澤井珈琲(本社鳥取県、澤井幹雄社長)の2025年3月期の通販売上高は、前期比3.7%増の56億円だった。増収を続けられているものの、2025年3月期は、コーヒー豆の価格高騰もあり、減益での着地だったという。近年は、Qoo10、メルカリショップなど、新たなECモールへの出店を開始し、販路の拡大を図っている。ギフト関連のECにも積極的に出店し、売り上げの拡大につなげているようだ。原料高騰を売り上げでカバーすべく、積極的な販路拡大を見せている。近年のコーヒー豆高騰や、今後の市場予測について、澤井理憲常務取締役に話を聞いた。
──コーヒー豆の高騰について教えてほしい。
コーヒー豆の仕入れ価格は、直近1年でも30%ほど上がっている。当社でも段階的に、商品の価格改定やリニューアルを行っているが、対応が追いつかない状況だ。全体の値上げ幅は、ここ1年で20~30%となっている。2020年ころと比べると、価格が3倍近くになっている商品もある。
高騰の背景には、コーヒーの産地で異常気象が続き、収穫量が減ったことがある。中国を中心に、アジア圏でコーヒーの購入が急増していることも影響しているようだ。
最近だと、コメの価格高騰の報道をよく目にしていたが、上がり幅でいうとコーヒーも同等かそれ以上だ。ただ、コーヒーについてはそういった報道があまりされておらず、値上げをした際に、顧客から問い合わせをいただくことも少なくないのが現状だ。

▲直近1年で20~30%の値上げを実施
モール出店を強化
──販路の拡大を進めているということだが。
2024年にはQoo10に出店した。Qoo10の購入層は約65%が女性となっている。これまでの販路と比べ、年齢層が若いという特徴もある。2025年にはメルカリショップにも出店した。TikTokShopにも出店したが、ここはこれまでのモールとはかなり毛色が異なる。本格的に販売していくには、商材を含め、販売戦略を作り直さないといけないだろう。
これまでは商品の紹介というと、ウェブやSNSで文章を書くということが一般的だった。だが「ページを見る」「文章を読む」という形で商品を調べるということは、今後どんどん少なくなっていくだろう。若年層を中心に、ショート動画が強くなっていくのだろうと思う。
当社でもSNSでショート動画の配信は行っている。今後は頻度や内容など、より工夫を凝らしていく必要があると考えている。
──今後のコーヒー通販市場についてどう見ているか。
もともと利幅があるカフェ業態と違い、コーヒー豆の販売は、原料高騰の影響が大きい。小規模な事業者はますます厳しくなっていくのではないか。
高騰はしばらく続くとみている。売ることを一番に考えて、価格で勝負しても、生き残れなければ意味がない。澤井珈琲で働いてくれているスタッフを守っていくためにも、今後再度値上げをする可能性はあるだろう。
「コーヒー豆の価格高騰は深刻な問題であり、これまでのように安い価格で飲めなくなる」というのは紛れもない事実。この事実を、コーヒーを飲んでいる一人でも多くの人に伝えていくことが、コーヒー通販市場を守ることにつながっていくのかもしれない。