識になった。

仕入れの値上げで一番苦しかったのは容器代。当社は、握力が弱くなっても開けやすく、中身が見える容器を使用している。理念は変えることなく、リニューアルを図る。配達の利便性も向上する。

物価高の影響で、営業利益は前年比0.2%減の4億2600万円となった。

──フランチャイズ加盟店の運営について聞きたい。

当社の理念に共感したオーナーが運営してくれている。オーナーの手腕に左右されるが、従業員がすぐに退職してしまうなど環境が良くない店舗は撤退してもらっている。エリア制を採用しているので、隣接エリアのオーナー同士が、店舗運営にかかる情報共有を行っていることもある。

店舗を減らさないように、最終的には直営にするというのが当社の方針だ。

撤退した競合他社を利用していた人たちが新規客になることもある。商品の味には自信を持っている。商品開発を担当する部門が月に1度持ってくる試作品を、役員が試食して全員が納得しなければ採用しない。こだわりのメニューが継続につながっている。

──進めている地域との連携について聞きたい。

配食を提供する人の条件設定が難しくなっている。条件によっては差別に当たってしまうこともあり、低栄養診断を受けた人とするのが良いと考えている。

当社は、薬と同じ役割を果たす食事の提供を目指している。配食サービスを利用することで必要な栄養価を摂り、健康寿命を延ばす。それが医療費や薬代を減らすことにつながる。栄養価を摂ることに対価を支払うような考え方になってもらえたらと働きかけている。

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