社内教育の強化と動画活用
―― クリクラでは、社員教育に力を入れていると聞いた。具体的にはどのような取り組みをしているか。
当社では、「クリクラカレッジ」という組織を設けており、直営店・加盟店の全従業員を対象に教育を行っている。
ブランドの維持やオペレーションに関するさまざまなコースを用意している。特にここ1~2年で力を入れているのが、動画を活用した教育だ。
動画では、営業のノウハウだけでなく、製造などバックオフィス系の内容も学べる。単に動画のURLを社員に送るだけではない。専用のアプリを使って、手軽に視聴できるようにしている。
外部の動画会社と提携し、システムを構築した。これにより、従業員はいつでもどこでも学習できるようになった。
――教育の手応えは。
完全に数値で測るのは難しいが、仮説としては効果が出ていると感じている。やはり「人」が重要なビジネスなので、教育の積み重ねが事業の成長につながっていると考えている。
浄水サーバーの増加
――昨年の水ボトルの消費量はどのように変化したか?お客さま一人当たりの消費量は増加した。
既存のお客さまが浄水サーバーに切り替えるケースがある。そのため、全体で見ると浄水サーバーのお客さまが増加しており、顧客件数は微増となっている。
――浄水サーバーの需要は引き続き拡大しているか。
市場全体としては伸びている。引き続き人気はあると思う。
ただ、5年ほど前に見られたような爆発的な勢いはない。市場が確立し、落ち着くフェーズに入ってきていると感じる。
成熟期を迎えたというよりも、導入期を終え、定着してきたという表現が適切かもしれない。
――浄水サーバーの顧客層に変化は。
元々、浄水サーバーのターゲットは、一人暮らしの世帯や、水の消費量が少ない世帯だった。
物価上昇に伴い、ボトル水に切り替えるお客さまよりも、定額制の浄水サーバーへと切り替えるお客さまが多くなっている傾向はあるかもしれない。
宅配水物流の未来
――宅配水の顧客件数が減少している理由は。
浄水サーバーへの切り替えが主な要因だ。その他の要因として、ボトル配送員の不足もある。浄水サーバーは配送の手間がかからないため、売る側として浄水サーバーをプッシュしているという側面もある。
――浄水サーバーの主要な販売チャネルは。
基本的にはボトル水と同様で、訪問販売が最も多い。
ただし、小型の浄水サーバー「putio(プティオ)」などはオンライン販売のみなので、オンライン経由の比率が若干高めだ。
――この夏の水の消費量は、全体的に増加傾向にあると聞くが。
猛暑の影響で消費量は非常に伸びている。配送員は大変だが、ビジネス的には喜ばしい悲鳴だ。熱中症対策の一環としても、水の需要は高まっている。
――配送効率化システム「CrePF(クリップ=Crecla businessPlatForm)」の活用状況は。
配送効率化だけでなく、ペーパーレス化など、フランチャイズ全体のオペレーションをシステムで管理している。
ルート効率化機能も組み込まれているが、毎日ルートが変わるわけではなく、一度決めると一定期間は変わらないため、費用対効果の検証は継続中だ。
新人担当者の育成の際や、担当交代時のルート見直しの際には、非常に役立っている。
――政府では現在、物流の「置き配」の標準化も検討されている。ペットボトルの水を通販でケース買いする人にとって、置き配の標準化が負担になると予測する声もあるようだ。水宅配への影響をどのように考えているか。
「置き配」が標準化されることにより、水宅配の顧客が増加するという流れはありうると思う。
当社は、ヤマト運輸や佐川急便のような一般的な宅配サービスとは異なり、商品を届けるだけでなく、お客さまへの案内など付加価値を提供している。
この「ラストワンマイル」での価値が、今後さらに評価されるようになっていくだろう。
副商材に好機
――2025年3月期のクリクラ事業の業績について振り返ってもらいたい。
増収減益で着地した。売上高は156億6800万円で、前期比2.8%の増収だった。
――2026年3月期の計画は。
売上高160億円、営業利益17億円を計画している。
浄水サーバーへの切り替えが進むと、ボトル水に比べて単価が下がる。そのため、同じ顧客数でも売り上げ・利益は減少する。一人当たりの消費量を増やすことや、水以外の副商材の販売を強化することにより、売り上げ・利益を伸ばしていきたい。
――副商材としては、どのようなもののニーズが高いと感じているか。
水と親和性の高い商品としては、コーヒーやジュースなどが挙げられる。
ナックグループ全体で進めているのは、世のでCMが多く放映されるような、ニーズの高い商品を、会員さま向けに割引価格で提供する取り組みだ。
最近では、話題のリカバリーウェアも取り扱うようになっており、大変好調だ。
――副商材の売上比率は上がってきているか。
かなり比率が上がってきている。既存のお客さまに対して、水以外のさまざまな商品を提供することで、収益の柱を増やしていく戦略だ。