博報堂グループでコンタクトセンター事業を展開する博報堂コネクトは、AI(人工知能)音声受注システム「アンドアイ」を提供している。同システムは大手健康食品通販企業や大手化粧品通販企業などから評価され、導入が進んでいる。土田泰弘取締役は「同システムを活用することで、通販業界の課題の一つと言われている夜間帯の電話対応が可能となる」と話す。土田取締役と石塚敏明システムコンサルタントに「アンドアイ」の詳細や強みなどを聞いた。
人の替わりにAIが応答
ーー「アンドアイ」の詳細について伺いたい。
土田 「アンドアイ」は商品の注文や相談などの電話をAIが自動で応答するというサービス。従来、”人”が行っていた対応をAIが行う。
そもそもの開発経緯になるが、当社はコンタクトセンター事業を生業にしているものの、徐々に深夜・早朝の夜間帯の人手が集まりにくくなっていた。ご存知の通り、テレビ通販などで深夜帯や早朝での購入も多く、既存のクライアントからも、「深夜帯の注文受け付けができなくなると困る」という声を頂いていた。
さまざまなことを考えた結果、”人”の介在をなるべく少なくした「アンドアイ」の開発に至った。
コンタクトセンター業界も人材の採用は課題であり、これからますます難しくなっていくだろう。しかし、モノを購入する行為自体は減らないはずだ。もちろん通販で商品を購入する人も減らない。将来的な視点も踏まえると、この「アンドアイ」のサービスは画期的なものだと考えている。
ーー「アンドアイ」の利用方法は?
石塚 「アンドアイ」は音声対話サービスなので、よく間違えられやすいのだが、IVR(自動音声応答システム)とは違う。IVRの場合は、「商品の購入ですか? 購入でしたら1を、それ以外は2を」というように、利用者にボタンを押してもらう必要があるが、当社のツールはそうではない。こちらからの問いかけに一つ一つ「音声」で答えていただくだけだ。
「商品の購入ですか? はい、いいえでお答えください」と聞き、「はい」と答えたら、「商品名は何ですか?」と続く。その次に「お名前は?」「住所は?」「電話番号は?」「配達希望日」など、必要な項目を全て聞く。毎回、電話番号はこの番号で正しいかを「アンドアイ」が尋ねる。そうやって受注を受けていくイメージだ。
▲サービスのイメージ図
ーー「名前」は漢字で受け付けるのか。しっかり聞き取れるのか?
土田 基本はカタカナで読み取る。顧客の手元に届く商品の名前欄も、漢字ではなく、カタカナ表記で配達する。
学習させ高精度を維持
ーーAI音声対話サービスだと、電話がかかってきた人の音声をうまく聞き取れないこともあると思う。「はい、いいえ」で答えてと言っても、「違います」と答える人もいる。精度はどうか?
土田 確かに「この商品で合っていますか? はい、いいえでお答えください」と聞いたのに、「それではありません」や「違います」と答える人もいる。これはあり得ることだ。それを防ぐために、似たワードを学習させている。
「アンドアイ」も他の一般的なAIツール同様、学習が必要となる。もともとの精度も高いのだが、そこに各企業の電話応対内容、どのような声が多いのか、どのような表現が多いのかを分析し、それを学習させることで、間違いなく円滑に応対できるようになる。
「アンドアイ」はサービスを提供開始してから、もう数年が経ち、そもそもの下地は整っている。その上に各企業の情報を学んでいくことで、「アンドアイ」はその企業にふさわしいサービスへと進化していく。
ーー注文方法などはどうか。電話でクレジットカードなどの番号を聞くのか?
土田 携帯電話から発信していただいた人には、SMSで通知し、購入方法を変更することもできる。最初は代引きで受け、その後、SMSでクレジットカードへの変更も受け付ける。そのとき、SMSで変更を受け付けることで、誰かに音声でクレジットカード番号を聞かれることもない。
▲サービスのイメージ図