家電のECを手掛けるディーライズ(本社東京都、貴島康博社長)の2025年2月期の売上高は、前期比12.7%増の203億5800万円だった。約30億円分という豊富な在庫量を持ち、独自のシステムで価格などの管理を行っている。こうした取り組みにより、安定的に増収を続けているという。2025年2月期には、モールごとの戦略の見直しを行ったことも、増収の要因になったとしている。在庫を他社と共有するサービスも順調に稼働し、好調の要因になったそうだ。家電EC業界にとどまらず、「商品ジャンルの拡大を図りたい」というニーズを持つ多様な企業からの問い合わせが増えているという。2024年の振り返りと今後の展開について、システム開発部マネージャー兼販売企画部マネージャーの宮川裕之氏に話を聞いた。
──2025年2月期を振り返ってみてどうだったか。
商品カテゴリー別でみると、需要が増えたのはパソコンだった。ノートパソコンでは10万円前後の商品が人気だった。タブレットも人気で、価格帯でいうと8万円前後が売れ筋となっていた。
コロナ禍にはカテゴリー別で1位だったテレビは、4位まで落ちてきている。テレビから撤退するメーカーも目立つようになった。
必要不可欠な白物家電とは違い、テレビやレコーダーといった黒物は、嗜好(しこう)品の意味合いも強い。「必要だから買う」のではなく、「欲しいから少しでも安いときに買う」という人が多い。そういったニーズに合わせた、販促や価格設定を行っていくことが重要だと考えている。
在庫に関しては、増加はしたものの、微増にとどまった。現在の倉庫の稼働状況を考えると、今のまま大幅に増やすのは難しい。今後は、追加の倉庫や、外部のECモールの物流を活用することも必要になってくるだろう。
FBA商品を増加
──外部のECモールでの取り組みに変化はあったか。
家電EC市場では、アマゾンの存在が大きい。当社でもFBAの商品を増やしている。大きいロットで入ってくる安価な商品などは、効率的に出荷できる。商品によっては、有効な手段となっている。
とはいえ、手数料が少なくないのは事実だ。自社で対応するものと委託するものの線引きをし、売り上げと利益の良いバランスを確保していきたい。
最近だと、20~30代を中心に、Qoo10の人気が高い。これまでは美容系やゲーム系の家電など、既存の商品で対応していたが、Qoo10用に新たな商品を増やしてもいいかもしれない。
在庫共有も実施
──在庫共有サービスについて教えてほしい。
ECへの新規参入企業向けに、当社の在庫を共有化するプラットフォームを提供している。「ECで家電を売りたい」という企業は、在庫を持たずに販売することができる。売れた商品は、当社の倉庫から出荷する。
プラットフォームを利用する企業からすれば、在庫リスクを抱える必要がない。当社としては、大量に仕入れることで、仕入れ値を抑えることができる。
「パソコンを販売しているが、種類が少ないので増やしたい」「全体的に掲載する商品数を増やしたい」などさまざまなパターンがある。
当社の売り上げにもつながるなど、もちろんメリットは多い。だが、家電ECへの参入障壁を下げることにより、家電EC企業を増やし、「家電をECで買う」という層を増やしたいという思いもある。このサービスを通じて、「家電EC」という業界を盛り上げていきたい。